ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

ハッチング 孵化

2023年09月16日 | ネタバレなし批評篇



SNSに理想的な仮面家族の日常をアップして結構なアクセス数を稼いでいる母親は、元フィギュアスケート選手。母親の果たせなかった夢を是非娘に叶えてもらおうと、イヤイヤ体操クラブに通わされている12歳の少女ティンヤ。毒ママのプレッシャーをストレスに感じているティンヤは、どうも摂食障害らしきご様子だ。

本北欧ホラーの考察ポイントは、ティンヤが育てたアッリとは一体なんなのか?につきると思うのだが、母の愛を姉に独占されている弟、隣に引っ越してきたライバル少女とそのペット犬、ママの浮気相手の赤ちゃんに対する攻撃的な態度から察するに、純粋無垢なブロンド少女ティンヤのダークサイドを具象化したクリーチャーなのではないか。

一見すると、毒ママによって首を折られ、娘ティンヤによってとどめをさされたカラスの霊がのりうつった化け物のようにも見えるのだが、本作が長編デビュー作となる新人女流監督の意図としては、もっと観念的な感情のメタファーのように思えるのである。

毒ママから受け継がれたのは、何もブロンドと美しい容姿だけではない。独占欲や嫉妬心、自己中心主義や自己顕示欲といった真っ黒な精神性もちゃんと遺伝的に引き継いでいたのである。母親の愛に応えたいという少女の無垢な心がそれらを🥚の中に押し隠していたものの、母親の浮気発覚とともに“孵化“してしまうのだ。

最終的には、毒ママ自身の手によってティンヤの子供らしいライトサイドが死滅、自分の殻を破り自立したダークサイドのティンヤが誕生するのである。母親から娘へと営々と引き継がれる女性特有の“毒“を、北欧独特のメルヘンタッチで描いたホラームービーなのである。

ハッチング 孵化
監督 ハンナ・ベルホルム(2022年)
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