こじらせ女子ですが、何か?

心臓外科医との婚約を解消して以後、恋愛に臆病になっていた理穂。そんな彼女の前に今度は耳鼻科医の先生が現れて!?

惑星パルミラ。-【31】-(最終回)

2022年08月30日 | 惑星パルミラ。

(※『東京リベンジャーズ』に関して、ネタばれ☆があります。一応念のためご注意くださいませm(_ _)m)

 

 さて、今回で最終回なのに何故か『東リベ』の感想です♪

 

 すごーく面白かったっていうのは言うまでもなく……前回、ジャ○プ漫画の超ヒット作が脳裏をよぎっていった――みたいに書いたんですけど、タイムリープといった設定以外では、あくまで生身の人間同士がぶつかりあう喧嘩漫画なので、勝敗の決定が割とリズムよくとんとんとん!とスピーディに進むところも良かったんじゃないかな、なんて

 

 やっぱり、ジャ○プ系のバトル漫画は、決着つくまでにボス戦などは特に時間かかったりするので……もちろん、そっちにはそっちの面白さがあるとはいえ、何か技の名前唱えたりとか、相手の裏の裏をかいてさらに不意をつき――といった、一バトルごとに用意しなきゃなんない要素が少なくていい分、リアル設定を越えない範囲の喧嘩バトルということで、こっちはこっちで面白い……といった印象だったかな、なんて(^^;)

 

 一応、ゲーム的な理想エンディングということで言えば、「みんなが生きていてかつ、未来の武道とヒナちゃんの結婚式にマイキーくんも出席してくれてる」というのがゴールとしてかなり近いのかな、という気がしたり。。。

 

 ヒットの要因は、ストーリーが抜群に面白く、続きが超気になるのは言うまでもなく、萌えヤンキーキャラたちの推しキャラ人気というのもあるのかな、なんて思うものの……他に、それが悪いのではなく逆に「良い」と個人的に思ったのが、十代の少年たちが割と漫画の物語的にいえば「そのくらいのこと」ですぐ傷ついてたり、「そのくらいのことで、そこまでするかな」といった印象のエピソードがあったりすることでしょうか。そのあたりの描かれ方が、あくまでいい意味で「浅い」というか、おそらく意図して浅く描かれてるのかな……と思ったりするのですが、<今>という時代性を感じさせてむしろいいような気がしたんですよね。

 

 特に、自分的に惹かれたのが、羽宮一虎のエピソードと、マイキーくんの闇墜ちエピソードかなって思います。あ、『東リベ』のキャラはみんなそれぞれ平等に好きな感じで、特に一虎推しだとか、そういうことではないんですけど……窃盗も殺しも、もちろん悪いこととはいえ、親友のマイキーを喜ばせようと思ってしたことが、最悪の結果に終わり、その重圧に耐えられず、責任転嫁してたりとか……人間心理としてすごく理解できるし、最初にここ読んだ時、キャラ的にもう一虎の復活はないかなとか思ってましたでも、「闇墜ちした人間の気持ちは闇墜ちした人間にしかわからない」という意味で、今度は一虎がマイキーくんを助けようとするとか、自分的にはすごくいいエピソードだなあ……とか思っていて。

 

 で、次がマイキーくんの闇墜ち。キサキや他の人間がそう仕向けていたかと思いきや、マイキーくん自身に、そもそもそうした黒い衝動があって、それは自分でもどうにも出来ないくらい大きなものに成長しつつあるということ。これがファンタジーならまあ、闇の王の依代にでもされているところですが、それはさておき。。。

 

 わたし、現在の最新刊である29巻を読んだあと、本誌のほうではどのくらい話進んでるんだろうと思って、結局マガポケの有料版で最新話まで読みました(笑)。それによるとどうも今、マイキーくんの過去編をやってるらしい。もちろん、まだ途中なのでその着地点がどういうことになるのかまではわからないものの――その<黒い衝動>がいつ頃から生まれ、育まれていったのかの、ある意味説明ということなんじゃないかなと思うんですよね。そして、その中でキサキに対して、そうした自分の、他の人間に話せない闇の部分でオマエとは話したい……みたいなことが語られていて、キサキがなんであんなにマイキーくんに拘っていたかの理由が回収されてます。簡単にいえばまあ、「マイキーくんみたいな人が、自分にそこまで心を開いてくれた」ことに対する感動とか、そうしたことですよね、たぶん。。。

