アジアで感染症の大規模流行が起こったら、米国に波及しなくても、その経済的打撃だけで100万人の職がなくなると、米CDCの試算が波紋を投げかけています。
- 米CDCの試算。Global Health Security Agenda (GHSA)に590憶$予算に対応したもの。
- CDCの指定する優先国49カ国(CDC’s 49 global health security priority countries.)に架空の感染症アウトブレイクが起こったと仮定。2015年の貿易統計を用いて、この49カ国に対する輸出額と、それによって維持される米国内の雇用を計算。
- この49カ国へのモノとサービスの輸出額は3000憶ドル。これで米国内の農業・製造業・鉱業の160万人分の雇用が維持されている。
- このうち、アジア9カ国でアウトブレイク発生した場合、300憶ドルの輸出が吹っ飛び、100万人以上の雇用が危機にさらされる。南西アジアは、人畜共通感染・薬剤耐性・蚊媒介などリスクの多いところで、米国経済への影響も大きい。
- 分析は、ある1か国だけでアウトブレイクが発生した場合から、その周辺諸国~地域全般に拡大した仮定まで、貿易量や経済関係のさまざまな変数でおこなわれた。結果、公衆衛生上の脅威が早期に把握され封じ込められるほど経済的被害も小さくなることが分かった。
米国に限った試算ではありますが、パンデミック発生で、自分の領土自体になんの被害がなくても、経済的打撃だけで100万人の失業者というリアルです。
アジアとの関係でいえば、日本はそれ以上のものがあるわけで、「海の向こうのパンデミック」の影響はもっと大きいと直感的に感じられるところです。実際、日本国の領土では結局感染者がかくにんされなかった2003年のSARS,2015年の韓国MERSでは、運輸業か観光業を中心に甚大な被害があったわけで、今後のパンデミックにあたっては、単に「水際対策云々」に目をとらわれずに早期から経済的影響に視点を、そのためにもリスクコミュニケーションをしっかりパニック軽減が重要になってきます。
いろいろ教訓や考察が派生する記事です。
https://www.cdc.gov/media/releases/2018/p0213-export-infection-risk.html
Is the U.S. Export Economy at Risk from Global Infectious Outbreaks?
New CDC analysis examines potential threat to markets and jobs