サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

カーボンゼロ社会に向けた多様な対話について

2020年12月28日 | 気候変動緩和・低炭素社会

はじめに

 

 気候変動(地球温暖化)の問題は、不特定多数を発生源とする問題であるため、不特定多数の意識・行動変容を促す普及啓発手法が重要である。このため、社会心理学や行動経済学に基づく普及啓発施策が実践され、気候変動の問題への関心づけや100人の最初の1歩を促す段階において、成果を得てきた。

  • 例えば、2010年にマイナス6%削減を目指した国民運動では、クールビズの普及に成功した。その後も、クールシェアの啓発やナッジの手法導入が進められてきた。

 

 その段階を経て、今日では、気候変動の非常事態が目に見える状況となり、2050年のカーボンゼロを目指して、温室効果ガスの排出削減につながる取組みを加速させ、大胆な変革を伴う対策をとるべき段階になっている。これまでのように技術的対策の普及を促す企業と行政の取組みにまかせ、市民は出来る範囲からの行なう“ちょいエコ”と、楽しみながら行なう“らくエコ”の工夫をすれはよいという段階は終わりつつある。伝統的な生き方や社会のあり方を見直すことも含めて、“本気のエコ”への本格的な転換を図るべき段階へ移行している。

  • 例えば、「長期低炭素ビジョン」(2017)では、カーボンゼロ社会を実現するためには、対策技術の徹底普及とともに、土地利用・産業構造・国土構造等に関する構造的な対策、量から質への経済成長の転換が必要であると示している。

 

 これからの時代に、市民に求められることは、できることを無理なく、楽しみながら行うという従来の取組みを更新していくだけでなく、気候変動の問題の深刻さと根深さを理解し、気候変動の問題の根幹に、自らの生き方を規定する考え方や価値規範等の基本的枠組み(パースペクティブ)、及びこれと一体にある社会の構造・システム(レジーム)の問題があることを自覚して、ライフスタイル転換を図ることである。

  • 例えば、気候変動の根幹にある問題として、大量生産・大量消費・大量廃棄(大量リサイクル)によって成り立っている経済成長や便利な暮らし、経済効率やコスト削減を追求することによるグローバル経済への依存、石油由来の安価な燃料の大量消費やプラスチック製品の氾濫等があげられる。

 

 この際、重要なことは、市民がパースペクティブやレジームの問題に関心を持ち、自らの生き方や社会のあり方の再構築に向けて、主体的に動き出し、ボトムアップにより大きな流れができていくという社会転換(トランジション)のプロセスをつくることである。市民の生き方を変えるような政策をトップダウンで強制的に行なうことは、人権や生きる自由を阻害することになるためにあってはならないし、効果や定着が不十分となるだろう。

 

 しかしながら、気候変動の問題を深刻に受けとめ、トランジションが必要であるというメッセージは受容されにくい。

  • 大学生にとっては大量生産・大量消費・大量廃棄(大量リサイクル)型社会は、生まれた時から疑うことなく生きてきた社会である。それ以前を知る世代のように、異なる社会を相対比較し、今日の社会の構造的問題を俯瞰的に考えることが難しい。
  • 子育て世代にとっては、生計をたてながら、子どもを育てることに精一杯になりがちである。社会の問題に目を向けて関心を持ち、労力をかける経済的、時間的、精神的な余裕がない。
  • 社会の中で経験や実績を積み重ねきた世代にとっては、これまでの生き方を変えることは、積み重ねてきた自己肯定感を低めることとなり、受容しがたい面がある。過去の時代の成功体験を守りたいし、これからも保持して、活かしたいだろう。

 

 世代毎に異なる慣性へのロックインに加えて、無自覚ゆえの無関心・無知ゆえの無関心、異質・異様への対峙を回避する傾向、目先の関心ごとへの集中・逃避、自己肯定感への安易な希求、目的短絡的な合理主義等が社会転換を困難にしている。これらの問題点を解消し、カーボンゼロに向けた創造をしていくことが必要であるとしたら、これまでの普及啓発施策とは異なる手法の導入が必要である。

 