 

 あと、あんなに強いマイキーくんに、たけみっちはどうやって勝てるのか……と思っていたら、きちんとそのために布石があった!ということも、結構驚きでしたこの部分はあくまで今の段階ではわたしの予測にすぎない(でもきっと、同じこと考えてる方はいすぎるくらいたくさんいると思う・笑)ことだし、書きはじめると長くなりそうなので、とりあえずこのへんで。。。

 

 そのですね、自分的に「闇墜ち」ということについて思いますのに、「あいつがああでこうだったからそうなった」とか、誰かのせいに出来るストーリーであれば、これまでにも物語としてたくさんあったと思っていて。でも、そうなったのは弁解しようもなく自分が悪かったとか、自分で闇墜ちしたくてダークサイドに墜ちていこうとする人間のことを、どうすれば救えるのか……とか、テーマとしてより深いような気がするんですよね。

 

 もちろん、マイキーくんは割と幼い頃にお母さんを、他に近親者や親友を亡くしたりと、それ以上あれこれ考えたり感じたりするのがつらすぎて……思考停止状態となり、黒い衝動に身を任せたくなったりとか、あえて名前書きませんが、お兄さんの死に関してはAが悪く、△□の死に関してはBが悪いなど、人のせいに出来る部分もあるとは思う。自分的に、あの黒い衝動っていうのは自己破壊の衝動ということでもあるんだろうなあと思ったりするのですが、このあたりの決着がどう着くのかが、自分的にすごく気になるので、これから『東リベ』の最新話が配信になるごとに、必ず読みたいと思っています♪

 

 で、ここからは『東リベ』から話それますが、自分的に今年に入ってから見た海ドラの中に、「その結果を招いたのはある意味自業自得」、「自分が悪いやつだったからだ」というものがあったんですよね。こちらはこれから見る方がいる場合のため、あえてドラマ名伏せますが、普通、主人公が一部記憶ソーシツになってて、自分が死んだ謎を探る……といった設定の場合、「彼を死に追いやった悪いやつがいる」と想定するのが普通ですよね。でも、記憶が甦ってわかったのは、そもそも「自分がやなやつ」、「悪いやつだったから」、そうした部分が死を招いたとわかる……って、自分的に結構新しいなと思ったんですよ(^^;)

 

 もうひとつ目は、親友が自殺とも事故ともつかないような死に方をしたことで、とても心が傷ついている女性が主人公。彼女は次から次へと男を変えといったように、恋愛もダメなら仕事もうまくいってない。しかも、家族との関係まで悪い。でも唯一、その親友との楽しく美しいような回想シーンによって、「彼女は本当はそういういい人なんだ」と思いきや……そもそもその親友の恋人と寝てしまい、親友が死ぬ原因を作った元凶の本人だったことが最後のほうでわかるという(だからずっと情緒が不安定だった)。=すべて、弁解しようもなく自分が悪いというところでシーズン1は終わる、という。。。

 

 この、「誰が悪いというのでもなく、自分が悪い」って、自分的に表現として相当キツいと思っていて。そして、そうした袋小路からなんとかギリギリのところで逃れられるパターンの物語もあれば、かなり後味悪く、その後味の悪さがさらに尾を引く感じで物語が終わる場合もあると思うわけです(^^;)

 

 あ、『東リベ』はわたし、最終的にハッピーエンドなんじゃないかなとは思ってますし、そう信じてます黒川イザナのエピソードももちろん好きでしたが、最終的にみんな、必ずひとりくらい「そんな彼のことをわかってくれてる」人や親友がいるという結論なので……バッドエンドということだけはありえないと思ってるというか。

 

