いえ、再びディキンスンの他の詩を紹介するとかでも良かったんですけど、今回本文のほうが短いので、こういう時に書けそうなこと書いておこうかな~なんて(いえ、実際はただのくだらない駄文です。例によって^^;)
わたし、「進撃の巨人」はアニメで嵌まった口でした。。。
でもシーズン1のほうは、深夜にやっていたせいもあって、全話見てる感じじゃなくて……大体のところ、肝心なところは見たかな~というくらいな感じだったでしょうか。
んで、シーズン2のほうは、割と最近Huluのほうで全話見ました♪
アニメの1のほう見終わった時も、続きはもちろん気になったんですよ。でもこれ、原作で続き読んだりしたらドツボ☆に嵌まるなと思って、原作が完結したら一気読み――とか、そういうふうにしたいなと思ってて(^^;)
いえ、じゃないと「つぅづきが気ぃになるぅぅぅぅっ!!」と叫びながら、床をゴロゴロ☆ローラーのように転げ回らなきゃなんないと思ってたので……んでも、アニメの2のほうを見終わった時点で、我慢が出来なくなりまして、まずは公式サイトのほうで原作を立ち読みして、2の時点でどのくらい話が進んでるのか確かめてみることにしました
なんていうか、てっきりわたし、アニメの内容がかなり原作のほうに近づいてるから、2のほうはああした中途半端なところで終わってるのかなって思ってて(^^;)
でも、原作のほうが思った以上にかなり先に進んでいたもので、22巻まで立ち読みして、自分的にちょうど「このあたりのことを知りたい!!」と思ったのが21とか22あたりだったので、電子図書のタダ券使って、この2冊だけ読んでみることにしました。。。
いやあ~、今さらですけど、面白いですねえ
んで、これはわたし個人の感想なんですけど、なんとなくわたし的に「ゲーム・オブ・スローンズ」っていう海ドラを思いだしたというか(^^;)
いえ、わたしと同じこと思う人がどのくらいいるかってわからないんですけど(汗)、進撃の巨人ってやっぱり共感して感情移入してるキャラとかがあっさり巨人に食べられちゃったり、かなり残酷に殺されたりしますよね
そういう、「生きる意味ってなんだろう」っていう、読者につきつけてくる「感じ」がゲーム・オブ・スローンズと似てるんだなって思ったというか。。。
ゲーム・オブ・スローンズも、自分が共感してるキャラが突然「ええっ!?」てなることの連続で、その点に驚くのと同時に、残酷な方法で死ぬとかそういうシーンがすごく多くて……これで「生きている意味」ってなんなんだろうとか、そういうことをすごく考えさせられるというか(^^;)
う゛~ん。原作のまだ読んでない巻もいずれ全部読もうとは思ってるんですけど……ゲーム・オブ・スローンズはドラマのほうが8シーズンで終わることに決定しており、今見れるのが6シーズンの「冬の狂風」までで――いえ、わたし的にこの6で奴が死んでくれて実にスッキリしました(笑)
しかも、こいつだけはより一等残酷な殺され方で絶対死んでくんなきゃ困るッ!!てな奴が、最高の形で死んでくれて、マジほんと裏切られずサイコーでした(笑)
こういう、色んな人が「えっ!?この人、こんなところでこんなふうに死んじゃうの!?」っていう展開が多い一方、ポイントを押さえて「そうそう、コイツは一等サイテーな死に方で殺られてくんなき困るッ!!」ていう部分で決して外さないっていうのも、なんとなく進撃の巨人と共通してるように感じられ……なんにしても本当、進撃の巨人もゲーム・オブ・スローンズも最後が一体どうなるのか、すべての謎が解かれる瞬間がとっても楽しみです!!
まあ、なんというかつまんない感想文で申し訳ないのですが(汗)、こういうふうに萌えをちょっと吐きだすことで、わたし的には自己満足できて良かったです(笑)
ではでは、次回は確かソフィvsステラといったところだったかな~なんて思います♪(^^)
それではまた~!!