 以上のような背景を踏まえ、カーボンゼロ社会の実現に向けて、市民が起点となる社会転換を進めていく方法として、着目したのが「対話」である。対話は、自らの生き方を規定する考え方や価値規範等の基本的枠組み(パースペクティブ)を見つめ直し、一人ひとりの意識・行動の転換を主体的に促す可能性を持つ。

 本稿では、対話の定義とタイプ、共通する特徴を整理し、その上でカーボンゼロ社会に向けた対話の必要性と具体的な方法について、考察する。

 

1.対話とは

 

 私(たち)は、相手と双方向で言葉・非言語のやりとりを行なう。その目的や成果の持ち方によって、言葉・非言語のやりとりは自分と相手、あるいは社会にとって異なる意味を持つ。気軽な挨拶や情報のやりとりは雑談(chat)であり、どちらの意見が正しいかを決めるようとすれば討論(debate)となり、納得しあえるように合意形成をするなら議論(discussion)である。これに対して、対話(Dialogue)は「自由な雰囲気の中で新たな意味づけをつくる話し合い」(安齋(2020))である。既存の対話の定義を列挙する。

  • 「対話とは相互関係構築のための言葉の活動、他者としての異なる価値観を受けとめると同時に、コミュニティとしての社会の複雑さをともに引き受ける、他者とともに生きることを学ぶことである。」(細川(2019))
  • 「対話は、自分の外の人との対話、自分の中の(無意識)小人たちとの対話、世界・社会・環境との対話、総合的なやりとりの総体である。」(前野・保井(2017))
  • 「対話とは、自己及び多様な他者・事象と交流し、差異を生かし、新たな知恵や価値・解決策などを共に創り、その過程で良好で創造的な関係を構築していくための言語・非言語による継続・発展・深化する表現活動である。」(多田(2018))

 

 対話で重要なことは、新たな変化をもたらすことである。その変化とは、①自己あるいは他者の相互の理解であり、②自己あるいは他者の考え方、③自己と他者の関係性、④自己と他者が存在する場(組織・社会)である。雑談や討論・討議では他者の理解や考え方の変化を狙わない。

  • コミュニケーションと対話の違いを言えば、前者は相互の理解に留まり、それ以上の変化を狙わない。対話とは「他人と意見交換することではなく、やりとりされる言葉を自分自身にリフレクト(反響)させ、気づきを得るためのものである。」(前野・保井(2017))

 

 また、対話ではやりとりをする他者があって成立するが、その他者は人間である場合もあれば、、自己の中の無意識の部分、世界・社会・環境、自然、生物、宇宙等と様々である。自然のように他者が表現をしない存在である場合は、他者の代弁を行なう別の主体を持つことにより、一人で行なう対話もあり得る。

 

 以上をもとに、本稿では、対話とは「自己と他者で言語・非言語による表現のやりとりを丁寧に行なうことにより、①自己あるいは他者の相互の理解であり、②自己あるいは他者の考え方、③自己と他者の関係性、④自己と他者が存在する場(組織・社会)を、良好なものに変化させていくことを意図する、目的を持った表現活動である」と定義する。ひらたくいえば、対話とは、「他者との話しあいとわかりあいを通じて、他者、自分、関係、社会を変えていくことである」。

 

2.多様なタイプの対話

 

 対話の狙いとするところの範囲や重点の置き方によって、対話を5つのタイプに分けることができる。①対話型の教育・授業、②哲学対話、③療法・カウンセリング、④組織経営における対話、⑤地域づくりにおける対話、である。5つのタイプの対話は明確に区別される訳ではなく、狙いが重なる部分もある。最小公倍数的な対話の狙いは、①自己あるいは他者の相互理解、②自己あるいは他者の考え方の変化・成長、③自己と他者の関係性・協働の変化、④自己と他者が存在する場の変化、に分けることができる。5つのタイプの対話と4つの狙いとの関係を表に整理する。

 

 ①の教育・授業で用いられる対話は、与えられた知識の受身的な習得ではなく、言語のやりとり等により、多面的かつ総合的なものの見方を身につける、能動的で深い学習である。他者の表現への傾聴による他者の理解と自己を表現するための内省が重視され、そのうえで批判的思考により論議を深めていく。