 わたし、リゼロとか、アニメ途中から見て、さらにその後の途中までしか見てないんですけど……リゼロの主人公のスバルくんも、あっちの子の命を救えば、こっちの子が死んでしまい――という、何度繰り返しても「あっちをこうしても行き止まり」、「こっちをああしても行き止まり」という気も狂いそうになるほどの袋小路の地獄を経験している。武道くんの場合は、スバルくんと違って「己の死」がタイムリープ発動のスイッチというのでないとはいえ……ヤンキーどもにボッコボコ☆にぶん殴られに殴られつつも――遅効性トムとジェリー効果により、何度となく顔も体も元に戻るという、このあたりがなんともツライところで。。。

 

 なんにしても、『東リベ』については、また気になることがあったら何か感想とか記事にするやもしれませぬ

 

 それではまた~!!

 

 

 言わずと知れたフラカンの名曲ですが、マイキーくんの闇墜ちのことを思うと……ついこの曲のことが思い浮かんでしまったというか

 

 

 

       惑星パルミラ。-【31】-

 

 ――それから、二年の時が過ぎた。そしてこの二年の間に、ゼンディラが知っていた本星諜報庁ESP機関にいた子供たちのうち、七名が死期が近くなり列石された。

 

 その七名とは、ナーサ=コリエル、コレット・コニー・コルベット、ジャクリーン=ティティ、テリオス=ライゼン、ロック・ケネディ、パオロ・リオス、ロニー=ブラッドリー……といった少年・少女たちである。彼らは今、パルミラの魂であるあの緑の石のそば近くで眠っており、誰もがそのことを少しも悲しんでなどいなかった。「だって、そうじゃない。あの石の言うことはほんとよ。何より、わたしは自分の出身惑星の土着の神のことなんて全然信じてない。そんな神々の約束する死後の天の国なんかより、石のくれる精神世界のほうへ移行できることのほうが、どれほど幸せかしれやしないわ」――というのはコレットの弁であるが、他の子供たちも大体みな似たようなことを口にしていたものである。「何より、みんなにもあとでまた会えるのだから……」と。

 

 果たして、そちらのほうでも生きていた頃と同じく喧嘩したりするものなのか、気の合わない人々とは、何か精神的な隔壁でも置き、離れて暮らすものなのかどうか――石の精神世界において、そのあたりのことは今もよく知られていないという。

 

「やれやれ。長生きするってのも厄介なもんだね。何分、僕らの場合、一度仲間になった子たちのことを次々おまえみたいな石の奴のところへ送りださなきゃならないんだものな。こんなんなら、長生きなんてするもんじゃないなって、たまに思うことがあるくらいだよ」

 

 超能力爆殺魔ロニー=ブラッドリーを緑の石の中へ送りだすと、ラティエルは溜息を着いてそう言った。もちろん彼はロニーのことなど少しも好きでなかったし、何より彼の中でラティエルが何にも増して我慢できなかったのは、ロニーの強すぎる偽善的な正義感、それに加えて鼻につくところのあるヒロイズム的精神構造、自分こそがリーダーなのだというボス風を吹かせてくることなどが挙げられただろうか(その事実はみなが裏で「まあ、そういうことにしておこう」と、呆れ顔で一致していたことだったと言っていい)。

 

 だが、こうしてロニー=ブラッドリーが超能力の使いすぎによってすっかり衰え果て、惑星パルミラまでやって来ると――流石のラティエルですらも彼が気の毒になり、ロニーが実際に列石されるというまでの間、実に親切に優しく接してやったものである。だがラティエルは、ロニーが列石される前日「ぼくたち、友達だよね?」と聞いてきたので、仕方なく「うん、友達だよ」と嘘までつき、ハグまでしてやったことを……今は少しだけ後悔していなくもない。

 