ぼくの大好きなソフィおばさん。-【20】-
「もちろんそんなのさ、簡単ではあるんだぜ。なんでって、アンディはルックスもいいし、むしろ金なんか払わなくても女のほうから飛びついてくる感じだろうしさ。俺が心配してるのは、なんていうかその……こんなことを俺が言うなんて馬鹿みたいだけど、アンディは真面目な質だし、もっとこう慎重にっていうか、本当のいい恋愛みたいのを大事にして欲しい気がするんだ。ロザリーとのことはもちろん知ってるけど、あんなねんねよりも確かに俺でも断然年上がいいな。いや、俺が言いたいのは……何人も男を知ってるであろうソフィさんの前で恥をかきたくないとか男としてリードしたいっていうことなら協力してもいいってこと。そういう割り切った関係を結べる女なら紹介できるけど、おまえの愛するおばさんにあてつけるために女を知りたいとかっていうんなら、この話は断るよ」
「アンソニー、おまえっていい奴だな」
アンディは煙草をふかしながら、思わず笑ってしまった。アンソニーはザック派の生徒には若干軽蔑の目で見られる嫌いがあるのだが、アンディの考えでは彼らの幾人かを束にしてもアンソニーの誠実さや義理堅さには届かないような気がしたものである。
「正直、僕も自分がどうしたいのかはよくわかんないんだ。ただ、こういう時にちょっと悪い系の奴から薬を売ってもらったりとかっていうのは、なんかわかる気がする。前まではね、自分だけはそんなふうにならないだなんて、根拠もなく思ってたもんだけど。テストでいい点なんかいくら取っても、結局おばさんはあの男のもので……そう思ったら授業にも身が入らないし、むしろなんか悪さでもしてまたおばさんが校長室にでも呼ばれればいいとかって思ったり……そういう自分を最低だなと思いもするのに、実際はそんなことすらもどっか他人ごとなんだ」
「そっか。じゃあさ、今年の春休みあたり、ユトレイシアの俺の屋敷に来いよ。俺たちのやってるバンドのファンの子なんかもいるし、そういうのじゃなくて安全なプロの女のほうがいいっていうんなら、ブロンドでもブルネットでも選りどりみどりで紹介してやるから」
――そして、こうした話運びでアンディが紹介されたのが、<ステラ・マクファーソン>という高級娼婦クラブに在籍している女性だった。髪はブルネットで瞳も艶やかな黒い眼差しをしていた。ユトレイシアの郊外にあるアンソニーの父親の豪邸は、部屋数も多く、アンソニーが派手なパーティを催すたびに、ゲストルームでは誰か彼かがセックスしていたり、酒を飲んだりドラッグをやっているという始末なのらしかった。
アンディはアンソニーの結成したバンド、<King of the crow>の他のメンバーたちも紹介してもらったが(屋敷の地下に防音設備の整ったレコーディングスタジオがある)、三流以下の公立校に通っているという彼らと話していると、アンディは何故アンソニーがフェザーライル校で若干浮いて見えるのかが初めてわかったような気がした。
「アンソニーは俺たち落ちこぼれの、まあ期待の星ってとこだな」
「そうそう。こいつ、もしフェザーライルに合格したら絶対レコーディングスタジオを作ってくれって親父に頼みこんで、それを目当てに合格したようなもんなんだぜ」
「フェザーライルの気風は自分には合わないとか言ってたわりに、アンディみたいな友達がいるあたり、意外とアンソニーも順応してるんだなってわかって、なんかほっとしたよ」
その二週間ほどの短い春休み、ドラム担当のジム・ラザフォードにはドラムを、ベース担当の弟のキースからはベースを、ギターを弾くのが上手いジェームス・ライツからはギターの演奏を教わるなどして、アンディは昼から夕方までの時間をのんびり過ごした。彼らのほうでもアンディのことが気に入ったようで、夜はユトレイシアでも有名な会員制のレストランやクラブなどにみんなでつるんで出かけていった。
