どんぐりさんからお便りが届きました。
以下に紹介いたします。
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『石巻学』6号紹介
『石巻学』6号が刊行された。特集は「海を渡った人々」。
石巻と言えば、遠くに・迅速に・大量に、という運送手段がまだ船しかない時代の、仙台藩や北上川を利用する南部藩などの米の積出港として、海の要衝だった。
この地に生まれ育った男で毎日海を見ていれば、海の向こうに何があるか、国内であろうが国外であろうが、海を渡って違う土地に行ってみたい、今と違う人生を生きてみたいという夢を抱いたに相違ない。
まあ、単純には言えないだろうが、鉄道や自動車や飛行機が日本中をくまなく結ぶようになるまで、日本の各港と、どんな国かはわからないが海の向こうの世界と、つながる可能性があったのが石巻の港だった。
海にはロマンがあった。たしかに板子一枚下は地獄だが、石巻の男なら、一度は海に漕ぎ出してみたいと思ったことだろう。女性は絶対思わないだろうが、女は女でそんな男に魅力を感じたことだろう。
新田次郎が著わした『アラスカ物語』の主人公フランク安田は海を渡った成功例の典型だろうが、誰もが成功するわけではなく、途中で挫折したり、海で亡くなった人のほうがはるかに多いと思われる。
また若宮丸で遭難してたまたまロシア船に助けられ、望まなかったにもかかわらず世界一周して戻ったり、かの地に住み着かざるを得なかった乗組員たちもいる。
支倉常長は伊達政宗の命を受け、遣欧使節としてスペインの王やローマ教皇に謁見しながら、帰国後は不遇のうちに亡くなっている。
この本には、石巻をめぐる海の男たちの人生模様と、海にこぎ出たあとの余波と言おうかその後の周辺の話を知ることができる。
うまく海にこぎ出ても、未知の世界はさらに困難が待ち受けていたのは当然で、困難に、あえて石巻から船出する人たちの物語は、読みだしたら最後までひきつけられて、途中で気を抜けない。一気に読んだ後は人生をいくつも経験したような疲労感が残る。男たちと一緒に、何度も海に漕ぎ出るのはかなり疲れる。
しかしそれだけ読みごたえがあった。
私個人としては、幕末に蝦夷地に向かう開陽丸が石巻の海の水平線に見える姿を何度も連想する。北海道という新天地に、なんらかの活路を見いだしたいと石巻(折浜)に集結して乗り込んだであろう、敗残の兵となった幕府軍の人々を、開陽丸が乗せたという歴史が強烈に印象に残り、それらの人々の一人一人の人生模様を知ることができないだろうかと興味をいだくのだが……。
たかだか北海道の箱館では海を渡った人たちにはなり得ないだろうが、それなりに北の新天地を目指した人々ではあった。
番外編で誰かに書いてほしかったなあ。細かい記録がないだろうから難しいか。
それでは本の主な内容を列挙しておこう。
日本の漂流記について……吉村昭
紺色の衣服の行方
石巻若宮丸漂流民の会二〇年の‶航路″
極北アラスカ フランク安田残照
ハワイに渡った元年者、牧野富三郎
希望と絶望と鎮魂の航路―三度、大海を渡った高橋英吉
北洋漁業の大恩人平塚常三郎
慶長遣欧使節のドラマをいま
阿部豊―ハリウッドに渡った男
加藤九祚半生を語る—シベリア大学、出会い、そして石巻
ホヤパイ、海を渡る
船乗り人生を振り返る
このほか、連載ものの本間家蔵出しエッセー⑥の「祖父のアメリカ日記」は、日記という本人直筆の資料で構成されているので、状況がよくわかって、興味深かった。
連載はほかに、
石巻さかな族列伝⑥
岡田劇場物語⑥
『石巻学』6号
2021年8月20日発行
発行=石巻学プロジェクト(代表・大島幹雄)
発売=(有)こぶし書房
定価=(本体1500円+税)
本は、本屋さんでもネットでも直接大島さんでも買えます。
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どんぐりさん、ありがとうございます。
この紹介文を読んだだけでも、いろいろなことが頭に浮かんできました。
私たちも海を渡らないまでも、海に関する体験をたくさんして来ています。
遊覧船に乗って潮風に当たりながらの旅(?)はいつもワクワクドキドキしていました。
青い大きな海は身近で魅力的でした。そんな海に漕ぎ出した強者(つわもの)達の話はどんなでしょうか?私も読んでみたいと思います。