ブタの臓器
昨日の毎日新聞デジタル版,および今日の朝日新聞に,人間に移植できるよう遺伝的に改変されたブタが,日本ではじめて誕生したというニュースが載っていた。
明治大発のベンチャー企業「ポル・メド・テック」が,アメリカのバイオ企業「イージェネシス」から輸入したブタの細胞を用いて,クローンの子ブタを誕生させたということである。
ブタの臓器は人間のものと機能的,形態的に類似しているので,以前から人間への臓器移植が検討されていた。しかし,異なる種の臓器に対しては,免疫的に激しい拒絶反応があり,困難であった。
この臓器提供ブタは,拒絶反応に関係する10個の遺伝子を改変し,さらにブタの器官を導入して生じるリスクを回避するために,50個の遺伝子が働かないように操作されている。
このブタから提供された臓器を用いた「異種移植」はすでににアメリカでは実践され,腎臓移植を受けたカニクイザルは,特に障害を示さず2年以上生存したという実験結果が報告されている。
また,2022年,同じくアメリカで,末期的な心臓病の人に,ブタから提供された心臓が移植され,一時的に症状が改善されたが,2か月後に亡くなったという。免疫機能を極度に抑えたために,しばしば感染症を起こし,死後検査した血液からはブタに感染するウイルスが検出された。
輸入元のポル社のCEO長嶋比呂志明治大学教授は,自身も臓器提供用ブタの開発を目指してきたが,異種移植について日本が立ち遅れないようひとまず輸入の形を取り,サルなどを用いた実験を進めていきたいと述べている。そして,来年には人間に移植する臨床研究を始めたいとしている。
世界的に,臓器提供数は圧倒的に不足していて,ブタの臓器などによる異種移植が期待されている一方,慎重に対処すべきだという声も上がっている。
アメリカの移植例に示されたように,ブタの臓器が存在することによって,本来人間には感染しないウイルスに冒される危険がある。また,人体にあるブタの臓器から出た細胞が,宿主の組織に入り込んで増殖し,ブタとヒトの細胞が混在するキメラが生じる可能性を指摘する人もいる。(キメラとは,一つの個体に遺伝的に異なった細胞や組織が混在する状態をいう。キメラという言葉は怪物を意味するギリシャ語に由来する。)
こうした問題は技術的なことで,いずれにせよ慎重の上に慎重を重ねる必要がある。しかし,それとは別に,わたしには,言葉でうまく説明できないが,何かひっかかることがある。それは,ヒトとブタとの関係,ひいてはヒトと他の生物との関係についてである。
人間にとってのブタは,家畜として食材を提供してくれる存在である。一生を全うさせず,人間の都合によって屠殺する。また,人間はモルモットやマウスなどの実験動物に,様々な改変を加え,利用している。
そうした例を考えると,臓器提供用のブタはことさら問題にする必要が無いようにも思える。しかしこの場合,人間に移植されたブタの臓器は生き続けるわけであり,二つの生命が共存している。この存在形態は,人間の体内にいる微生物の存在形態とは質を異にするように感じる。
家畜としての豚と人間との関係と,臓器提供者としてのブタとヒトとの関係は,何か異なるところがあるような気がする。
臓器移植を待ち望んでいる患者のことを考えると,異種移植を頭から否定することはできないだろう。しかし,そこに生起する,あえて言えば生命倫理的な問題を,検討する必要があるのではないだろうか。
バレンタインデー
今日は,コカリナグループ「ひびき」の例会があり,メンバー「黒一点」のわたしは,女性陣のみなさんからチョコレートを頂戴した。ホワイトデーを忘れないようにしなければ。
STOP WAR!
神戸のモロゾフのチョコレートは懐かしいです。
遺伝子に関しての研究の凄さに驚きました。具現化する時代には期待したいですね・バレンタイデイの「モロゾフのチョコレート」美味しかった事でしょう。
私は家内よりの「チョコレート」ただ一つ・