男五人でめかしこんでフェラーリに乗りこむと、都会の夜の世界では女性などいくらでも寄ってきた。もちろん十五歳だなどと、アンディもアンソニーも野暮なことは言わない。だがアンソニーとは違い、アンディはそうした場所で知り合った女性とは軽い恋愛の駆け引きをするだけに留めておいた。そしてこの春にプロの女性を相手にして童貞を失い、またユトレイシアへ来た時には指名するという約束をして、アンディは<ステラ・マクファーソン>なる女性と別れていたのである。
「アンディ、おまえってやっぱ変な奴だよな」
「なんでさ」
春休みが明け、再び校舎の西階段で合流すると、煙草を吸いながらアンソニーは笑ったものだった。
「だって、初めての相手がプロだなんて、一生ついてまわる汚点みたいなもんじゃねえか。それをさ、おまえは他にも女はいるってのに、出来ればなるべくおばさんと似てない女性がいいだの注文を出してさ……実際、マジで受けるぜ」
「しょうがないだろ。僕は誰かをソフィのかわりにしたいってわけじゃないからね。けど、実際いい女(ひと)だったよ。礼儀正しくて、男に恥なんかかかせないって感じの……女性っていうのまあ、外見じゃないな。僕はさ、容姿がおばさんに似てなきゃいいって思ってたけど、なんか性格のほうがちょっと似てた気がする。僕の気のせいだったかもしれないけど」
「それで?童貞を喪失した感想は?」
「ははっ」とアンディは笑った。「いくら親友でも、そういうことをストレートに聞くか?なんていうか……とにかく凄く良かったよ。なんかちょっと自信がついた気もするし。それに、これをきっかけに他の女性とも色々経験したいって感じでもない。やっぱり僕はおばさんとこれをしたいってこともよくわかったし……」
「ふうん。やっぱりアンディくんは真面目だねえ。俺なんか、一度目覚めて以降、もう太陽の光線を浴びた赤毛の黄色い猿ってくらい、どうかしちゃったけどねえ。おまえがさっき言ったのとは別の意味で、女ってのは外見じゃないな。いや、ルックスのいいのが一番ではあるけど、俺の場合とりあえずやらせてくれるんなら多少ブス目だろうと太ってようとどうでもいい感じだな。後くされがないっていうのであればね。で、そんなふうにして女と寝てると、大体どの女にもいいところってのが必ずひとつはある。俺が思うに――相手のことを本当に愛してさえいたら、そのいいところだけが目に入ってきて、他の欠点は多少背後に遠ざかるみたいになるんじゃないかな。ま、おまえのおばさんは特別中の特別だけどね。たま~に、アンディの愛するソフィさんみたいにさ、美人なのに性格も良くて……みたいな女(ひと)が、この広い世界には存在するものなんだろうよ」
「もうこの話はいいよ」
アンディは照れたように言って、携帯用の灰皿で短くなった煙草を揉み消した。
今年の春休みはノースルイスには帰らず、友人のアンソニー・ワイルの邸宅で過ごすと、アンディは前もってソフィに伝えてあった。そして彼女はそのことを随分気にしたらしく、ユトレイシアにあるフィッシャー家の本邸までやって来ていたのである。
アンディはそうと知っても父親と継母のいる本邸へはほとんど出かけていくこともなく、もっぱらワイル家の屋敷でアンソニーの仲間たちと遊んで過ごすことのほうを選んだ。けれど、こんなに近くにいるのに一度も顔も見ないというのも、アンディにはひどく寂しいことのように感じられ、やはり春休みの終わる少し前にソフィに会いに行くことにしたのである。
ユトレイシア郊外の、金持ちばかりの住む高級住宅街として有名な場所の一画にフィッシャー家の本邸はあるのだが、そこはアンディの実の母であるフローレンスが自殺した場所であったため、以後、アンディはなんとなくそこから遠ざけられ、バートランドの母親の住むノースルイスの別邸で育てられるということになったのである。