 対話型の授業では、教師が学生を教えるのではなく、学生同士で教えることと学ぶことを交差させ、自分とは異なる考え方を受けとめ、自分の考え方に気づくことを狙いとする。教師が主導するのではなく、学生たちが活気づき、積極的に取組む場をつくることが重要である。

 Mezirow(1991)らが提起した「変容学習」は、「無批判に習得された自分の意味パースペクティブの枠組みに気づき、それを自覚的に再構築する学習プロセス」と定義される。これは、ある程度、自分なりの考え方が形成された成人の学習である。過去の学習の成果や自分の考えか方を客観視し、考え方の枠組みを再構築するうえでも、対話は有効な手段となる。

 

 ②の哲学対話は、真理の探究と深耕という方向性を持つことで、自己と他者(どちらも人間)の変化を求める。河野(2020)は、哲学対話では、真理に到達しなくとも「新たな問いが見出されることが哲学対話の成功」であり、「自己と自己を取り巻く成果の見え方が常に新たになっていく」、「自分が当然視している考えや信念、常識、習慣等を反省的に検討する」そのプロセスが重視されるとしている。

 教育・授業と哲学対話の違いをいえば、前者は個々の変化による成長を主眼とし、そのために真理の探究等がテーマになる。これに対して、哲学対話は真理に近づくことに重点があり、当然だと思っている信念・常識・習慣等を批判的に捉え、問いと語りを深める。これにより、結果的に個々の変化が得られる。もっとも、哲学対話を授業で行なう場合もあり、教育・授業と哲学対話の明確な違いがあるわけではない。

 

 ③の心理学的な療法・カウンセリングにおける対話は、クライアントが精神心理的な問題を抱えて居る場合に、カウンセラーが傾聴し、クライアント自身の気づきによる問題の解決を支援することである。

 ケネス・J・ガーゲン(2010)は、心理療法における対話の例を紹介している。ナラティブ・セラピーでは、人生を語り直し、悪いのが自分ではなく、システムであるという気づきを促す。ソリューション・フォーカリスト・ブリーフ・セラピーでは、ひどい過去への囚われから解放されるように、「明日の朝、目覚めて問題が解決していたら、どんな一日になりますか」というように、前向きな未来に目を向けさせる。

 哲学対話においても生きることの意味への悩み等の哲学的な問題に対するカウンセリングを行なう場合もあるが、精神心理的な部分に踏み込まない点で心理学的な療法・カウンセリングと異なる。心理学的な療法・カウンセリングは、人の内面に踏み込む支援であり、専門性に欠ける場合に安全ではない。心理学の専門性を持ち、倫理的な基準を持ち、安全な範囲で行なう必要がある。

 

 ④の組織経営における対話は、組織の活性化を図るために対話という手法を用いる。例えば、メンバー間で、対話により組織のビジョンを追求し、これにより共通感覚を生み出す物語をつくりだし、メンバーが組織のことを考え、主体的に動き出すことを狙いとする。

 経営者とメンバーとの対話というより、メンバー間の対話を重視する。トップダウンでのリーダーシィップではなく、関係者の対話からビジョンを生み出し、組織を率いる仕事を関係者間で分かち合うというリレーショナル・リーダーシィップという考え方である。

 教育・授業の狙いはあくまで自己の成長であり、社会的な成果は主眼ではないが、組織経営における対話は組織の膠着の打開や活性化という組織にとっての成果を目指す。

 

 ⑤地域づくりにおける対話は、地域における課題を解決することを狙いとして、地域の関係者間で話し合い、合意や共創、協働を進める活動である。地域には、異なる価値観や利害関係を持つ主体がおり、そのことが地域ぐるみの取組みを阻害している場合があるが、対話では相互理解による合意を進める手法となる。それだけでなく、異なることを活かして、慣性や伝統を破壊し、未来に向けた創造を図るための対話が期待される。

 地域における議論による合意形成は相互理解のプロセスが不十分で対立の場となることが多いが、傾聴を重視する対話の方法の採用が求められる。また、ビジョンづくりのためのワークショップでは付箋紙を使ったアイディアだしを限られた時間内で行うが出されたアイディアへの深い理解がないまま、親和図法等により機械的に取りまとめられることが多い。時間や予算の範囲内で行う委託調査におけるワークショップではなく、丁寧な対話の場を地域内でつくることが期待される。

