カラスの生態について調べたいのでその種の本を探していたら面白いエツセイーに巡り合った。
シナントロープ(人類文化依存型野生動物)のモズ、カラス、燕、フクロウなどの生態から「文化鳥類学」という新たな一分野を唱えた筆者の鳥たちの社会をいきいきと描くネイチャーエッセイは人間社会に似て面白い。
さまざまな環境に適応して高度に進化した鳥たちは過酷な状況を生き抜くためにみごとな知恵を発揮するという。そうしたひとつが全国的に有名になった仙台のクリミ割りカラスや、電柱や鉄塔に針金ハンガーで巣を作るカラス、また、卵やヒナを外敵から守るに最適な屋内に巣を作るツバメが、銀行などの自動ドアを開閉するのにドアの開閉センサー付近でホバリングする事のより自由に出入りできることを覚え利用していたことなど枚挙にいとまがない。
また、瀬戸内海航路のフェリーに営巣したツバメがいて、毎日巣が海峡を横断して移動するのには驚いたであろうが、平均時速90キロの速さで飛び回るツバメにとって18〜20ノットの連絡船のスピードだったら充分追いつき追い越しが可能なので巣の位置がしじゅう変わるという思惑外れも苦にはならなかったらしい。
人にはこういう真似は出来ないだろうが、年中旅暮らしの旅芸人やサーカスに生活する家族は何となく似てはいないだろうか。
2002 芝田敏隆『カラスの早起き,スズメの寝坊』新潮選書