side by side:湘南夫婦のあしあと

二人が好きな地元湘南、スポーツ観戦、旅行、食べ歩き,音楽・美術鑑賞など、日々のあれこれを綴ります

マリスアングル 誉田哲也 (2506)

2025年02月15日 | 書籍・雑誌

*****ご注意!一部ネタバレの可能性があります!*****


2023年発刊の姫川玲子シリーズ
今回は誉田哲也氏の別の女性刑事シリーズの魚住久江が捜査一課姫川班に異動してくる

姫川シリーズは面白いけど、時に姫川の思考が重く感じて距離を置いてしまいがち。
一方、魚住久江シリーズはかなり好きで、魚住登場で二人の女性刑事の対比も面白かった。
(魚住シリーズは旧ブログの2013年でした!10年以上前!)

事件は廃屋で頭部損傷の身元不明遺体が発見される
廃屋なのに、遺体発見の部屋は監禁部屋のように改装されていた

捜査が進むにつれて朝陽新聞の創業者一族で取締役の葛城が関係者であることが浮上する
週刊誌を賑わせているジャングルジャパンの買収とそれに対抗しようとしている朝陽新聞のトラブルなのか

並行して、朝陽新聞が捏造した従軍慰安婦の記事の影響を受けた少女と家族が語られていて、事件との接点が見えてくる

姫川の閃きから周りを巻き込む捜査と魚住の人の懐に入り込む捜査
本作では姫川・魚住とも互いを認め尊重し合う良関係だった
この姫川班のメンバーなら次作も楽しみ

2023年10月30日 初版第一刷発行
初出 ジャーロ86号~90号
装幀 泉澤光雄
写真提供 Mint Images/ Mint Images RF/ Getty Images
                 PIXTA, ostill//123RF,  christerme/123RF

鬼の哭く里 中山七里 (2505)

2025年02月06日 | 書籍・雑誌

*****ご注意!一部ネタバレの可能性があります!*****


久しぶりの中山七里作品

人口300人の限界集落の農村
終戦直後の惨殺事件の祟りが現在も続いていると信じている村が舞台
鬼哭山から鬼の声が聞こえた夜は死人が出るといわれていたう。

その村に都会から移住してきた男性麻宮が移住してきたが、コロナ禍もあり村人は麻宮に対して排他的態度を硬化させる
麻宮の隣家に住む中学生裕也は都会への憧れと閉鎖的な村への辟易から、麻宮と接する唯一の村人となる。

村人が死亡し、コロナ感染が確認されると、村人は全ての元凶は麻宮だとより感情的・攻撃的になっていく

テレビドラマ向きの話だが、地方過疎地の閉鎖性は比較的多く語られている域
300人の村に中学生の子供がいたり、50代の家族がいる設定だったが、個人的には違和感
その人口では50代以下は教育や仕事の機会を求めて村を出て行って70代後半以降の高齢者のみとなっているのでは・・・と思った。



2024年5月30日初版第一刷り
初出 ジャーロ 75号~84号
ブックデザイン 坂野公一+吉田友美
イラストレーション 緒賀岳志
カバー印刷 萩原印刷

凍結事案捜査班 時の残像 麻見和史 (2504)

2025年02月02日 | 書籍・雑誌

*****ご注意!一部ネタバレの可能性があります!*****


未解決事件(コールドケース)を扱う部署の藤木を主人公とするシリーズ第2弾

遺体が激しく損壊された殺人事件が発生
捜査の中、過去の事件に関連する人物が浮上したことから凍結捜査班に声がかかる

過去の事件と複雑に絡んでいることが徐々に判明してくる
後半からヤングケアラーだった少年が事件に何らか関わっていると推察され、妻を介護した経験のある藤木は少年に大きく感情加担してしまう
藤木の介護や亡き妻への思いの段に一層の熱量を感じるのは、作者自身の人生に重なる部分もあるためか

犯人には納得できるのだが、遺体損壊が他人に罪をきせるためだったにしては執拗すぎる気がした

藤木の妻の遺品整理は始まったばかり
シリーズは続きそうだ


首木の民 誉田哲也 (2503)

2025年01月25日 | 書籍・雑誌

*****ご注意!一部ネタバレの可能性があります!*****


誉田作品は1年以上ぶり
誉田哲也氏の作品といえば、ストロベリーナイトに代表される事件描写のグロさが人間の弱さ・脆さを感じる絶望と希望の複雑な感情が湧いてくるのだけど・・・

題名とカバーデザインをみて、想像が先走ってしまった。

窃盗と公務執行妨害容疑で逮捕された久和は取調べ冒頭に「公務員は信じていない」と宣言し、事件に関することへの供述を拒否
一方で元財務省官僚だった久和は、取調べ担当の佐久間に経済のイロハを講義しだす

佐久間が取調べ(という名の久和の一人語り)している間に部下が捜査して単なる窃盗事件ではなく過去の交通事故揉み消しなどが発覚してくる
が、正直事件としては小粒だし、さほどの捻りはない
財務官僚が登場してきたあたりで、事件の行く末が見えてしまった。
多くのページが割かれた久和の「財務省批判」も何処かで耳にした内容でもある。
財務官僚(とその家族)のエリート気質が事件を生んだともいえるけど、帯宣伝のような社会派小説という感じでもなった


2024年6月22日第一刷発行
初出 小説推理 2023年5月号~2024年5月号
装丁 bookwall
写真 Matan / adobe stock



ジャッジメント 佐藤青南 (2502)