ユトレイシアの本邸は、ギリシャのアクロポリスを思わせるようなファザードをしており、広い庭のほうも大体そのような着想により、白の大理石によって統一されていた。もっともそのような美しい庭でアンディの母親は拳銃自殺していたのだったが、バートランドがユトレイシアの本邸から息子を遠ざけたのは、おもにそうした理由からだったといえる。つまり、フィッシャー家の本邸でそのような事件が起きたというのは有名な話であり、いつ何時、悪意ある善人からアンディがそのことを知るかもわからないと考えてのことだったのである。
もっとも、アンディはそのことをこう考えていた。父親は仕事の本拠としている場所に息子を呼ぶなど煩わしいと考え、また愛人との夜の生活を邪魔されたくないとの思惑もあって、そこへ自分を呼びたくないのだろうとずっと思っていたのである。
春の花で満開になった庭で、天使の像が水瓶を傾ける噴水の前で、アンディは三か月ぶりにソフィと再会した。この時彼は童貞を喪ったばかりだったので、自分が彼女にとって変わって見えるかどうかと、そんなことが気になった。おばさんには昔から、アンディに関することでは「なんでもお見通し」といったところがあるので、何かが違って見えるだろうかと、なんとなくそんな気がしたのである。
だが、実際はいつもどおりだった。ソフィはアンディがほとんど手紙を寄こさず、学校の様子も知らせて来ないので、アームストロング校長に電話をして自分の息子がどんな様子かと問い合わせたということだった。
「今学期は成績のほうがあんまり良くなくて、ごめん」
大理石の噴水のへりに腰掛けながら、ソフィはそれまで庭で摘んでいた黄水仙をアンディとの間に置いた。食堂の飾りつけなどは女中が行うものなので、これはソフィが自分で寝室に飾るために摘んでいたものなのだろうと、アンディはそう見当をつける。
「どうしてアンディがわたしにあやまるの?勉強っていうのは、自分のためにするものでしょ。それに、お父さんは息子が一流の私学校を無事卒業さえしてくれたらいいのであって、成績に関してうるさいわけじゃないものね。だからわたしにあやまることなんてないのよ」
「いや、成績のほうが落ちたのは、単なる怠慢だよ。正直、そうすることでおばさんが自分のせいかもしれないと思って苦しめばいいって思う気持ちも、少しだけあった」
「……アンディ!!」
ソフィの顔が微かに青ざめたので、アンディは彼女を安心させるために、その手を握りしめ、何度かさすった。
「去年のクリスマスと新年を一緒に過ごした時、僕の態度は悪かったけど、まあでもそれはしょうがないことだよ。おばさんも僕に対してどうしていいかわからないだろうけど、それは僕だって同じなんだ。本当はね――三か月くらいずっと離れてて、少し会ってまた別れて……みたいな生活なんだから、会えた時には僕も機嫌よくしていたいんだよ。でも僕が無理にそうするとしたら、それはただの無理のある演技なんだ。まあ、今年はジュニア最後の年だし、僕は来年シニアになる。そういうことを考えたら、僕もより大人として行動したいなとは思うんだ。勉強はまあ、おばさんに成績表を見せるためじゃなくて、そりゃ当然自分のためにするものだと思うよ。けど結局、おばさんには寄宿学校に通った経験があるわけじゃないし、僕の気持ちはわかんないだろうね」
(ああ、またこのパターンだ)と、アンディはそう思う。毎回、余計なことや棘のあることは決して言うまいと決意して会いにくるのに、実際顔を合わせたとなると、こんなことになってしまうのだ。
「そうね、アンディ。確かにあんたの言うとおりよ。おばさんは高校が嫌になって途中で中退してるし……あんたに何か偉そうに説教したりも出来ないってそう思うわ。おばさんはね、ただあんたが学校で毎日元気にやってくれさえしたらそれでいいのよ。心配ごとや困ったことがあっても、実際おばさんが飛んでいって助けてあげられるってわけじゃないんですもの。かわりに、家に帰って来た時くらいは寛がせてあげたいって思うけど、どうもあんたにとってはわたしがあの屋敷にいても前ほど面白いことはないみたいだものね。でもそれがむしろ普通なんじゃないかって、おばさん受け容れることにしたの」
