牧カオリは千代田区でいつものようにバスに乗り、
外を眺めながら物思いに沈む、
「かつては江戸八百八町の賑わいを見せたこの地が今では高層ビルの一群と化した。時は流れながら私たちの人生もひとつの夢だと囁きかける」。
牧カオリは中学時代のことを思い出す。
牧カオリが中学1年生になると、
新しい友人達に混じることになる。
そんな新しさの中、
授業中に外を見ると、
他のクラスが体育の授業をしている風景が目についた。
そこに、
ジャニ系の生徒を見つけ、
この生徒に心が惹かれた牧カオリは仮病を使い、
保健室に行くと見せかけて、
このジャニ系生徒を待ち伏せした。
体育の授業が終わったところに牧カオリが来て、
ジャニ系生徒に告白した。
ジャニ系生徒は困ったように牧カオリを女子トイレに連れ込み、
胸を出して、
「実はあたしオンナなのよ」と言った。
牧カオリの心の中に、
核弾頭三千発分の爆発が起こり、
足をふらつかせながら教室に戻った。
教師は心に、
「フツーは具合が悪くなると保健室に行けばスッキリするのに、この生徒は逆に保健室に行って具合が更に悪くなった」、
と呟いた。
牧カオリは今、
バスの外をじっと見つめ、
「心が晴れ渡れば更に暗くなり、悩みは尽きることなく、大河の如く押し寄せる」と心に思う。
そして、
「私の人生は凡庸さと屈辱のスポットライトに照らされていました」と小さく言葉にした。
牧カオリは回想する。
ジャニ系生徒が女性だったことで、
家に帰った牧カオリは母親に、
「お母さん。ナンであたしを産んだの?」と問うた。
母親は悲しそうに、
「私も私の母親に同じことを尋ねたわ。すると私の母親の私の母親も同じことを私の母親の私の母親の私の母親に尋ねたらしいの。そしたら私の母親の私の母親の私の母親は、同じことを私の母親の私の母親の私の母親の私の母親に尋ねて、気がつけば縄文時代に遡るらしいわ」と答えた。
牧カオリは言う、
「人生はカデシュ・バルネアです!!」
(上画像は現シリアのカデシュ・バルネアだとされてるところ)
カデシュ・バルネアとは、
エジプトで虐げられていたイスラエル民族が、
モーセに率いられてエジプトを脱出した。
そのまま神が与えるカナン(現イスラエルとガサ地区)へと向かい、
カナン人(現アラブ人に混合された古代民族)と戦いその地をとるように神に命じられたにも関わらず、
10人の斥候(せっこう。敵陣への潜り込み監視兵)の裏切り報告から、
イスラエルはエジプトに帰るとダダをこねた。
そこで神は怒り、
カナンの手前の大砂漠の地カデシュ・バルネアで38年間の放浪を命じることになった。
いわば、
カデシュ・バルネアとは、
約束の地カナンを目前に、
半永久に彷徨う地ということになる。
話は牧カオリに戻る。
牧カオリは、
このカデシュ・バルネア事件を知ることで、
生き方としての心の働きのトラウマとなった。
牧カオリはバスの外に目をやり、
「人の世が呪われて当然です。この世はカデシュ・バルネアなんだから」と思い、
更に、
「バスを走らせるこの道が途切れることなく、カデシュ・バルネアの人生は絶えることはない」と考えた。
その時、
牧カオリはじんわりと腹痛を感じた。
牧カオリは心に、
「油断してたわ。さっきのさば寿司に職人の酸味の技巧が施されていたと思ってたら、悪くなってたのね」と悔やんだ。
そして静かに目を閉じ、
「やがてケツの穴から異臭を放つキャラメル色の液体に、このバスの中に悲鳴が響き渡ることやろう。私は恥をかくことになる。けど、それも時が過ぎるたびに薄れて風化していき、何事もなかったかのように消えていく」と心に呟いた。
牧カオリはぶるっと体を震わせて、
手持ちバックをお尻に当てて、
「さあ!一瞬の悲劇と惨劇の幕開けよ!ひとときの騒ぎに叫び、風化して消えていく事実にささやきましょう!」と心に叫び、
目を開いて、
「カデシュ・バルネア❗️」と叫んだ!
そして------バスの車内は------
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