ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

第17捕虜収容所

2010年05月01日 | ネタバレなし批評篇
NHKのBS等で何度も放送されている本作を久々に再見してみると、意外とコミカルな演出が多いことに気づかされる。漫才のようなボケと突っ込みを交わすアニマルとハリー。途中からクラーク・ゲーブルのモノマネまで披露する芸人俳優が合流して、第17捕虜収容所はなかなか楽しそうだ。ビリー・ワイルダーとはとても仲が良かったと伝えられるウィリアム・ホールデン演じるセフトン軍曹が、ラット・レースに密造酒バー、はては風俗業?まで収容所の中で営んでいるヤリ手実業家という設定も、大いに笑えるのである。

第17捕虜収容所のドイツ監督官シュルツも、陽気なアメリカ兵に混ざって「ドイツが戦争に勝ったら、もう一度アメリカへ渡ってレスラーに戻る」なんて軽口をたたいたりするので、中盤までのノリはきわめて軽くむしろコメディに近い。しかし、ドイツ兵とつるんで商売をしていたセフトンにスパイ疑惑が持ち上がると、映画はミステリーへと大きく方向転換していくのである。そのギャップが本作の魅力の一つとなっていて、観客も1本で2本分の映画を見たような満腹感を得られるはずだ。

もともとブロードウェイの舞台劇だった脚本をワイルダーが脚色したシナリオには、真犯人発覚のくだり等に修正が加えられている。オリジナルでは、普段はまったくしゃべらないオカリナ男が、真犯人に飛びかかり皆がクリスマスソングを唄っている最中、一人だけドイツ民謡を口ずさんでいた事実をつきつけるのである。セフトンが真犯人に向かって繰り出すアメリカ人確認クイズも舞台とは内容が異なっている。映画では、真犯人がパールハーバーの襲撃時間をベルリン・タイムで答えてしまい御用となるのだが、舞台では「ミッキーマウスの恋人の名前」に窮することでバレてしまうといった具合。

舞台には登場しないセフトンの助手として働くクッキーという人物を立てて、単なる精神異常者扱いで終ってしまうジョーイの役割を補完させているところが最も注目すべき変更点であろう。ただ、映画のテーマ・ソングをクッキーが口笛で吹いてエンディングを迎えるのではなく、ジョーイのオカリナでラストを締めてほしかったと個人的には思うのである。精神異常の元大女優を主人公にした『サンセット大通り』がはまっていただけに、あえてジョーイを脇役に追いやった理由がいまいちピンとこないのである。

第17捕虜収容所
監督 ビリー・ワイルダー(1953年)
〔オススメ度 


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