「……どういう意味?」
アンディは少しばかりムッとして、ソフィの言葉の続きを聞くことにした。
「つまりね、あんたとあたしとは血の繋がりがないかもしれないけど、仮に血が繋がっていたって、普通の親子ならそんなものだわってこと。アンディがいつまでも「ママ、ママ」ってべったりくっついてる感じだったりしたら、それはそれでまた困ったことだろうし……最近のわたしとアンディはうまくいってないけど、思春期の子を持つ親っていうのはどこもこんなものだったりするんじゃないかしらって思いもするのよ」
「それは違うね」アンディははっきりと悪意ある顔をしてせせら笑った。「元はといえばおばさんが先に僕を裏切ったんじゃないか。僕はおばさんがそんな裏切りさえ働かなければ、いつまでもずっと同じままで、成績のほうだって良かったろうよ。ま、どうせ僕なんてどんなに頑張っても結局四番止まりだけどね。それでも、それだっておばさんを喜ばせたくて一生懸命頑張ったことだったのに!」
アンディはソフィの摘んだ黄水仙を噴水の中に払って捨てた。(どいつもこいつもクソ食らえだ!)などと、心の中で悪態をつきながらよく整った芝生の庭を踏みしめ、屋敷正面にある門扉のところまで辿り着く。アンディは門番に命じてその自動扉を開けさせた。白い錬鉄製の扉が左右に開くと、プラタナスの街路樹に煉瓦の舗装道路という道を横切り、アンディは腹を立てたまま、アンソニー・ワイルの屋敷まで歩いて戻るということにしたのだった。
そんなこんなでアンディは三学年の最後の学期を過ごし、結局成績のほうはあまり振るわなかった。彼の人生の中で何か停滞の機運のようなものが襲いかかっており、それで自分は前にも進めず後ろに後戻りも出来ないのではないかと、アンディはそんなふうに感じたものである。さらに、悪いことというのは重なるもので、この頃アンディは膝を故障し、テニスのプレイにも怪我の影響が出ていた。スポーツ専門の整形外科の医師は、リハビリすれば治ると請けあってくれたものの、結局アンディはこの時の故障を契機として、シニアに上がってからはテニス部を辞めるということにした。
そして代わりに入部したのが水泳部だったが、アンディは水泳に関しては大して才覚のようなものがなかった。ただ淡々と練習メニューをこなし、目立たぬ一部員としての役目を何かのお務めよろしく毎日こなすというそれだけの日々だった。
娯楽室でデイモン・アシュクロフトとチェスもしなくなり、花形としてもてはやされたテニスもやめ、成績のほうもいまいち振るわなくなったアンディは、みるみる凡庸な生徒の群れの中へと埋没していった。だが、どんなに悪い機運の流れの中に人生があったとしても、何かひとつくらいはいいことというのはあるもののようである。
シニアに上がってからアンディは、アンソニーと同室となり、学校生活が今までとは別の意味で楽しくなった。この年、というのは四学年に進級した年ということだが、アンソニーはⅠクラスで、アンディはⅡクラスだった。そこで毎日寮へ戻って来るなり、ふたりで今日一日何があったかをあれこれと話しあうのである。
アンディはこのことを契機に煙草をやめ、西階段へはほとんど行かないようになった。何故といって煙草など吸いにいかなくてもこれからは安心してアンソニーとふたりきり、寮の一室で打ち明け話が出来るからである。アンディはシニアに上がるという時、アンソニーとだけはおそらく何があっても同室ということはあるまいと思っていた。むしろハウスマスターあたりは、ワイルがフィッシャーに何か悪い影響を与えることにより、彼の成績が下がったのだろうと考えている節があったため、それはなおのことと言えただろう。
けれどおそらく、アームストロング校長あたりがそのあたりのことを鋭く見抜いたに違いない。アンディはテニスの試合で怪我をした時に、一度校長室へ呼ばれたことがあった。そしてその時に今の自分の現状のようなものを、話せる範囲でアームストロング校長には話しておいたのである。
