猫の名前はミミちゃん。 当院に慢性腎不全のために通っている13歳のメスの日本猫です。 ミミちゃんは飼主のご夫婦と三人暮らしです。 ミミちゃんはお父さん子で、寝るときはいつもご主人の布団の中です。 2月のある日、明け方にミミちゃんは奥さんの部屋に入ってきて、耳元で何度も鳴きました。「起きてよ」というように。 未だ薄明かりの早朝なので、奥さんは「ミミちゃん、まだ早いよ」と言って、布団にもぐりました。 それでもミミちゃんは鳴き続けます。 そのうち奥さんは、これはいつもと違うと思いました。 すぐに起きてご主人の部屋を開けると「あっ!」と声をあげそうになりました。 ご主人が布団の傍に倒れていたのです。 奥さんは救急車を呼び、ご主人は病院に運ばれました。 診断の結果は脳梗塞。もう少しで手遅れになるところでした。 ミミちゃんのお蔭で助かったのです。 今、ご主人は寝たきりで、自分から話すことはできません。 それでもミミちゃんのことが気になっているのは奥さんには分かっています。 「ミミちゃんに会えばご主人の様態も改善するのでは」と奥さんは病院までミミちゃんを連れて行きますが、病院には猫は入れてもらえません。 *動物介在療法というものがあるのですが、この病院にはまだ導入されていないようです。 ご主人が入院されてからというもの、ミミちゃんは始終奥さんに「玄関のドアーを開けて」とせがみ、開けてもらうとエレベーターの前まで行ってずっとご主人が帰ってくるのを待っているそうです。
今は一日も早く良くなられて、またミミちゃんと一緒に暮らせる日がすぐ来るよう祈るばかりです。
今日もミミちゃんはエレベターの前でご主人の帰りを待っています。
ご主人の命を救った猫「ミミちゃん」と奥さん
*動物介在療法とは、定められた基準を満たした飼主と動物を、医療専門家のプログラムに介在させた治療法の一つ。人の身体的、社会的、感情的、認識的な機能の改善を促進し、精神科、高齢者ケア、作業療法、理学療法などの場面で活用される日本ではまだ新しい考え方の治療法です。(石田卓夫日本臨床獣医学フォーラム代表の言葉より) 大正動物医療センター http://www.taisho.animal-clinic.jp/