「だからさ、僕は前からずっと石野郎のおまえに言ってるだろ?たとえば、ロニーは最後の最後まで、自分は正しいことのために戦ったと信じてたけど、あいつに殺された連中にしてみりゃ、そんなのまったくたまったもんじゃないぜって話。そんで、なんか特殊な理由によってだよ、ロニーとあいつが内部から臓腑を爆発させて殺した連中ってのが、おまえの石の精神世界とやらで一緒になったとする。そしたら、一体どうなるんだ?当然両者とも、その時のことは覚えてるわけだろ?ロニーに殺された連中ってのは、おまえんとこに訴え出てきて、『自分たちはあいつに殺されたんです。それも一等とっときのひどいやり方で……あんな奴のことは同じように八つ裂きにしてこの世界から追いだすべきです』なんて言ったとしたら、石の精神世界の神にも等しいおまえは、一体どうするつもりなんだ?」

 

『さて、どうだろうね。そこまで特殊な状況というのに、わたしは直面したことがないからわからないよ。それに、わたしの治める惑星では、殺人といったおぞましいこと自体、一度も起きたことがないわけだからねえ。あ、もっともわたしは自分の可愛い子供たちを連れていこうとした汚らわしい人間どものことは、なんの良心の呵責もなく全員ブチ殺してやったよ。そして、そんな醜い死体を他の我が惑星に住む可愛い生き物たちに見せるわけにはいかないもんで……地面の底に沈めてやった。だから、このわたしこそがこの惑星における唯一の殺人者――いや、殺人石といったところかな』

 

「おまえの石に関する親父ギャグは面白くもなんともないよ」

 

 ラティエルは軽蔑したように言って、顔をしかめている。

 

「兄さん、兄さんだってわかってるはずよ。彼にそんなもしも話なんかしたってしょうがないってことは……まあ、これも『もし仮に』ということになるけれど、本星あたりからものすごーく強い殺害の決意を秘めた暗殺者が、なんらかの事情によってここパルミラへやって来たとするわよね。理由は妹を殺された仇でもなんでもいいけれど、そんな人間が裁かれもせずパルミラなんていうパラダイスみたいな惑星で今はすっかり居心地よく暮らしていると聞いて――そんなの絶対許せないとかって思ったといった事情によってね。ところがどう?パルミラの大気の中に含まれる多幸成分をなんらかの方法によって出来得る限り除去し、燃える殺意にさらに薪がいくつもくべられたとしても……そのことがわかったパルミラが石を通して夢を見させるわ。そして、死んだ妹さんにこう言われるのよ。『兄さん、わたしのために人殺しなんてしないで』ってね。『わたしの魂は今天国にいて、なんの苦しみも悩みもなく暮らしてるわ。そして、いつかわたしたちそこで一緒になれるわ』なんていうふうにね。ここの石の見せる幻は夢じゃない。現実に今目の前にその妹さんがいるとしか思えないくらいに実体感があってとてもリアルなのよ。それでこの暗殺者は悟るのね。もう二度と会えないと思っていた妹にもう一度会えた、その妹が相手の男を許せと言っている……自分はそのことに従えないほど愚かな兄だろうかといったようにね」

 

「チェッ。なんともくだらないペテン話だが、とりあえず納得するしかないようだな」

 

 ――ラティエルとティファナのレーゼン兄妹は、すっかり背も伸び、その顔はどこからどう見ても二十歳くらいの若者のようにしか見えなかった。つまり、たったの二年で十一歳くらいにしか見えなかった体から、そこまで一気に成長したのである。理由は、ティファナのゼンディラに対する恋心であった。もっとも、彼はあのあとすぐ列石されてしまったのだから、今さら若い女性の姿になれたところで……すでに遅くはあったろう。けれど、彼女は花の蕾がすっかり花開く時を迎えるように、美しい娘に成長していた。

 

 また、ラティエルは妹のティファナが先に成長を遂げようとしているとわかっていても、最後までどうにか抵抗すべく頑張っていたわけだが――やはり双子の妹の成長の力に引きずられるようにして大人の男にならざるをえなかったのだ。

 

 いまや、すっかり涼しげな目許の凛々しい若者にラティエルは成長してしまい、新しくやってきた研究員に第一研究所所長として紹介された時、(こんな子供が!?)という驚きの顔が見れなくなってつまらない限りだった。だが、彼らふたりはいまだにお互いの間に死の徴候といったものを一切感じなかったし、容姿のほうは二十歳前後といったように見えたにせよ、年齢のほうはすでに四十歳であり――ラティエルなどは(まあもう、普通のESP能力者の二倍は生きたわけだし、そろそろ死ぬとかでもいいか)と思ったりもしている。