アンディはシニアに上がった年の一年間、アンソニーと実に楽しく過ごした。それはアンソニーのほうでも同じだったようで、「パブリックスクールなんていうお坊ちゃま学校で親友が出来るとは思ってもみなかった」と彼は言いさえしたものである。
実際、アンディはアンソニーのことを知れば知るほど、彼への尊敬の念が高まっていくのを感じた。フェザーライル校のような場所では、やはり成績優秀な生徒やスポーツの出来る生徒が目立つというのは自然の摂理として当然のことではあるのだが、アンソニーはそのあたりが十人並みであったにしても、単純に人間として面白い奴だとアンディは思っていた。もし自分がアンソニーの立場であったとすれば、バンドをやっていて女子にいかにモテるかといったことを自慢せずにいられなかった気がするのだが、彼にはそういうところがまるでなかった。つまり、パブリック校の生徒を<まともには>相手にしていないのである。
「だって、そうだろ?俺が生きてる世界はお坊ちゃんたちとは違うところにあるんだからさ。一日中曲作ったり歌詞書いたり……ここにいる連中はさ、「それが将来何になるんだい?」としか思ってないような連中ばっかなんだから。確かにグリークラブやブラスバンド部なんかはある。けど、品行方正でお上品な曲か、ポピュラーな曲しか選曲しないような部なんだからな。かといって俺の場合、軽音部を作って自分が中心人物に……なんて面倒以外の何ものでもない。だって俺はさ、自分の最高の仲間とロックバンド組んでて、そっちのことで忙しいからな。なんにしても、アンディが運良く同室者で良かったよ。エイブラハムの奴が同室だった時は、ヘッドホンで音楽聴いてる時でも「何を聴いてるのか」って聴かれたり、「そんな悪魔の音楽などより、賛美歌でも聴きたまえ」なんて具合だったからな。まあ、奴に対する当てつけとして、ブラックサバスを聴いたりしてた俺が悪いのかもしんないけど」
「はははっ。そりゃ、デイヴィッドが怒るわけだ。僕、アンソニーのユトレイシアの屋敷へ行ってみて、初めて君が本当はどんな人間なのかってことがわかったよ。おまえはさ、ある意味ザックよりも凄い奴だと思う。なんでって、その気になれば校内の人気者として目立つことも十分出来るってのに、そうはせずにわざと目立とうとしないんだものな。もちろんザックはいい奴だけど、なんていうか……」
「ま、奴さんはある意味公平すぎんのさ。誰かこいつだけは<特別>って人間を作ろうとしないだろ?べつにそれが悪いってことじゃないがね、ザック様の平和な統治国家みたいなことには、俺は興味がないんだ」
ここでアンソニーは欠伸をし、何か<閃き>のようなものが訪れたのか、机の上に身を伏せると、一身にノートに詩を走り書きしていった。最近アンディは彼が新曲を作るたびに、一番に聴かせてもらうという光栄に浴している。
もっとも、この詩や曲を作っているということはアンソニーにとって重大な秘密らしく、アンディは「誰にも言うなよ」と堅く口止めされていた。そんなことを周囲の人間が知れば、必ず馬鹿にするような奴がひとりくらいは現れるから、というのがその理由だった。
だが、実際には――アンディはアンソニーが作ったデモテープを聴かせてもらったのだが、もしかしたら<King of the crow>は将来的にメジャーになるのではないかという気がしていた。そのくらいのクォリティの高さがすでにあるし、彼らのライヴを一度でも見た者なら、決してリーダー兼ヴォーカルのアンソニーのことを馬鹿にしようとは思わないに違いない。
その八月に十六歳になろうかという夏のこと、アンディはやはりノースルイスの屋敷へは戻らなかった。代わりに再びアンソニーのユトレイシアの屋敷へ出かけていき、彼の仲間と昼間は音楽を作って楽しみ、夜は未成年者が行ってはいけない界隈を豪遊したものである。
