ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

パッセンジャーズ

2009年09月16日 | ネタバレなし批評篇
この映画もネタバレ戒厳令がひかれた作品なのだが、(誰とはいわないが)心無い映画ライターのおかげですっかりネタバレ状態で見ることになってしまった。このロドリゴ・ガルシアという映画監督、前作2本がいずれも女性の揺れ動く微妙な心理をとらえたオムニバスだったのだが、今回はオチもしっかり用意されたどんでん返し系サスペンスになっておりこれまでの作風からするとかなりチェレンジ的な作品となっている。

この映画を見て、その落とし方が酷似しているあるサスペンスホラーを思い出す人が多いかもしれない。しかし、そのホラー映画のエンディングが非常に後味の悪い悲しい終わり方をしていたのに対し、本作品は見終わった後観客がある種の幸福感に浸れるような演出がなされているのだ。ハリウッドの名だたる大女優がこぞって彼の作品に出たがるというロドリゴ・ガルシアの用意した幸福なアンハッピー・エンディングには、かなりの確率で涙腺がゆるんでしまうにちがいない。

自分の殻に閉じこもった美人心理カウンセラー・クレアを演じるのはパッチリお目目が印象的なアン・ハサウェイ。飛行機墜落事故で生き残った?乗客たちのPTSD治療を依頼されるのだが、治療中患者が一人二人と姿を消していき、怪しい男にも尾行されていることに感づいたクレアは、飛行機会社の陰謀説を疑いはじめる。生き残った?乗客の一人エリック(パトリック・ウィルソン)に強引に口説かれているうちに恋に落ちたクレアは、そのエリックから衝撃の真実を告げられるのであった。

前述のホラー作品が登場人物の目線や会話といった一挙手一投足にいたるまで細かい配慮をしていたが、この映画の中の登場人物たちは一般人となんら変らないごく普通の生活を送っているために、それが衝撃のラストにつながるミス・ディレクションであることに途中で感づく(納得する)人はあまりいないと思われる。撮影監督は水槽の中のようなイメージで撮ったと話していたが、一般観客の目にはごく普通の絵にしか映らないはずで、この部分の演出をもっと工夫すべきだった点は否めない。

この映画には、墜落した飛行機の乗客以外にもたくさんの人々(クレアに仕事を依頼する警察関係者や下宿先でやたらとクレアの世話をやく隣室のおばさん等)が登場するのだが、最もグッっとくる場面は衝撃の真実がクレアに伝えられた時ではなく、実はこの乗客以外の人々の正体がわかった瞬間なのだ。たとえ(心無いライターのせいで)ネタバレ状態で映画を見たとしても、この心有るの人々の存在のおかげで1本で2度も泣ける作品に仕上がっているのである。

パッセンジャーズ
監督 ロドリゴ・ガルシア(2008年)
〔オススメ度 

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ウォッチメン | トップ | 誰も守ってくれない »
最新の画像もっと見る