「BOX 袴田事件 命とは」
銀座シネパトスにて。
監督・高橋伴明 公式サイト
この映画の公開を知ってから、必ず観ようと思っていた作品である。
本作は、昭和41年6月30日に静岡県清水市で起きた強盗放火殺人事件で、犯人とされ逮捕され、そして裁判にかけられた袴田巌さんと、その裁判の主任裁判官であった熊本典道さんの判決後の苦悩と闘いを描いた作品です。
ネタバレしていますのでご注意下さい。
通称「袴田事件」の概要・・。
昭和41年6月30日未明。静岡県清水市の味噌工場が放火され、焼け跡から一家四人が焼死体で発見された。四人ともに、刃物で何箇所も刺された跡があり、警察は殺人事件と見て捜索を開始。柔道2段の被害者(専務)をもやり込めただろう犯人ということで、捜査を進めると、味噌工場で働いている男の中に1人「ボクサーくずれ」がいることが・・。味噌工場の工員で橋口社長と縁故がないのはそいつだけ・・そしてそいつは土地の人間ではない・・。立松警部(石橋凌)は、味噌工場で働いている元プロボクサー袴田巌(新井浩文)を逮捕。しかし袴田さんは容疑を否認。一旦は釈放したものの、すぐにまた逮捕。そこから拘留期限の3日前(袴田さんが耐え切れずに「やりました」と言わざるを得なかった日)まで、後に熊本さんが調べてわかったのだが、1日12時間や17時間という常識では考えられない長時間の尋問が(内容は推して知るべし)続けられていたのだ。
この後、第一審が始まるのですが、この裁判の裁判官は3名おりまして、その一人がこの裁判の主任判事である熊本典道(萩原聖人)なのですな。
こういう映画で演技論もどうかとは思いますが、萩原聖人がいいんですよ。こんなにイイ役者さんだとはついぞ知らなくてすみません。
この映画は、その熊本典道さんが2007年に話した真実、「袴田事件は無罪だという確証があったが、多数決で2対1で有罪になってしまった。判決文は主任判事が書くのが慣例なので、裁判長に言われて書いた。本当に申し訳ない」
の内容を骨子として作られています。
映画は、裁判官同士の学閥や、「出世するには」といったような、今まで見たこともないような側面を描いてみせます・・!
そして犯行から1年以上も経った頃に、警察から法廷へ“新証拠”なるものが提出されます。「血染めの犯行着衣」が、事件当時一度捜査した味噌樽の中から新たに発見されたというのです。
前述の警察による袴田さんへの取り調べの時間の余りの長さ、そしてそれが自白を得るまで何日も続けられたこと、などを調べて、自白の信憑性を疑っていた熊本裁判官は、新しい証拠が突然出てきたことにも、何か“意図的”な臭いを感じ取ります・・。
しかし、「疑わしきは、罰せず」という刑事裁判で最も尊重されるべき熊本さんの考えは、「多数決」という歪んだ民主主義に押し潰されてしまうのでした。
そして1審判決日。前述の通り、「全員一致」ではない「付言」付きの判決が言い渡された。
「死刑」です。そこに付けられた「付言」が、熊本裁判官の行き場のない怒りだったのだと思います。
この判決の後熊本さんは裁判官を辞任し、袴田巌の無実をはらすべく、活動を始めます。
ここから後は、是非、映画をご覧になってください!
