【改題】ひとり公論(IT公論)

アラフィフとなりIT土方卒業したのでタイトル変更しました
こちらはどちらかといえば再録中心

谷村新司インタビュー

2020-06-01 20:23:15 | ひとり公論
再録

谷村新司インタビュー

谷村:大学にさえ入ってしまえば、学校に行かなくてもいいと思っていましたから。これで好きなことが思う存分やれるとひたすら音楽に打ち込みました。でも、それで生活していくなんて発想もなく、ただ何かに憑かれたように音楽をやってました。
--後先何も考えずに。
谷村:ええ。だから今の子たちは先を考え過ぎているというか、先を考え過ぎて先を心配し過ぎて、だからやめようとなってしまっているように感じます。僕らは後先考えずにひたすら音楽に打ち込んでいました。大人の人からは「そんなことやってて将来得するの?」とかよく言われましたが、そういったことを一切考えなかった奴が今残っている奴</strong>ですよ。
--後先考えなかった奴が今残っている・・・これは強烈な言葉ですね。
谷村:そのうちにそれによって少しずつ生活ができ始めていることに気づくみたいな感じですよね。そもそも、こういう風な生き方をした人がこうなっているという前例がなかったですからね。遥か遠くに加山雄三さんがいたぐらいで。
--何も不安を感じなかったわけですよね。
谷村:はい。きっと何かを信じていたんですよね。
--今から考えるとそれは何だと?
谷村:こんなに打ち込んで心を込めてやっているんだから、良くないわけがないといいますかね。僕らの代には「残ろう」と思ってやっている奴ってあまりいないと思います。「残ろう」というネガティブな発想ではなく、みんな「この次はどうしようかな?」とポジティブに考えていたと思います。

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--アリスはものすごいライブ数をこなしてたというお話がありますよね。
谷村:年間250~300ステージくらいやっていました。
--ほとんど毎日に近いようなライブ数ですよね。
谷村:そうです。というか、一日5本とか。文化祭の頃は一個終わったら、また次に飛び出してという感じでした。でも、もうやりたかったからやっていただけなので、物事をネガティブに考えていなかったですね。
--ただでは済まない量ですよね。週5日会社に行ったとしてもせいぜい年間220日ぐらいですからね。
谷村:でも、会社に行く人は行かなくちゃいけないから行っているでしょう?
--谷村さんたちは好きでやっている。
谷村:はい。だからさっきお話した趣味と仕事の違いですね。趣味で楽しんでやっている人は「行かなくちゃいけない」なんて発想を持っていないから根本的に違ってくる。「聴いてくれる人が待っている」と考えますから、ストレスになるわけがないです。やらされていると思うような仕事だったら、聴かされているお客さんのほうが迷惑だと思います。だから、やりたくないのにライブをやらなくちゃとか言ってる人は、とてもストレスがたまっているんだろうな・・・って思いました。
--では、ほとんどストレスのない音楽活動をなさってきたと。
谷村:そうですね。ただ、音楽業界のシステム化がどんどん進み、初めに歌があってビジネスがあったのに、ある時期からだんだん逆転して、歌が全部ビジネス・ミュージックになってきた。だから、その時点で音楽業界に興味がなくなりましたし、別にそこに所属する必要もないので、自分たちでレーベルを作ってやり始めました。
--好きなことをやるために元々やっていたのに、それがビジネス優先になってしまうのはおかしいと。
谷村:会社を大きくしてしまって、「その200人の社員を食わすにはランニングコストが・・・」という考え方は流れが逆です。いい歌があってそれを伝えたいから自然にスタッフが増えてきているチームと、大きな図体があって社員を食わすために音楽やっているチームとは、向かっている方向が真逆です。
--ベクトルが全然違いますよね。
谷村:はい。15年ぐらい前に僕は「そういうやり方はいずれ潰れるよ」とたくさんの人に言いましたが、みなさんあんまり実感がなかったみたいです。僕らは'84年からアジアに向かったんですが、周りはみんな「儲からないのにバカじゃないの?」と言っていました。そのときに僕は「儲かるために音楽をやっているの? 音楽をお金だけで計算しているの?」と思いましたね。それは音楽を侮辱しているし、音楽がなめられていると僕は感じました。みんなのスピリットはどこへいってしまったのって。
--それが84年頃ですか。
谷村:そう、僕らがアジアに向かい始めた頃です。