ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

お熱いのがお好き

2010年04月20日 | 誰も逆らえない巨匠篇
禁酒法時代のシカゴで、マフィアの私刑を偶然目撃してしまったバンドマンが、女だけの楽団にもぐりこんでフロリダへ逃亡するスラップスティック・コメディ。サックス奏者のジョー(トニー・カーティス)とベース奏者のジェリー(ジャック・レモン)の女装がなんともキモおかしいのだが、なぜかこの2人、フロリダで余生を過ごしている有閑リッチ老人やホテルボーイにモテモテ。同じ楽団員である正真正銘のピチピチ・ガールズの方に男なら当然目が行ってしまうと思うのだが、おネエ系にしか見えない2人の方が逆に男どもの注目を集めてしまうありえない設定が面白い。

撮影当時、精神不安定状態だったマリリン・モンローは、楽屋入りは遅れるわ、部屋に閉じこったまま出てこないわで、監督のビリー・ワイルダーをはじめ共演者からも相当のひんしゅくをかっていたらしい。ドレスのデザインでごまかしていたが、ウエストラインも相当メタボぎみでシェイプされていないモンロー、金持ち男との結婚しか眼中にないギラギラ系の女シュガーを演じているはずなのに、眼差しはひたすらどんよりと曇って見える。問題になったカーチスとのキス・シーンも、まったくといっていいほど感情がこもっていない。まるでアントニオーニが描くラブ・シーンのように渇いていて、その絵面はシュールでさえある。

しかし、シンガーに扮したモンローが劇中披露している生歌を今回あらためて聴き直してみると確かにお上手。豊乳&ブロンド(ブルネットを染めていたらしい)&美人でおまけに歌までうまけりゃ人気も出るわな、という感じなのだ。愛人関係にあったケネディを通じて(映画にも登場する)マフィアともつながっていたといわれているモンローは、映画公開から数年後睡眠薬のオーバードーズで自殺?をとげることになる。ドリフターズもどきのドタバタ・シーンが映画の大半を占める中で、この人気絶頂のセックス・シンボルに死の影が迫っていることに、気づく者などいなかっただろう。

お熱いのがお好き
監督 ビリー・ワイルダー(1959年)
〔オススメ度 


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