サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

「私たちは気候変動時代をどう生きるか」セミナー&シンポジウム(構想案)

2019年11月08日 | 気候変動緩和・低炭素社会

 

「私たちは気候変動時代をどう生きるか」セミナー&シンポジウム(構想案)

 発案者:白井信雄(山陽学園大学 地域マネジメント学部 教授)

 

1.開催趣旨

●異常気象は気候変動と関連する

  近年、猛暑や豪雨といった異常気象が頻繁となり、甚大な気象災害がどこでも起こり得ることを覚悟しなければいけない状況となっている。異常気象は人類の活動を原因とする気候変動が、自然変動をかさ上げするために起こっている。

 この因果関係に未解明な部分があるとしても、不確実性を理由に気候変動への対策を先送りしてはならない。気候変動がますます進行し、対策が後手後手となることによって失われる、かけがえのない生命を誰が補償できるというのだろうか。五輪マラソンの札幌開催も、小手先の対策に限界があるにも関わらず、抜本対策を先送りしてきた結果であり、対策の遅れは対策に必要な費用を高いものとする。

●異常気象の経験を、気候変動への行動につなげる時

 一方、気候変動による異常気象の深刻化という事実に、国民は気づきだしている。西日本豪雨後に実施した住民アンケート調査では、「西日本豪雨のような近年の豪雨と地球温暖化と関連する」について、「全くその通りだ」と「その通りだ」を合わせた回答率は5割弱程度である。さらに普及啓発が必要であるとともに、西日本豪雨と気候変動との関連への気づきを、気候変動に対する行動につなげていく支援が必要である。

 もはや気候変動は科学が予測する将来の不確実な可能性ではない。気候変動は現在を生きる私たちが直面する事実であり、私たちが生きている期間に解決をしなければならない、喫緊の課題である。非常事態であることを当事者として自覚し、本気の対策に取り組むべき時である。2050年に温室効果ガスの増加をゼロにすることを考えると、残された時間は30年しかない。

●気候変動に対する2つの対策:緩和と適応

 では、私たちは何をすべきか。私たちは、異常気象を深刻化させる気候変動に対して加害者であると同時に、既に被害者である。このため、私たちの取るべき対策は2つある。1つは、加害者として大気中の二酸化炭素濃度を抑制する緩和策である。緩和策には、再生可能エネルギーの導入、省エネルギーの徹底、森林の整備と活用がある。

 もう1つの対策は、既に気候変動が進行しており、今後も最大限の緩和策を実施したても避けられない影響があることから、気候災害対策の強化と将来への備えを行うという適応策である。適応策には、水土砂災害への防災、熱中症対策、農業の気候災害対策、水産資源の変化に対応する漁業等の分野毎の取組がある。

●どのような緩和・適応社会を目指すか:社会づくりを視野にいれること

 緩和と適応を進める際に重視すべきは、緩和と適応を成功させるとして、どのような社会を目指すのかということである。二酸化炭素の排出さえゼロにすれば如何なる技術を利用してもいいのか。行政と大企業が主導して緩和と適応の対策を進め、市民やローカルビジネスが参加しなくてもいいのか。目指すべき社会像を共有しないままに、緩和と適応の対策を進めると、気候変動対策はできたとしても持続可能ではない社会をつくることになってしまうのではないだろうか。

 一方、緩和と適応は一人ひとりの暮らしの改善だけでは限界があり、土地利用・インフラ等のハードウエア、社会・経済・政治に関わるソフトウエア、人の価値規範等に関するヒューマンウエアの再構築(構造転換)が求められる。一人ひとりが生産者・消費者・主権者として、社会づくりに関わっていく、ソーシャル・アクションが求められる。

●気候変動時代における危機の共有、社会ゴールとタイムライン・ライフプランの作成

 私たちは実践を始めなければならない。しかし、実践すべきことを専門家が教えてくれるわけではなく、国の政策に追随すればいいものではない。私たち自身が学び、市民専門家となって、考え、選んでいくべきである。

 また、社会づくりを進めるにはゴールとタイムラインを描くビジョンが必要である。まずは、私たち一人ひとりが気候変動の危機の実態を学び、対話をしながら、将来的に実現したい社会のゴールの可能性を描き、選択をしていくものである。次に、選択した社会のゴールに向けたタイムラインを描き、一人ひとりのライフプランを作成していく。

●試行実験としてのセミナー&シンポジウム

 このプロセスを丁寧に積み上げる実験として、セミナー&シンポジウムを開催する。大掛かりなプロセスであるため、参加意欲のある人々による試行実験としてセミナーを行い、その成果をたたき台として、シンポジウムで発信し、さらにより多くの主体の参加を得ていくといて手順を踏んでいく。

 なお、気候変動に対する緩和と適応は、持続可能な未来に向けて重要なテーマであるが、他にも検討すべきテーマがある。少子高齢化・人口減少、グローバル化する世界経済への対応等である。これらのテーマについても、地域の未来を選択するプロセスの実践が必要であるが、まずは気候変動というテーマに限定して、検討を行い、次の段階で他の諸問題を扱うことも視野にいれている。

 

2.実施内容

 1年間のセミナーを通じて、講義とワークショップを行う。その成果を年度末のシンポジウムで報告して、広く議論を行う。1年度めの結果を踏まえて、2年度め以降のセミナー&シンポジウムを実施する。

(1)セミナーの内容

   第1回 気候変動という危機

   第2回 脱気候変動社会のゴール

   第3回 脱気候変動社会に向けた緩和のタイムライン

   第4回 脱気候変動社会に向けた緩和のライフプラン

   第5回 回避できない危機への適応

   第6回 気候変動と私たちの生き方(哲学) 

(2)シンポジウムの内容

   ・基調講演

   ・セミナーで行ったワークショップの報告   

   ・パネルディスカッション

以上


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