群馬県渋川のお酒「聖」大吟醸を楽しむ
侘輔 今日のお酒は去年八月に楽しんだ群馬県渋川のお酒「聖酒造」のお酒なんだ。
呑助 七代目の蔵元さんが六二歳になって南部杜氏会の杜氏試験に挑み、三回目に杜氏試験に合格し、聖酒造の杜氏をしていると言う蔵のお酒だったような記憶がありますね。
侘助 その後、社長を息子に譲る。最高齢で学科試験、実技試験、面接試験に合格したようだ。酒造りに臨む蔵元の意気込みに驚くよね。
呑助 今日、楽しむお酒の造りはどのようなお酒なんですかね。
侘助 まずは限定販売の「渡舟」という銘柄で発売したお酒なんだ。
呑助 限定販売とは、どのようなことを意味しているんですかね。
侘助 酒販店を限定してこの時期に販売するということのようだ。
呑助 酒販店を限定して醸した酒ということですか。
侘助 だから年間商品ではないということなのかな。
呑助 生産量が限られているということですか。
侘助 だから一升瓶で1000本ぐらいしか造っていないんじゃないのかな。
呑助 じゃー、一年に一回ぐらいしか飲めない酒だということですか。
侘助 まぁー、そういうことなんだろうね。この酒は酒造米「渡舟」で醸したお酒のようなんだ。
呑助 「渡舟」とは、初めて聞く酒造米ですね。
侘助 酒造米として有名な山田錦があるでしょ。山田錦の母親の米が「山田穂」という在来種に短桿渡舟を父として掛け合わせて生まれたのが酒造米山田錦なんだ。
呑助 山田錦の父親の米が渡舟だということですか。
侘助 渡舟は酒造米雄町の系統の短桿のものだったようだ。
呑助 古くから使われてきた酒造米を復活、使用したというお米なんですか。
侘助 そのようだ。茨城県石岡に府中誉という酒蔵があるんだ。この酒蔵「渡舟」という銘柄のお酒があるんだ。とても美味しいお酒でね。一時、凝ったことがあるんだ。
呑助 酒造米「渡舟」で醸したお酒なんですね。
侘助 そうなんだ。いまでは名酒の誉れ高いお酒として認められているようだよ。
呑助 精米歩合は何パーセントなんですか。
侘助 四十%だから、大吟醸酒ということになる。醸造用アルコール、焼酎が添加されていない純米酒。水で薄めていない原酒。火入れをしていない本生のお酒。炭素で濾過していないお酒。中取りのお酒なんだ。
呑助 火入れとは、低温殺菌法という処理をして安全にお酒を出荷するために行う作業でしたよね。
侘助 普通生酒というと生酒のまま貯蔵し、出荷の際に火入れしたものが生貯蔵酒。醪を絞った直後に火入れし出荷するものが生詰め酒。醪を絞った直後も火入れをしない。出荷の際にも火入れしない酒が生生の酒、本生の酒なんだ。
呑助 低温殺菌法をパスツーリゼイションと英語では言うんでしたね。
句郎 十九世紀にワインの火入れ方法として発明されたものなんだけどね。日本ではもう鎌倉時代の後期には経験的に知られていた方法なんだ。
呑助 日本の醸造技術は、ちっとも西洋にまけていないんですね。
句郎 実はそうなんだよね。
聖酒造社長今井健夫さんから次のようメールをいただきました。
滋賀県産「渡舟」は7年ほど前から行っております。
当初は50%精米の純米吟醸で仕込んでおりましたが、2年前より麹40%精米/掛米50%精米にいたしました。
そして今期より全量40%精米の純米大吟醸となっています。
渡舟は味の出やすいお酒です。米としては面白く「山田錦」「雄町」の系統だけあって上品な味わいになります。
数年前より精米歩合を高精白にしている理由はより後味のクリア感を出すためでした。
今後も渡舟の米の旨みと酸とのバランス、そしてよりクリアなお酒を目標として仕込んでいきたいと思っています。