2025年01月20日 | 書籍・雑誌

*****ご注意!一部ネタバレの可能性があります!*****


新人弁護士中垣は公立高校の元高校球児で高3の夏に甲子園の切符も手にしていた
中垣の元に野球部のチームメイトでプロに進んだ宇土の弁護依頼が入る
宇土をスカウトした所属チームの監督の殺害容疑がかけられていた。
戦力外通告を受けた宇土が自棄になっての犯行とみられていた。

現在進行形の法廷と高3夏の県大会の場面が交互に語られて、やや読みつらい感はあったが、そこに伏線があり、最後は納得の結末だった

昨日への誓い 警視庁総合支援課3 堂場瞬一 (2501)

2025年01月17日 | 書籍・雑誌


組織名が被害者支援課から総合支援課へ変わってのシリーズ3作目
主人公は自らも加害者家族の柿谷晶
柿谷晶/総合支援課シリーズ1,2作も読んでいるけど、レビュー書き損ねていました。

仕事はできるが人の忠告に素直に耳を傾けられない晶の性格にストレスを感じながら読み進める

被害者支援課立ち上げ時代の被害者家族の訃報が入る
担当した斉木は既に退職していた
最近まで交流があったと言う被害者遺族と、全く交流していないと言い張る斉木に違和感を覚える晶だが支援課として対応できることはない

一方YouTuberが関与する交通事故で支援活動をしていた晶は事件現場近くの防犯カメラに斉木の姿を見つける

若干、事件の結びつきに無理やりを感じるけど、肝心なのはそこではない
支援課に捜査権が与えられる日が来るのか
晶が成長して周辺に安堵を与えてくれる日はくるのか
支援対象者に入れ込みすぎ、猪突猛進ぶりな晶を危なかったしいと思いつつ、面白い存在と周辺が思っているところが警察の懐の深さであってほしいと思う


天才たちの日課 女性編 メイソン・カリー (2447)

2024年12月28日 | 書籍・雑誌

*****ご注意!一部ネタバレの可能性があります*****


天才・偉人たちの功績とは違った日常生活の拘りや習慣にスポットをあてたヒット作「天才たちの日課」の女性版
前作はどうしても男性が多くなってしまったことから、女性限定でまとめた

日本人では唯一草間弥生が選ばれている
作家・画家・作曲家などクリエイティブ業の女性達
サガン、ブロンテ、ミッチェルら作家や女優サラ・ベルナールなど知っている名を見つけたが、大半が私の勉強不足で知らない名前が並ぶ
また故人がほとんど

ルーティンのヒントのほか女性としてどう仕事と家庭を両立してきたのかも興味があったが、生きてきた時代が違いすぎた



架空犯 東野圭吾 (2446)

2024年12月22日 | 書籍・雑誌

***** ご注意!一部ネタバレの可能性があります!*****


藤堂都議会議員と元女優の妻が自宅火災現場から焼死体で発見された殺人事件を解明していく捜査一課強行犯係の巡査部長 五代努

五代は東野作品「白鳥とコウモリ」でも事件を解明した人物

五代はペアを組むことになった所轄の山尾刑事に早くから違和感を感じる。
藤堂議員と妻江利子が同じ高校で教師と生徒だったという接点から過去を洗っていくうちに、山尾も江利子と同級だったことを知る

事件は山尾が関与を認め、警察は不祥事の対応を追われる中、五代がコツコツと事件を紐解いていく
上司の信任厚い五代の急変事態にも流されない冷静な判断、捜査に唸らされる

2024年11月1日第一刷り発行
初出 小説幻冬 2023年3月号、10月号、2024年4~9月号



まいまいつぶろ 御庭番耳目抄 村木嵐 (2445)

2024年12月14日 | 書籍・雑誌

*****ご注意! 一部ネタバレの可能性があります!*****


直木賞ノミネート作品の「まいまいつぶろ」のスピンオフ編的作品
「まいまいつぶろ」では、徳川9代将軍家重と通嗣忠光の主従・友情を超えた繋がりが描かれていたが、本作では「まいまいつぶろ」で登場した周辺人物のサイドストーリー
隠密の万里のエピソードという触れ込みだったが、家重の祖母、忠光の妻子、家重の将軍就任を断固と反対した老中乗邑、10代将軍家治編の5編からなる

疑惑を生まないとの信念から家族にも贈答を禁じた忠光の妻子のストーリーには泣かされる
実に嫌な人物に描かれていた乗邑が将軍家重に反対した理由も判明
それぞれが一生懸命自分の立場を全うしようとした結果だったのだなぁと納得した

「まいまいつぶろ」の世界を2度楽しめる作品

Spring 恩田陸 (2444)

2024年12月09日 | 書籍・雑誌

*****ご注意! 一部ネタバレの可能性があります!*****


天才バレエダンサーであり振付師の萬春(よろづはる)の人生を4つの視点から語るバレエ小説

同僚のバレエダンサー、幼少から文化的影響を受けた叔父、同じバレエ教室で育った作曲家、そして本人
時に時代が戻ったりするけど、4つの視点から萬春、特に彼の振り付け作品の閃き、思いが解き明かされる
ノンフィクションではあるが、どこかで実現しているような「バレエの世界」

振り付け作品のヒントになったり、実際使った曲など、芸術的関心・興味がくすぐられる
読後にバレエ作品を観たくなる作品

ハードカバー本は純白なカバーを外すと主人公「春」をイメージしてしまう軽やかな華やかさ

2024年4月4日初版第一刷り
ブックデザイン:鈴木成一デザイン室
各ページ隅にバレエダンサーの絵、パラパラ漫画で動く