そういう時、アンディは一時ソフィに対する切ない想いを忘れることが出来たし、また時々、<ステラ・マクファーソン>という女性を呼び、相手をしてもらうこともあった。アンソニーなどは「他の女も色々試してみりゃいいのに」などと言ってからかったが、アンディはやはり性格が真面目な質だったのだろう。それと、自分にとって初めての女性が気に入ったということもあり、彼は必ず彼女のことを指名することにしていたのである。
「あなた今日、誕生日だったの?」
八月七日から八日に日付が変わると、ステラの横に倒れこみながら「今のが十六歳になって初めてのセックスだ」と、アンディは笑って告白していた。
「うん、そうだよ。これでようやく自分も大人になれたって気がする。もちろん僕が<大人>になれたのは、なんともいっても君のお陰だけど」
「先に誕生日だってこと、教えておいて欲しかったわ。そしたら、もっと色々サービスしたのに」
ステラ・マクファーソンは、長い黒髪の、白い肌が輝くばかりに美しい二十代の若い娘だった。スタイルのいい引き締まった体をしており、アンディの印象としては<娼婦>といった感じはまるでしなかった。つまり、色々な男の手垢のついた汚らわしい女性といったようにはまるで思えなかったということである。
「サービスって、たとえばどんな?」
「ほら、たとえばセクシーな格好をして、ハッピーバースデーを歌いながらその服を脱いでいくとか、そういうこと」
「それはいいね。そういうことなら先に言っておいたら良かったな」
「わたしの裸の体の上にケーキを置いて、あなたが食べるっていうサービスもあるわ」
「それもいいね」と言って、アンディは愉快そうに声を上げて笑った。ステラとは娼婦とその客という割り切った関係ではあるのだが、それでもアンディにはどこか、彼女に情を移しているところがあったといえる。
一度、何故娼婦などしているのかと聞いた時、ステラは法律学校へ通うための資金作りだと答えていた。それが本当にそうなのかどうか、アンディにはわからない。けれどそうした嘘も駆け引きも、アンディにとっては恋愛という人生勉強の一部かもしれなかった。
彼女はアンディにディープキスの仕方を教え、どうすればより女性が感じるのか、性感帯の探り方や太腿のなめ方など、アンディに色々なことを教えてくれた。ステラはこの性の教師の役目と一途で真面目な生徒のことを気に入っていたし、彼からもそうすることで何を得たいのかという目的について割と最初の頃に聞かされていた。
「じゃあ、わたしをその義理のおばさんの代わりだと思って練習してみるといいわ」
ステラにそう言われると、アンディは嫌が上にも興奮した。最初はそこまで自覚的ではなかったのだが、そのことがはっきり<目的>とされ、またそうしてもいいのだということになると、俄然アンディのステラに対する愛撫は今まで以上に激しく、情熱的なものになっていったのである。
アンディがステラのことを気に入ったことには、単純に若くて美しい女性だからということの他に、もうふたつほど理由があったかもしれない。ひとつは、彼女の声がソフィの声と似ていたこと、またもうひとつは彼女が変に恩着せがましくなく、遥かに年下である自分のことを馬鹿にするでもなく、優しくなんでもしてくれたということが大きかったに違いない。
ステラとセックスする時、アンディは必ず電気を消した。そして彼女から行為中に「アンディ」と名前を呼ばれたり、「ああ、アンディ、いいわ……」と言われると堪らなく興奮した。また彼は、相手がもしソフィであれば言えないようなことでも、平気で口にすることが出来た。たとえば、「ステラのここは最高に気持ちいい」だの、「僕に絡みついてくるみたいだ」だの、何かそうした種類の戯言である。もっとも一度、「とろけた熱いバターが詰まってるみたいだ」と言ってしまった時は、あとで冷静になってからあれは失言だったとアンディ自身も思ったにせよ。