 熟議は対話を重視する。ただし、前野・保井(2017)が指摘するように「あらかじめ用意された問題解決のための選択肢を取捨選択するための意志決定のための話し合いではなく、対話では選択肢そのものの幅や深さ、性質を広げていくべく行なわれる話し合い」であることが重要である。

 

3.対話に共通すること

 

 主眼の置き方によって異なるタイプの対話があることを示したが、なんであれ対話に共通する特徴と目標を整理しておく。いずれのタイプの対話にあっても、対話の特徴として重要な点は、①他者への傾聴と理解のうえで批判的に創造する、②対話の再帰により自己の内省を深める、③共に生きることを楽しむ社会を目指すことである。

 

 ①については、傾聴と理解は良好な関係をつくだすが、調和から創造は生まれにくい、対象を批判的に捉え、破壊し、その上で新たな創造を生み出していくことが重要である。批判は否定ではなく、よりよい発展の創造に向けたプロセスだという共通認識を持つことが必要である。既往文献では次のような記述がある。

  • 「いかなる対話にも、対話には常に相手に対する尊重とケアが含まれており、批判はケアと一体的にある。ケアは感情と結びつく、ケアと結びつくことで思考は感情的な価値を帯びる、対話そのものがケアリング効果を持つ。」(河野(2020)
  • 「対話のもつ社会構成主義的立場、関係的な自己、内的な世界を人間的で有ることの最も中心におく、自分は関係から生じた結果、他者を通じた自己、区別は孤立・対立の世界をつくる。」(ケネス・J・ガーゲン(2020))

 

 ②については、対話は相手や相手との関係、相手といる場を変えるだけでなく、それらの変化のリフレインにより、それらと同時に自分が変わっていくという方向を持つことが重要である。自分が変わるとは、知識や理解が変わるだけでなく、自分の考え方の枠組み(パースペクティブ)が変わることである。あるいは自我(自分が知る自分、意識している自分)と自己(本来の自分、無意識の自分)との乖離に気づき、閉ざされていた自己を解放することも、対話による自分の変化として重要である。既往文献では、自分の中の変化について、次のような側面を記述している。

  • 「対話は相手と行なうものであるが、同時に自分の内なる他者を外化する、対話によりわたし自身が常に一人になるという側面を持つ。この内省により、自分が自分を取り戻すのである。」(河野(2020))
  • 「自分探しからの解放、自分とは他者の中に明確に存在するものではなく、他者とのインターアクションのプロセスの中で次第に少しずつ姿を現わすもの。」(細川(2019)
  • 「他者とともにある人生への深い理解、他者から切り離されたものでもなく、他者と拮抗したものでもない、関係を生み出し、調和した行動。」(ケネス・J・ガーゲン(2020))。
  • 「もう一人の自分を自分の中に構築すること(ハンナ・アレント)、社会的行為主体となる、自分とは何か=社会とは何か、社会の中で果たすべきことは何か。」(細川(2019))。

 

 ③については、対話により実現していく社会の理想像を共有することである。対話が各地、各所、各自で行なわれることで、一人ひとりの外的な拡張と内的な深化が図られ、そうした変化する人々の間で良好な関係が形成され、社会は伝統的にこだわらずに、未来に向けて常に革新されていくだろう。対話のない社会では孤立・分断が生じ、対立関係が解消されない。対立は非創造的、非行動的で、排除的であり、慣性を維持しようとする。人々は生きづらく、与えられた枠組みの中で苦しさから逃れられない。対話が目指す社会の理想像として、既往文献の次のような記述がある。

  • 「問いを歓迎する社会、自由に率直に語り合うことを楽しむ文化、互いに聞き合い・理解しあう文化、互いの意見を吟味しながら、さらに納得のいく意見を創ろうとする文化」(河野(2020))
  • 「互いに理解しあい変わっていく、共に生きていくことを楽しむ文化、多様な人々が共生する社会、風通しのいい社会」(河野(2020))

 

4.カーボンゼロ社会に向けた対話の必要性とデザイン

 