 

 そもそも、彼らレーゼン兄妹が超能力に目覚めたのは、中位惑星系のレティシア星にある、一般的な児童養護施設内においてであった。彼らふたりは自閉症の孤児として、両親亡きあと、親戚中をたらいまわしにされたのち……最終的にソーシャルワーカーの紹介により、そのような場所へ落ち着いたわけであるが、妹のティファナはその頃七歳であった。だが、すでに将来美少女になるであろうとの芽生えがその容姿には見え隠れしていたといってよい。結果、職員の何人かに性的な暴力を振るわれそうになり――外界の刺激にあまり反応を示さないことから、木偶の坊の馬鹿のように扱われ、いじめられてさえいたラティエルが能力に目覚める、これがそのきっかけとなる出来事であった。

 

 ラティエルが超能力に目覚めるのと同時、何故ティファナもそうなったのかの理由はわからない。だが、何故か超能力を持つ双子というのは全体に数として多く、他に双子のようにして育った兄弟や姉妹といった組み合わせも実に多かったといえる。ティファナは自分に乱暴しようとしたゲスな職員全員を惨殺してくれた兄をその後、熱烈に愛し崇拝するようになり……超能力に目覚めるのと同時、彼らはふたりともすっかり自閉症が治ってしまい、それどころかむしろ真綿のように知識を吸収して、その年の子供以上の高い知能指数を示すようにもなっていた。そしてこの頃、天才双生児として知られるようになっていたレーゼン兄妹の元に、本星諜報庁から例のスカウトがやって来たというわけなのである。

 

 それからふたりは十数年にも渡り、あちらの惑星、こちらの惑星と旅をし、数々の任務をこなしてのち、ここ惑星パルミラへと至っていたわけであるが――基本的に、ティファナは大人しい性格であって、兄の言うことに本当の意味で逆らったことはない。だから、ティファナが自分の支配下を脱し、愛する男のために早く成長したいと願った時、ラティエルはこの妹の初めての反抗について戸惑った部分がある。これでもし、相手がゼンディラのような男でなく、メルヴィル=メイウェザーのような男のために(女として見られたい)といったことであったなら……きっと彼も兄としてとっくり説教でもしてやったことだろう。

 

(まあ、でも相手があのゼンディラのおっさんじゃな。僕にしても他の男よりは遥かにいいだろうと考えて……兄として我慢するしかないといったところだ。それに、メイウェザーの奴は、本人は自分で気づいちゃいないが、ESPの素養があるからな。短期休暇なんてんじゃなく、もっと長期に渡ってここパルミラに滞在することさえ出来れば、あいつもなんらかの力に目覚めることが出来るんだろうに)

 

 おそらく、メルヴィル=メイウェザー自身、何故ESP機関の子供たちが自分を慕ってくれるのか、まったく知らなかったことだろう。そもそも彼には、超精神感応力が高いと言われるケラー二星のケラー二星人の血が八分の一ほど混ざっている。そして、オッド・ステラもこのケラー二星の出身であり、彼自身は知らなかったことであろうが、ケラー二星人のある太古の血筋を、彼らふたりは引いていたわけであった。

 

『長官もきっと、超能力に目覚めれば、結構いい能力者になりそうなのにな』

 

『しっ!余計なこと言うもんじゃないわ。そんなことでメイウェザー長官を今後、余計な悩みのタコつぼに沈めたんじゃ可哀想でしょ』

 

『そうだな。誰よりあんたが一番最初に超能力誘発剤を使ってみるべきだよ……なんて、そんな真実を話すのは酷だものな』

 

 ――というわけで、ESP能力者の子供たちはメイウェザー長官をある種の尊敬の念を持って慕っていたわけであった。そしてこれが、ティファナがゼンディラに見せた幻視の中に、彼が存在していた大きな理由であったに違いない。

 