なんにしても、金を媒介としてステラとアンディの関係は至極しっくりとうまくいっていた。アンディのほうでは彼女のことを金で雇った娼婦としてではなく、きちんとしたひとりの女性として扱ったし、ステラのほうではここまで礼儀正しく扱われたことがなかったため、なおのこと心をこめて彼にサービスをした……何かそうした関係だったといえる。
その夏の終わりのこと――ステラはアンディとの行為中に、ついうっかり本音を洩らしてしまい、あとになってから激しく後悔した。「ああ、アンディ、愛してるわ!」……その瞬間、彼の体の動きが一瞬止まったのを彼女ははっきり感じたし、そのあとすぐにまた愛撫が開始されたとはいえ、アンディが眠ってしまってから、ついそう言ってしまった自分のことを深く恥じたのである。
おそらくアンディは性行為の最中の愚かな戯言のひとつといったように思ったに違いないし、その点についてステラは心配していない。だが、彼には言っていないことだったが、愚かにも八歳も年下の少年のことを本気で愛しはじめていると気づいて以来――ステラは娼婦という仕事を辞めることにしたのである。娼婦クラブの女将には、唯一アンディから指名のあった時だけ呼んでほしいと話してあった。また、彼女が大学の法学部に在籍しているというのも本当のことであり、来年には検事になるための試験を受ける予定でもあった。
ステラ・マクファーソンというのは無論彼女の本名ではなく、ステラは本当の名前をユリア・レジナルドといった。小さい頃から頭がよく、才気煥発な子であったが、家が貧しい上に兄弟が五人もいたせいで、危うく末娘の彼女は大学へ進学することを断念しなければならないほどだったが、家出同然に田舎を飛びだしてユトレイシアという国一番の都会へやって来ると、とにかくユリアは働きづめに働いた。ウェイトレスに清掃員、ビラ配りにバーテンダー、交通警備員など、色々な職種を経験したが、一度車の展示会場のコンパニオンを経験して以来、彼女の人生は突然百八十度変わったのである。
都会と呼ばれる場所には、ユリアが考えてもみないような<隙間産業>とも呼ぶべき仕事が色々あり、単に見栄を張りたい金持ちがエキストラの友人を結婚式場へ呼ぶであるとか、嘘の恋人の振りをして前妻に見せつけるであるとか、コンパニオンの他にもそこの事業所ではそうした面白い仕事の募集をしており、ユリアは楽しみながら結構な額の金を稼いでいったのである。
そしてそうこうするうちに、いつの間にか娼婦稼業にまで手を出し、人から見れば落ちるところまで落ちたと言われるかもしれないにせよ、ユリアはこうした自分の仕事を楽しんでもいたのである。けれどアンディに出会って以来、ユリアは自分の人生についてあらためて問い直すようになっていた。彼は誠実で真面目な人間であったため、ユリアもまたアンディに相応しいような人間になりたいとの、そのような深い願いを持つようになっていたのである。
とはいえ、アンディは国内随一と言われる金持ち私学校に通うお坊ちゃまであり、どう考えても南西部のど田舎出身のユリアが結ばれていいような相手ではない。もしかしたら彼の深い慈悲心に縋ることで、どうにか愛人のひとりくらいにはなれるかもしれないにせよ、いいところをいってそんなところだろうという気がした。
(それに彼、あんなにも義理のお母さんのことを愛してるんだものね)
ユリアは当然気づいていた。彼が本当はセックスの時に「ステラ」ではなく「ソフィ」と呼びたいのだろうということや、アンディが自分を愛する女性のスペアとして寝ているに過ぎないといったことは。けれど、彼の求め方やキスの仕方などがあまりに熱がこもっていて情熱的なため、いくら<仕事>と割り切ろうとしても、ユリアにとって感情的にそれは無理な話だった。
そして、その冬の誕生日――ユリアは素敵な薔薇の花束を受けとって驚いた。しかもその薔薇の花束にはリルケの「薔薇」という詩まで一緒に同封されていた。彼女はこれまでこんなことをどんな男にもしてもらったことがなかったというのに、まだたった十六歳の男の子の贈り物に、ユリアは思わず感動し、泣いてしまったほどだったのである。
>>続く。