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LEAP(リープ) ディスラプションを味方につける絶対王者の5原則

2020年02月19日 | 経営・組織・企業

LEAP(リープ) ディスラプションを味方につける絶対王者の5原則

ハワード・ユー 訳:東方雅美
プレジデント社


 先行優位のままでい続ける企業はいない、という話。必ずや大量生産やオートメーションを施した後続企業に抜かれる。

 先行企業が先行であり続けるためには、「リープ」すなわちヨソに飛ばなければならない。つまり先行しているうちにみずから土俵を他所に移すのである。P&G(もともとは石鹸メーカー)もリクルート(もともとは求人情報雑誌)もノバルティス(もともとは染料メーカー)そうやって先行でい続けた。AppleやAmazonでさえそうなのである。

 しかし、リープ先はどうやって見つけなければならないか。
 そこは「創発的戦略」というのが必要である。これの対義語は「意図的戦略」だ。
 「意図的戦略」というのはいわばある種の計画をもって行う戦略である。それは段取りみたいなものだ。
 ただこれは、言わばゴールが明確で、そこに至るまでのプロセスをどうすればいいかわかっている場合の戦略である。それにもとづいた人事であり、予算配分である。
 これに対し、「創発的戦略」というのはゴールが見えない、しかし何か生まれるはず、何かよさげな化学反応が起きるはずという目論みのもとの段取りや人事や予算配分をする。有名なのはGoogleの20%ルールである。

 また、現代において有力なリープ先は「デザイン思考」的なものだという。人の心理の奥とか行動経済学的な癖を利用応用したものに突破口が得られやすい。こういったデザイン思考なものは創発的戦略の末に生まれやすいのだろう。ゲーミフィケーションとかゼロフリクションとかサブスクリプションとかそういうことなのだろう。

 また、こういった創発的戦略によるデザイン思考でリープ先を探すときは、既存のビジネスとカニバることがよくある。ここで既存のビジネスがかわいいあまりに、投資や人事を渋ったりすると後で泣くことになる。地上波テレビ局が地上波を守るためにネット配信への投資や人事を小出しにしてしまうようなものである。

 いずれにせよリープ先が定着するまでは七転び八起きを覚悟しなければならない。当初の予定や思惑とは違うかたちで拡大発展していくことはかなりよくある。その意味では「意図的戦略」はほとんど意図通りにならないということでもある。

 とまあ、そんなことがいろいろな事例とともに書いてある本だ。ポイントはやはり「リープ」であろう。

 ぼくは経営者でも事業主でもないが、会社組織の中でのひとつの人材ということで考えるとぼちぼちリープしないとまずいなあとも思う。
 ここで僕が思い出すのは「風姿花伝」だ。「風姿花伝」の第1章、「年来稽古条々」だ。これは能役者というものの子ども時代から老いる時代までのことを文章だけれど、まんま人生のことというか、とにかく深い含蓄がある。それによれば、いかに全盛期に花形になろうとも、やはり中年域に入るともう後進に譲るのがよろしい、ということである。それは周囲の期待や時の勢い、肉体上の充実と衰えなども加味されての進言なのである。そうして後進にゆずり、自分は前座や引き立て役として退きながらもそれでも何かその人ならではのものが残り、それを人が尊重してくれれば、それこそがその人の「誠の花」なのである。
 このように、自分の「誠の花」を信じて歩むのが美しい人生だが、しかしやはり会社ではお給料はもらわなければならないし、なんだかんだで一日の多くの時間をそこで過ごすのだから少しでも心が穏やかなところにいたい。老害のように思われるのはたいへんよろしくないわけである。
 なので、今のポジションが「誠の花」なのではなくて、「誠の花」と信じているものにじつは自分のリープ先のヒントがあるのではないか、などとも思う。

 本書「LEAP」では、P&Gやリクルートやノバルティスの例で、リープ先というのは必ずしもこれまでのポジションと全く無関係ということなのではなく、やはりなんらかの因果がそこに見られる。それこそがその企業のDNAみたいなものだろう。P&Gの場合はもともと心理マーケティングとでもいいたくなるような「誠の花」があり、リクルートの場合は「人の欲望(勝ちたい・儲けたい・もてたい・気持ちよくなりたいなど)のマッチング」みたいなものがある。ノバルティスの場合は見えにくいがどうも「ケミカルとバイオの力で打ち勝ってみせるスピリッツ」みたいなものを感じる。企業憲章とか見ていないけれど、たぶんそんなところなのではないか。

 というわけで、僕の中では「LEAP」と「風姿花伝」がくっついた。これはもちろん半分以上でまかせである。ゆめゆめ本気にされぬよう。 


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