side by side:湘南夫婦のあしあと

二人が好きな地元湘南、スポーツ観戦、旅行、食べ歩き,音楽・美術鑑賞など、日々のあれこれを綴ります

ライオンのおやつ 小川糸 (2335)

2023年09月11日 | 書籍・雑誌

*****ご注意! 一部ネタバレの可能性があります!*****


余命宣告を受け、残りの人生をホスピスで過ごすことを選択した30代女性の海野雫が主人公 
雫が、瀬戸内のレモンの島にある ライオンの家に到着し息を引き取るまでの約2か月が描かれる

死(癌)と向き合い旅立ちの日を迎える、という重いテーマですが、舞台設定や食事関連の描写がとても心温まるもので、心にダメージを持つことなくページを進めることができた。
とは言っても病気の進行を有耶無耶に描くのではなく、主人公が弱っていく様子もキチンと描かれている。

痛みが増してモルヒネ治療を入れたり、眠ることが増えて日にちの感覚がなくなったり、数日間熱にうなされていたらオムツに代わっていたり、食べたいものが喉を通らなくなったり、声が出なくなり言葉を伝えられなくなったり・・・

食事の場面の描写はとても滋味あふれていて、美味しそう。
雫の生きる意欲にもなって頼もしい

人生の最後の日々、ライオンの家の主宰者マドンナを始め周りのヘルパーさんらとの出会いから、雫は色々な気づきを受ける。
特に入居者がリクエストできる「おやつの時間」で、雫は入居者の様々な人生をかいま見る

死への不安を取り除き、生き続けることを感謝する雫の心の変化は、読んでいて心の奥が温まるものだった。

終盤のエピローグには泣いてしまった。
雫が穏やかに旅立ったと分かっていても、残される者の無力さ・非力さを辛いと思った。
回りの人が出来ることって何なんだろう・・・

既にNHKでドラマ化がされています。
私も見ていて、後追いで原作を読んだ形になりました。


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