
昔、
10歳の子供がいた。
名前はウメハラ。
よく勉強ができた。
ウメハラの家は、
ふすま屋さん。
お父さんは、
ふすま職人やから、
たくさんの見習い工がいた。
ウメハラの母親は、
忙しい家業に没頭する旦那をシカトして、
豪遊の数々に明け暮れて、
愛人と駆け落ちして、
家庭を捨てた。
ウメハラの父親は、
精神疾患になって入院。
病室で、
一日中、
動揺『チイパッパ』を唄い続けていた。
ウメハラは、
父親から目をそらして、
病室の外の庭にある、
梅の木を見つめた。
木には、
つぼみがついていた。
家屋敷は借金のカタに取られ、
ウメハラは、
邪険な親戚に引き取られ、
鬼対応受けつつ、
数年が過ぎた。
その日その日の叔父叔母の邪険さに、
耐えながら、
ある時、
庭を見つめたら、
梅の木に、
つぼみがついていた。
ウメハラは15歳になった。
高校受験の為の勉強の日々。
シンダチが、
高校辞めて、ヤクザになると言う。
ウメハラはヤクザが大嫌い!
幼少期の借金地獄の獄卒としてのヤクザの恐ろしさ。
ヤクザを軽蔑に軽蔑したウメハラは、
その存在そのものを認めなかった。
自分は絶対にヤクザにならない!!
この一念に、
受験勉強がはかどり、
見事、
有名公立高校合格💮
庭には、
春の訪れ遅くも、
梅の木に、
つぼみがついていた。
ウメハラ18歳。
高校の授業についていけない。
当然、
大学受験は失敗😢
叔父さんに、
予備校行きたいと泣きついた。
学費は、
頭金と利息抜きの出世払いと申し出たが、
叔父さんは言った。
「俺の息子の将来には一千万円与え、お前の将来には一千万円奪う」
ウメハラの、
大学への道は、
閉ざされた。
庭には、
梅の木に、
つぼみがついていた。
ウメハラ20歳。
必死に、
ぼろっちい印刷会社で働き、
懸命に節約して、
金貯めた。
なのに、
実母の新たなる借金と、
死去した父親の葬儀費に、
貯めてたものは、
無くなった。
ウメハラは、
絶望に、
外を歩き、
目にしたものは、
公園に植えられた、
梅の木に、
付いているつぼみやった。
現在のウメハラは、
ヤクザ。
今夜は、
抗争方の事務所に出入り‼️
安アパートの自室から、
ドスを取り出す。
その時、
外にあった、梅の木のつぼみが目に入る。
ウメハラは呟いた。
「ウメのつぼみ」
そして、
ドスを懐に入れて、
立ち去った。
(高慢ちきながらも無邪気な幼なじみ、ウメハラの思い出。
ケイジロウ、
過去の一瞬一瞬こそ、
花開く未来への、
ウメのつぼみ)