ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

スペル

2010年04月26日 | ネタバレなし批評篇
その昔、ライミの処女作『死霊のはらわた』を夜中の0時から見始めて眠れなくなった経験があるのだが、本作はサム・ライミらしい久々の本格派スプラッタ・ホラーに仕上がっている。最近は『スパイダーマン・シリーズ』なんかを撮ってすっかりメジャー映画監督の仲間入りをしたライミだが、やはりこの人テイスト的にはホラーの方が向いている気がする。

債権取立の延期申し入れを断られた腹いせにに、ロマ族のおばあちゃんが銀行窓口のおねえちゃんに“呪い”をかける。おそらくサブプライム・ローンのおかげで低収入でも住居を買えるようになった人なのだろう。そんなリーマン・ショックで回収強化した銀行に対する嫌味とも思えるストーリーがなかなかタイムリーで、劇中中国人バンカーをセコい奴として描くなど、頭角をあらわしはじめた中国に対する牽制も忘れてはいない。

何せこの義眼&入れ歯おばあちゃんによるタイガー・ジェット・シン(古)顔負けの反則攻撃が物凄い。噛み付く、(いろいろな種類の)反吐を吐く、ブロンドの毛髪を引っこ抜く。ヤリタイ放題の暴れん坊将軍なのだ。入れ歯がはずれたことも気づかずに、主人公のおねえちゃんに噛みつこうとする根性は見上げたもので、○して尚、おねえちゃんの幻覚となってしつこく付きまとうこの老婆が本ホラー影の主役であろう。

しかし、本来なら落ち着いてみていられないほどおっかないはずのホラー・シーンも、やりすぎるととんだコメディに転化してしまう。歯茎マグマグ攻撃?は何とか持ちこたえたが、拳骨ディープスロート?や鼻血ドゥ-?のシーンではさすがに耐え切れず思わず吹き出してしまった。おそらくライミ自身も確信的に撮っているにちがいない。ちょいと悪ノリが過ぎるきらいもあるが、概ね観客の許容範囲におさまるサジ加減は見事である。

ボタンの伏線については途中でかなりの人々にネタバレ気味だったと思われるものの、古典ホラーをなぞったストーリーには安定感があり、無理やりなどんでん返しを入れないシンプルなオチにはむしろ好感がもてるだろう。

スペル
監督 サム・ライミ(2009年)
〔オススメ度 


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