2007年の熊本さんの発言は、裁判官の「合議の秘密」を破ったのは事実でしょう。
しかし、私などは法律を専門に勉強したこともないので、忸怩たる念を禁じ得ないのですが、「孤高のメス」を観た時(こちらはフィクションですが)にもありましたが、「法律で決まっているから、しない」というのと、「人間として、どちらが正しいのか」というのは次元が全然違うと思うんですな。
ちなみに、日本の刑事裁判の有罪率は99.9%だそうです・・・。
「冤罪」・・冗談抜きで怖いっす。
高橋伴明監督の気迫のこもった一作でした。
袴田巌さんの再審が1日でも早く決まるように願ってやみません。
ひきばっち的満足度★★★★☆
銀座シネパトスにて。
監督・高橋伴明 公式サイト
この映画の公開を知ってから、必ず観ようと思っていた作品である。
本作は、昭和41年6月30日に静岡県清水市で起きた強盗放火殺人事件で、犯人とされ逮捕され、そして裁判にかけられた袴田巌さんと、その裁判の主任裁判官であった熊本典道さんの判決後の苦悩と闘いを描いた作品です。
ネタバレしていますのでご注意下さい。
通称「袴田事件」の概要・・。
昭和41年6月30日未明。静岡県清水市の味噌工場が放火され、焼け跡から一家四人が焼死体で発見された。四人ともに、刃物で何箇所も刺された跡があり、警察は殺人事件と見て捜索を開始。柔道2段の被害者(専務)をもやり込めただろう犯人ということで、捜査を進めると、味噌工場で働いている男の中に1人「ボクサーくずれ」がいることが・・。味噌工場の工員で橋口社長と縁故がないのはそいつだけ・・そしてそいつは土地の人間ではない・・。立松警部(石橋凌)は、味噌工場で働いている元プロボクサー袴田巌(新井浩文)を逮捕。しかし袴田さんは容疑を否認。一旦は釈放したものの、すぐにまた逮捕。そこから拘留期限の3日前(袴田さんが耐え切れずに「やりました」と言わざるを得なかった日)まで、後に熊本さんが調べてわかったのだが、1日12時間や17時間という常識では考えられない長時間の尋問が(内容は推して知るべし)続けられていたのだ。
この後、第一審が始まるのですが、この裁判の裁判官は3名おりまして、その一人がこの裁判の主任判事である熊本典道(萩原聖人)なのですな。
こういう映画で演技論もどうかとは思いますが、萩原聖人がいいんですよ。こんなにイイ役者さんだとはついぞ知らなくてすみません。
この映画は、その熊本典道さんが2007年に話した真実、「袴田事件は無罪だという確証があったが、多数決で2対1で有罪になってしまった。判決文は主任判事が書くのが慣例なので、裁判長に言われて書いた。本当に申し訳ない」
の内容を骨子として作られています。
映画は、裁判官同士の学閥や、「出世するには」といったような、今まで見たこともないような側面を描いてみせます・・!
そして犯行から1年以上も経った頃に、警察から法廷へ“新証拠”なるものが提出されます。「血染めの犯行着衣」が、事件当時一度捜査した味噌樽の中から新たに発見されたというのです。
前述の警察による袴田さんへの取り調べの時間の余りの長さ、そしてそれが自白を得るまで何日も続けられたこと、などを調べて、自白の信憑性を疑っていた熊本裁判官は、新しい証拠が突然出てきたことにも、何か“意図的”な臭いを感じ取ります・・。
しかし、「疑わしきは、罰せず」という刑事裁判で最も尊重されるべき熊本さんの考えは、「多数決」という歪んだ民主主義に押し潰されてしまうのでした。
そして1審判決日。前述の通り、「全員一致」ではない「付言」付きの判決が言い渡された。
「死刑」です。そこに付けられた「付言」が、熊本裁判官の行き場のない怒りだったのだと思います。
この判決の後熊本さんは裁判官を辞任し、袴田巌の無実をはらすべく、活動を始めます。
ここから後は、是非、映画をご覧になってください!
2007年の熊本さんの発言は、裁判官の「合議の秘密」を破ったのは事実でしょう。
しかし、私などは法律を専門に勉強したこともないので、忸怩たる念を禁じ得ないのですが、「孤高のメス」を観た時(こちらはフィクションですが)にもありましたが、「法律で決まっているから、しない」というのと、「人間として、どちらが正しいのか」というのは次元が全然違うと思うんですな。
ちなみに、日本の刑事裁判の有罪率は99.9%だそうです・・・。
「冤罪」・・冗談抜きで怖いっす。
高橋伴明監督の気迫のこもった一作でした。
袴田巌さんの再審が1日でも早く決まるように願ってやみません。
ひきばっち的満足度★★★★☆