おくりびと(納棺師)は、アカデミー賞の外国語賞部門で栄誉に輝き、一躍世界に知られることになった。その厳粛な儀式、以前は家で亡くなる人が多かったので、身内の人達が辛い気持ちを抑え、万感の思いで旅立ちの支度を整えていたような気がする。
今は立派な職業として、納棺師が、ハローワークなどに求人も出されている。思ったより賃金は高くなく、就業時間も不規則なので人気が無かったような気がする。まだ映画は観ていないが、熟練のプロが、なきがらを丁重かつ荘厳に、納棺の儀式を執り行ってくれるようでほっとしている。
カミサンは十年ぐらい前まで、看護師をしていて、亡くなった人の身体を清め、最後の化粧をずいぶんとやってさしあげたと聞いたことがある。先日テレビを観ていて「それなら、私自信がある」と、のたまうので、「それじゃ、俺の時は心配ないな」と半分冗談で言ったら、真顔で「安心して任せて」と返された。
カミサンに、三途の川の旅支度をしてもらえると思ったら、なんだかその時が楽しみになった。更に、エスカレートして、遺影はどれを使おうか、撮りなおしして気に入った物を準備しようか、告別式のテーマ曲を何にしようか、新聞への気の利いた死亡広告は、など考えてみるのも、元来プロデュース好きの私には、楽しいエベントに思えるからか。
いざ、本当の終末期になったら、こう、悠然と楽しんでいられないだろうことは、間違いなかろうが。
ただ、わずかに気懸かりがある、それは、積年の恨みつらみの仕返しがないだろうか、今反省してもすでに遅いが。でも、死んだ身には、そんなことは何でもないと思うことにしよう。やれやれ安心して行けそうだ。