拈華微笑 ネンゲ・ミショウ

我が琴線に触れる 森羅万象を
写・文で日記す。

『遙かなるケンブリッジ』藤原正彦著を読んで

2014年08月21日 | オレ的アングル
  我が『引っ越し文庫』も最近 引っ越して行ったお客様のおかげで 良書で充実した感あり。

  まず、読んだのが かの山岳小説の大家として知られ、ボクもアルプスをガイドするに当たり 何冊か読んだ新田次郎さんの息子さん
  藤原正彦氏(数学者)の1987年に一年間ケンブリッジ大学で過ごした時の体験を綴ったエッセー『遙かなるケンブリッジ』。

  期待もせずに読み始めたが、藤原正彦氏の率直な人柄にだんだん魅せられ一気に読んでしまった。
  特に 彼の地で様々な苦労を分かつ奥様のリアクションなどが ユーモアを交えながらも結構辛辣であったり 藤原氏の観察眼も率直だ。

  5歳になる次男が 学校でいじめに遭う出来事など 読み応えがあった。

  書き出しの当たりに『私は外国に出ると、途端に熱烈な愛国者になる。』・・・・というところに ボクが最初にヨーロッパに来た時の事を髣髴とさせてくれた。

  一年間ケンブリッジ大学での研究を通して体験した様々な出来ごと、感想などが 楽しく綴られている。

  しかし、最後のページの方に まとめとして 日本の役割りとして・・・という内容の提案が記されていて 現日本を思う時、一層感慨深いものとして読めた。

  転載 P258より 『古くからの誇るべき文化や美しく繊細な情緒を有し、伝統と現代を巧く調和させ、豊かで犯罪の少ない社会を作った日本は、混迷の世界を救う  
  いくつかの鍵を持っている。そのうえ、平和や軍縮を語る時には平和憲法が強みになろうし、人権を語る時には白人でないことが有利ともなろう。
  地球環境保護については、得意技の高度技術が役に立つだろう。軍事力なきリーダーとなる資格を充分具えている。
  そろそろ経済至上主義から脱出し、世界のリーダーを目指すべきと思う。日本のような国が、いつまでも田舎成金紳士としての幸せに甘んじているのは、
  許されないと思う。自己犠牲を伴うであろうリーダーシップを取ろうとせず、分相応の貢献でお茶を濁す、という処世術で世を渡り続けようとするのは
  悲惨と混迷に満ちた人類の現状を考える時、余りにも無責任で利己的と思われる。特にアジア諸国に対する罪の償いは、カネやモノをばらまき続けることでも
  謝罪を繰り返し表明することでもない。アジアとの一体感を根底に置いた、無私で積極果敢な人類への貢献を計ることで世界のリーダーとして尊敬されるように
  なることが、結局は最終的贖罪となるのではないだろうか。』

  ここを読んだ時、ボクは藤原氏をはじめ大方の大人達がこういうふうに 自国である『日本』を捉えていた事をあらためて確認できたことと、それが、
  わずかな内に、退廃的方向に大きく変化してきていることを強く感じるのだ。

              

  


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