このたびの「関東・東北豪雨」で被災された方々に心からお見舞い申し上げます。
前回、石巻の川開きについて少しお知らせしました。
すると、その時石巻で川開きの花火を観賞していた「ひまわりさん」からお便りが届きました。
紹介させていただきます。
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“天業は健なり"この言葉がとても気に入っている。何よりも健康に感謝をしている。母は90才。石巻の人。健在。いつになったら介護認定を受けようかと観察中である。が、まだまだ大丈夫な様子。感謝。
私は他県に住んでいて母からしきりに電話がかかってくる。『庭の百日紅の花が咲いたよ』『夏からずっとずっと咲いているよ』『津波の水を被っても全然負けずに強かったよ』と。そろそろ又石巻に行こうかなぁ。9/17記。
7/31-8/1の石巻川開きには、私は母とべったりと寄り添って二階の窓から花火を見ていた。花火は中瀬であげられるので、以前、大橋であげられていた仕掛け花火はない。もしあったとしても二階の窓からは見れない。翌日のブルーインパルスの航空ショウも快晴に恵まれて見事だった。空一杯に繰り広げられる夜の花火も昼の航空ショウも母と一緒に自宅から眺められて幸せでした。年に一度の最高の贅沢です。
花火の発射技術は、三年ほど前から新発明があったそうで、革新が進み、夜空には様々な造形が増えました。にこちゃん、蝶々、ハート、人形、花、さくら、魚、ドラえもん…。歓声が聞こえてくる。見たことのない色、形、30種類くらい数えました。
母は若い頃、笑いすぎて涙を流していたことがある。手で涙を拭いながら笑い転げる。私も同じく、一緒に笑いすぎて目に涙、息が苦しくなった事があった。子どもの頃の思い出。今はなぜか、あれほどの笑いがないなぁ。日常の生活の中での些細な出来事が、アホらしく、面白くて笑ってしまったはずだ。どんなネタだったのか覚えていない。たくさんあったはず。あの笑いをもう一度再現したい。再現できたならば芸人になれるかも。キャラとしては母も私も才能たっぶり。
“腹をかかえて涙を流す程の笑いを目指そう"
そんな瞬間が日常の中に少しでも作れたならば、心の復興と呼べるだろうか。
あ、思い出した。ひとつ。母は昔、応接間に通された大切なお客様にコーヒーを出すとき、塩味にしてしまった。砂糖と間違えて。お客様の『ウッ』とした顔を見て気付き、父に怒られ、ビビって青くなり、あわてて又入れ直した。大変な失礼をやらかした母。が、母は翌日笑い転げた。私も笑っちゃった。マジでアホをやった自分を笑う母。私は、『ウッ』と塩味のコーヒーを味見させられたお客様の気の毒な顔を想像して笑ってしまった。母はけっしてわざとした訳ではない。父は笑わなかった。お笑い芸人にならばその時自分が笑ってはならない。お客様に大変失礼です。 この話は母の記憶にまだあるだろうか。今度会うときは是非思い出させよう。さすがにこれは石巻の人のノリだねぇ。
母の和室は一階にあり津波で壊滅したが、改修して今はそこに住んでいる。あの時、そこに3メートルの波が来た。二階に逃げて命が助かった。せっかく助かって命拾いをしたのに、母と一緒に暮らしていた息子(私の弟)の嫁が、持病が急に悪化して二年前に亡くなった。思いがけない事ばかりが続いた。今は弟と二人暮らし。台所も頑張っている。犬の餌やりも母の仕事。震災から4年半が過ぎた。
私は母より25才若い。母と共にマダラになりそうだけれど、しっかりしなくてはならない。
母の言葉は年々情感が増している。電話をかけると『あぁ、今丁度、声を聞きたいと思っていたところだよ』とか『丁度今、電話をしようと思っていたところだよ』と言う。胸にじんじんと響いてくる。四六時中、私の事を考えているのかなぁ。もしかして。
母はこんなに自分の心を語る人ではなかった。逆境の時ほど黙々と無口になり忍耐強い人だった。
母娘の確執と呼べるものは昔はあった。若い頃はあったと思うが、今はお互いが古くなっていて、どこかへ消えてしまった。いえ、つい最近まであった。母は私の前では、いまだに母親たらんとするのだ。つい一年前の法事の時にも…。これは長くなるので具体例は省きます。ご想像にお任せです。
私は今でも母の味が食べられる。先日は母のお葛かけを食べた。
私はいつまでも貴女の娘。私には子や孫がいる。私の孫は貴女のひ孫よ。お忘れなく。大丈夫かなぁ…。
『おまえが遠くさ、嫁に行ったのが、残念だったやぁ』と何度か言われた。ホラ、又電話の向こうで言っている。苦笑。
そろそろ、貴方から生まれた娘のこの顔を見せに、又、石巻へ行きましょう。
まだいすのまぎさいぐべがや。
百日紅の花でも見に。
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ひまわりさん、お便りありがとうございます。
震災から4年半経過したからこその穏やかな至福のひと時が浮かんでくるようなお便りでした。
そして、今年の川開きの様子も想像できました。