天才(承前の承前)
わたしが8月19日に書いた,『天才(承前)』を読んだ友人の一人が,「直観は論理である」という,ルカーチの言葉を教えてくれた。目から鱗が落ちるような気がした。
昨夜の深夜にEテレで放送された,ヒューマニエンス『天才 ひらめきのミステリー』(2021年6月放映の再放送)は,脳科学の立場から直観・ひらめきの問題を取り上げていたので,ビデオで見た。
将棋の羽生善治永世名人は「直観の7割は正しい」と言っているそうだ。番組では,2組の数列のどちらの合計が大きいかを,計算する時間のない14秒間で答えさせる実験を行ったところ,90%が正解だった。ちなみに,カミさんは正解だったが,わたしは間違えた。
理化学研究所の田中啓治さんは,詰将棋の問題を1秒間で解かせる実験を,プロ棋士とアマチュアに行ったところ,プロは70~80%が正解だったのに対し,アマチュアは40~50%であった。
両者の脳の働きを調べたところ,予想していた大脳皮質ではなく,大脳基底核がプロでは活動していることが分かった。
ゲストとして同席していたプロ棋士九段の田中寅彦さんは,自分でもどうしてそうなるのか分からないが,アマチュアの人は算数の問題を解くように考えるが,自分たちは絵画や音楽を鑑賞するような感じで詰将棋を見ていて,不正解な解答を見ると気持ちが悪くなるという。小さい時から,短時間で詰め将棋を解くように訓練されているので,そうなるのではという。
田中啓治さんは,大脳基底部の活動が訓練によって強化されることを実験で確かめ,大脳基底部に蓄えられた経験が,無意識の内に大脳皮質に伝えられるひらめきを生んでいると考えている。
番組では,そのほかに,アインシュタインの脳のグリア細胞は一般人の1.7倍であり,グリア細胞が脳の神経細胞の情報伝達を強化している役割があること,IQは天才的なひらめきとは関係ないことなど,興味深い話題が紹介されていた。
もう大昔の話だが,グルタミン酸が脳神経の情報伝達に関係しているから,子供の頭を良くしようと,食べ物にたっぷり味の素をかけて食べさせることが流行した。効果は表れずすぐ下火になったが,脳の機能の一部を変えて何とかしようというのは無駄である。それぞれの機能の調和で人格が形成されるのであって,一部だけ変えることは障害をもたらすことになり兼ねない。
ひらめきは誰にでもある。しかし,例えば将棋におけるひらめきが訓練によって向上するかどうかは,その人の資質によるだろう。天才は天才,凡人は凡人である。凡人であることは,別に悪いことではない。
認知症保険
今日の朝日歌壇から:
不安さえ商品にして売り出せり「認知症保険」「孤独死保険」観音寺市 篠原俊則様
保険は押しなべて不安を商品にしているが,認知症保険と孤独死保険というのがあるのは知らなかった。しかしネットで調べたられっきとした保険として存在していた。
孤独死保険は,大家さんがかける保険で,借り受け人が孤独死した場合の後始末の費用を保険から出そうというものである。
認知症保険は,月々500円から1000円程度の保険金を払って,認知症を発症した時に一時金あるいは年金として受け取り,介護にかかる費用を保障しようというものである。わたしの場合の見積もりを見ようと思ったが,この年齢では受け付けてもらえなかった。
認知症保険にせよ生命保険にせよ,この歳では「不安」の対象ではなくなったということか。
幾何模様
秋ソバの芽生えが描く幾何模様(阿見町にて8月27日撮影)
STOP WAR!