 カーボンゼロ社会の実現において、市民がパースペクティブやレジームの問題に関心を持ち、自らの生き方や社会のあり方の再構築に向けて、主体的に動き出し、ボトムアップにより大きな流れをつくることが重要だとすれば、対話の持つ3つの特徴(①他者への傾聴と理解のうえで批判的に創造する、②対話の再帰により自己の内省を深める、③共に生きることを楽しむ社会を目指す)を活かすことが有効だろう。

 

 この際、5つのタイプの対話(①対話型の教育・授業、②哲学対話、③療法・カウンセリング、④組織経営における対話、⑤地域づくりにおける対話)は、いずれもカーボンゼロ社会に向けた対話における、対象に応じた多様なアプローチとして応用可能である。表2に対話のタイプ別に、カーボンゼロ社会に向けた対話の狙いと方法のイメージを示す。いずれにおいても、異なる意見があること、パースペクティブやレジームの問題があることを理解しあい、自己の内省を求めることで、主体の内的変化(転換)を促すことが重要である。

 

5.カーボンゼロ社会に向けた対話の実践

 

 カーボンゼロ社会に向けた対話は、とにかく実践をしながら、改良していくことが望まれる。筆者は、岡山における試みとして、①富山公民館での気候変動の地元学、②SDGsもやもや対話の時間。を実施中である。

 

 ①は、富山地区におけるカーボンゼロ社会、及び気候変動適応社会について、2050年のあるべき社会について、ワールドカフェの方法でアイディアだしを行ない、さらにあるべき社会におけるライフスタイルを話し合い、最後に自分が目指すライフスタイルを宣言するというプロセスを6回に分けて実施中である。地域づくりにおける対話であり、参加者にとってはこれまで考えたことがない、あるいは地域で話し合ったことがなかった試みである。目指すべき社会像を描くだけでなく、自らの内省によるライフスタイル宣言までを行なうことに、対話としてのこだわりがある。

 

 ②は、子育て世代の働く女性たち4名という少人数で、SDGsをテーマにして、ファシリテータが提示した問いに対する回答を、フィリップトークで示し合い、相互理解を図るという試みである。気候変動というテーマでの対話を2回目に実施したが、気候変動と異常気象を結びつけることができた、さらに知ってみたい自らの問いが出てきた等の成果が得られている。対話の様子は、グラフィックレポーティング等の方法で記録し、振り返りや外部への発信も行なっていく。哲学的な基礎を踏まえたものではなく、哲学対話とは言えないが、対話の再帰により自己の内省、特に問題の根本にあるパースペクティブやレジームの問題への思考の深まりを狙いとしている。

 

 さらに、筆者は、岡山市におけるカーボンゼロ社会研究会を主催しており、カーボンゼロを実現する対策効果の試算結果を素材として、どのような対策を重視してカーボンゼロ社会を実現するかを市民が考えるプロセスを検討中である。この際、社会のあり方を検討する対話だけでなく、経済成長をどう考えるかなどの哲学的なテーマでの対話を組みあわせる方法も検討する予定である。

 

 筆者が代表を務める科研費の研究では、人の意識・行動転換のプロセスを研究テーマとしてインタビュー調査を実施し、現在、アンケート調査結果を分析中である。この研究においても、人の意識転換を支援するプログラムを検討するが、哲学対話や心理学的な対話を組み合わせたプログラムを検討する予定である。

 

参考文献

中央環境審議会「長期低炭素ビジョン」2017

安齋勇樹・塩瀬隆之「問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション」学芸出版、2020

細川英雄「対話をデザインする-伝わるとはどういうことか」ちくま書房、2019

前野隆司・保井俊之「無意識と対話する方法 あなたと世界の問題を解決に導くダイアログのすごい力」ワニ・プラス、2017

多田孝志「対話型授業の理論と実践ー深い思考を生起させる12の要件―」教育出版、2018

J.Mezirow,1991, Transformative Dimensions of Adult Learning., San Francisco: Jossey-Bass

河野哲也編「ゼロからはじめる哲学対話―哲学プラクティス・ハンドブック」ひつじ書房、2020

ケネス・J・ガーゲン「現実はいつも対話から生まれる 社会構成主義入門」ディカバー・トゥテンティイワン、2020

 


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