学生時代、数学を専攻していた。
理学部数学科の人間はそもそも変人が多く
基礎数学を純粋に研究しようとする者は
世間とは全く異なる価値観で
何かに取り憑かれたような好奇心で
突き進む輩ばかりだった。
高校まで得意だった数学は否定されて
厳密な味気ない定義からスタートして
一般的に成り立つ法則を構築しその
正しさを証明していく。
その繰り返しを飽きることなく
喜々として繰り返し続ける能力と
継続性が求められた。
世の中に応用される数学分野を応用数学と
言って昭和の時代はマイナーな数学分野だった。
学部2年時、情報系の授業で必修単位だった
ベーシックを受講した。
そこで初めてデジタル世界に触れた。
いわゆる二進法の世界で成り立つ世界である。
YesかNoか、1か0かの選択をひたすら
続けてプログラム(世界)を構築していく。
このデジタルの世界がいったい何を意味するのか
世の中に応用されるのかなんてその当時
まったく予見できなかった。
それどころかデジタルの世界に何ができるのか
否定的な見方する数学関係者が多かった。
故スティーブ・ジョブズ氏はいち早く
このデジタル世界に興味を持ち
自然科学と人文科学が交差する領域を
築いてアップル社を設立した。
彼はもともと文系の人で
純粋な理系人間を上手く仲間に取り入れて
デジタル技術を編み出していった。
コンピュータの基礎が作り上げられた。
このデジタルの世界がIT革命を巻き起こし
今や人工知能にまで進化していった。
ある分野で人間の知能をはるかに超える
能力を発揮して、人間の労働力をいくつも
奪うところまで来た。
人間の知能(アナログ思考)とデジタル知能が
発達すればするほど人間が本来もつ感性や知性が
削ぎ落とされていくような気がする。
人間らしい活動はアナログ世界である。
たとえば、芸術の創造世界はデジタルの
二進法では表現できない。
どうなっていくのかな。
人間らしさとデジタル世界の共存を
はっきりと意識して併用していかないと
大変なことになっていくように感じる。
少なくとも自分が生きている間は
まだまだ心配はない。
もうこれ以上、デジタルの便利さを追求しない方が
いいのかもと頭では考えても
人間のサガはもう誰にも止められない。
人間の欲望が人類の最大の敵にならない
ことを祈る。