COVID-19が機内で感染するか。HEPAフィルターがしっかり守ってくれるから大丈夫!というのが通説でしたが長距離フライトではそうもゆかなさそうな、ベトナムからの報告。
- 2020年3月1日 ロンドン発ハノイ行き ベトナム航空VN31便。飛行時間は約10時間。274席(ビジネス28、プレミアムエコノミー35、エコノミー211席。搭乗率はビジネス75%、プレエコ100%、エコノミー67%。
- 乗客乗員をトレース。
- 感染確認が16例。うち12例はビジネスクラス。唯一症状を呈していた乗客の付近に搭乗。
- インデックスケースはロンドンベースのベトナム人ビジネスウーマン27歳。2月18日で姉妹でイタリア旅行、25日にロンドンに戻る。その姉は感染確認。29日に咽頭通出現。3月1日に当該便搭乗。
- 帰国後に症状増強(軽症範囲内)自宅内自主隔離。3月5日受診、PCR陽性
- 乗員全員とベトナムに残っていた乗客168人(84%)をトレース。この接触者調査により、さらに15例の陽性をキャッチ。
- 陽性例の分布・ビジネスクラス、インデックスケースの周囲に集中。
- 乗客すべての能国接触者1300人中、陽性は5例でうち3例はインデックスケースの同居人
- このフライト時点でUKの感染者は23例しかなく、乗客の多くが潜伏期間中だったとは考えにくい。到着時典でのベトナム国内での感染者数も16例しかなく最後のケースから潜伏期間中をしぎているので、ベトナム国内での感染も考えにくい。(したがって、機内での感染であることは間違いなかろう)。
- もっとも可能性が高い感染は、(特にビジネスクラスの乗客では)インデックスケースからの飛沫感染やエアロゾル。
- 今後、航空旅行を解禁する国々があるなかで教訓は、①検温パネルや申告制度では限界があること ②長距離フライトは、単に輸入例をもたらすのみならず、機内でスーパースプレッディングイベントを起こす可能性。今回はマスクも装着していなかった。飛沫やエアロゾルの機内における動きはまだ未解明だが ③機内感染の例は中国で報告があるが、まだ査読前。1月にはカナダの15時間のフライトで、感染者がいたが二次感染はなかったという報告も。その他フランスやタイに到着フライトの報告はあるも、接触者調査に限界、前後2列にとどまっている
- これまで、航空産業から出たガイダンスでは、機内感染リスクは少なくマスク着用・真ん中の列を売らないといった対策しか示されていないが、今回我々の報告はこれに反論するものである。今回のケースでは、よりソーシャルディスタンスのとられるビジネスクラスでクラスタが発生しており、この席間は2例あけや2メートルルールを満たしている。
これまで、(PEACH機内でマスク拒否にCAさんへの暴言をともない緊急着陸でたたき出された男性例の報道はあるものの)日本でも機内での環境は安全という前提でおおむね動いてきました。しかし10時間の長距離フライトではスーパースプレッディングイベントが、広い広いビジネスクラスでさえ起こるということが、ベトナム当局の徹底した接触者調査で明らかになったものです。
これから我が国でも「開国」ともいうべき方針が表明されている折、今後は海外からの持ち込み例が増えることを前提としてものを考えてゆかねばならないことになります。スペイン風邪のとき見られたような「本当の第二波」はリアルに見えてくるのでしょう。
https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/26/11/20-3299_article
https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/26/11/20-3299_article