「愛してるわ、ゼンディラ……!一日も早く、わたしもそっちへ行きたいけれど……でも、ここパルミラにおいては、なるべく長くラティエルが第一研究所の所長であることが大切だと思うの。だから、まだわたしも列石されることは出来ないけれど、でもあともう少しの間待っててね。その時にはわたし……今みたいな若い娘の姿で、きっとあなたに会いにいくわ……」

 

 その日もティファナは、声にはしない精神波によって、そう緑の石の中のゼンディラに語りかけた。パルミラの魂の中へ吸収された彼はその後――これはあくまで、この物質としては橄欖石である彼がレーゼン兄妹に語ったところによると、ということではあるのだが――彼はパルミラの惑星神である緑の石と、その精神世界に生きる人々の仲介役となり、これらの死後も目覚めたる人々は、今ではおのおのその領分をわきまえて暮らしているとのことであった。

 

『何よりわたしはね、ゼンディラが人々を諌めてくれたことによって……断固たる処置を取り、彼らのうちの幾人かでも自分の世界から追放することにならなくて良かったと思ってるんだ。だってそんなことになったら、わたしに言い逆らった者は同じようになるということで、なんだかわたし自身が恐怖政治の独裁者みたいな感じじゃないか。そんななんとも威張ったやなやつみたいな存在に成り下がるだなんて、これほど悲しいことはないからね』

 

「ふうん。でもやっぱり結局あんたは、この惑星パルミラにおける支配者であり、独裁者さ。そこにあるものを、いつでも自分の好きなように扱えるといった意味あいにおいてね。ただ、あんたは人間にたとえると確かに、優しい親切な、愛に溢れたいい奴ってことなんだとは思うよ。だから、超能力を持つ子供たちはみんな、<いつか来るべき日>に備えてあんたのことを守りたいと、そのために列石されてもいいと、そう思ったんだろう」

 

『さてね。わたしはただの石であって、未来のことまで予知は出来ない。ただ、ハリエットの他にも、これまで強い予知能力を持つ子たちが……大体似たような未来のヴィジョンをわたしに見せてくれた。あれは、今から約一万三千年後ものちのことになるのかね。下位惑星連合とやらが惑星同盟を破棄し、中位惑星系の星々の一部を味方につけ、今本星エフェメラと呼ばれている場所を攻め落とす――その後、彼らはずっと渡航禁止宙域に指定されていた我がパルミラをも手に入れるべく、警告してもそこを通行しようとする宇宙船は問答無用で撃沈される運命にあるというのに、そうしたパトロール艦のすべてを逆に問答無用で撃破し、わたしの惑星にまで押し入ろうとするらしいからね』

 

 その後起きることは、ティファナがゼンディラに幻視として見せた通りである。だが、そのように遠い未来を幻視として見せられても、この賢い緑の石でさえ『本当にそんなことが起きるのかね?』と呑気に構えているように――確かに、予言の成就といったものは、実際にそれが起きた瞬間にならなければ証明できないことであり、そうした意味で未来は不確定要素を今もいくつも抱えてはいるのだ。

 

 だが、ハリエット・ヴーレや彼女の他にもこれまでいた偉大な予知能力を持つ者たちが言いたかったことの骨子はこうである。多少未来のシナリオに変化があったにせよ、なんらかの大きな軍事力を持つ勢力がこの美しい処女惑星へ無礼にも攻め入ろうとする時……自分たち列石された超能力者たちの数も十分になり、それらの悪しき勢力に打ち勝つ力が、その頃には十分に蓄えられているだろう、という。

 

 そしてその後、超能力を持っていないよりも、持っているのが当然という時代がやって来るが、それはなんのESP能力を持たない者であっても差別など一切されない社会である。さらにその後、惑星パルミラを頂点とする長い平和の時代が既知宇宙では続くのだが――それもまた、人間の持つ時間感覚としては長くとも、この広大すぎる宇宙の歴史としては、ほんの束の間の、かつてあった地球に彗星がほんの一瞬横切った程度の時でしかないことは……すでに説明する必要すらないことであろう。

 

 

   終わり

 

 

 

 

 

 

 


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