白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

恋のフェアリー

2010-06-21 | 取り扱い作品のご紹介
公園の藤棚に置かれたベンチで少しの間涼んでいたら、
四方にゆれる花房の陰から懐かしい不思議な香りが立ち込めてきました。
まるで花びらのカクテルに酔った心地になりました。
そしてこんな甘い物語を思い出しました。

むかし、むかし、伊豆志おとめというそれはそれは美しい娘がおりました。
たくさんの若者達が言い寄って来ましたが、なぜか相手にしませんでした。
彼女に魅せられて求婚した秋山之したひおとこという少々乱暴者の若者は
やはり断られてしまいました。
そこで弟の春山之かすみおとこに向かって「おまえがなんとかあの娘を
手に入れて来い」とそそのかしました。
かすみは母のところに行きどうしたものかをたずねますと
やさしくておっとりとしたかすみのほうをこよなく愛していた母は一晩で
藤の蔓の衣や沓、弓矢などを作り着せて伊豆志おとめのもとへ行かせました。
かすみがおとめの屋敷に着くと身に纏っていたものすべてから一斉に
馨しい淡紫の藤の花が咲きました。
花の香りに包まれたおとめはいっぺんに恋に落ちてしまいました。
そうして花びらが降り注ぐ中でそのまま二人は結ばれたそーな。
                               古事記 より

   なんと、おおらかでしかも、大胆なロマンに満ちた古代の青春の姿なのでしょうか。
いつまでもこの二人のために美しい花房が風に揺られて香っていますようにと
藤棚の下でしばし夢の時を過ごしてしまいました。

                           s・y

           今日の一枚   「藤娘」      多美子 油彩
     
      日本舞踊 「藤娘」~藤の精が藤の一枝を肩にかけて酔って踊るシーン

            ~藤の花房色よく長く~

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