地域図書館に望むこと
図書館で絵本読む母梅雨きたる
私の住む街の図書館に入ると左側の小さな部屋がある。そこで母親らしき方が幼児たちに本を読み聞かせている風景を時折見かける。
数学に目輝くや秋の暮れ
いつだったか、秋が深まっていったころ、街の中央図書館の日曜日、高校生らしき若者が数学の勉強している姿を見た。
今日もまた新聞読んでる老いの春
新聞閲覧席には常連のリタイア組がいる。新聞読んでいる人の顔の表情が豊かなことに驚いた。きっと新聞には心躍る内容が日々あるのだろう。熟年者は感情が鈍くなるということは偏見なのかなと感じた一瞬だった。
図書館は幼児から老年者まで全世代にわたって無料で利用できる生涯教育基地である。まず図書館の魅力は無料である。無料であることが貴い。だから地域住民すべての人に平等に開かれている。ここが素晴らしい。
図書館の利用者は自分の意思で自分を教育する。本を読むという営みは人の経験を学ぶことである。また本を読むことはその本の著者との対話でもある。借りた本は他者が利用した本でもある。借りた本を読むことはこの本を読んだ人との交流でもある。自分が読んだ後、知らない誰かが借りて読む。図書館を利用することは地域コミュニティーを作っていくことになる。図書館は知的な地域のコミュニティーを創る。図書館は素晴らしい。図書館の営みに参加することは地域の人々を結びつけ、地域の人々の教育力を高めることである。
数年前、「読書する人」という世界的にベストセラーになった小説がある。字の読めない人に本を読んであげる少年の物語だ。きっと外国人労働者の流入が多いドイツ社会ではドイツ語を読めないドイツ居住者が多数いる。だから「読書する人」という小説がヒットした。これからの日本社会にあってもドイツと同じように日本語の読めない地域住民が増えていく可能性が高い。特に外国人にとって漢字を読むことは困難が伴う。だから代わりに読書してあげる人が図書館に必要になる時代がすぐそこまできている。
地域社会には外国人居住者が増えてきている。外国人居住者にとって図書館は無料で日本文化に触れられる最高の場所である。また日本語に不自由な外国人にとって図書館は日本語力をつける自己教育の場所になる。もっと外国人居住者の利用が進むような方策が求められている。
最近の日本社会は少子高齢化が進んでいる。お一人様の老人にとって図書館は心を開くところでもあろう。虫眼鏡で本を苦もなく読むことができるようになればどんなにか素晴らしいだろう。明かりと拡大鏡が設置された閲覧席があるならきっと喜ばれることであろう。
外国人、老人、身体障害者、地域社会にはいろいろな人々が生活している。読書の好きな車椅子の人が自由に図書館の利用ができるようになったらなんと素晴らしいことか。