TAZUKO多鶴子

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落語の『無舌(むぜつ)』

2007-11-28 | TAZUKO多鶴子からの伝言

明治の三遊亭円朝といえば、並ぶ者なき名人と謳われた季代の落語家である。
この円朝が、
一日、山岡鉄舟の前で一席しゃべった。
ところが鉄舟は気に食わない。
「おまえは舌でしゃべるからいけない。舌をなくさなければ落語にならない」
といわれ、以後、
熱心に参禅し、明治の大禅師、西山禾山についても学んだ。
この禅修行から、大名人・三遊亭円朝が生まれたのだが、
その円朝の落語の枕の一説はこうだ。
「ある日、大和尚(禾山)が急に禅室へ召されますので、とりあえず参りてみますれば(略)威たけだしく『円朝』と呼ばれるので『ハイ』と答えましたところ、『分かったか』とおおせられますゆえ、『分かりませぬ』と申し上げますと。大和尚は例の目をむき出して『汝、返事をしながら分からぬか』と一喝され、また『円朝』といわれるので、『ハイ』と答えますままに、豁燃省悟いたしました。わたしは初めて円朝が『ハイ、ハイ』でなく、『ハイ、ハイ』が円朝であると合点しました。それよりこのかたの小生は舌無しお話しいたしますので、おのおの方も耳無しにお聴き取りを願います」
鉄舟が円朝に与えた居士号を無舌(むぜつ)という。
                          <『禅の本』…『造る』より>



<参考資料>『禅の本』
       発行人:高木俊雄
       発行所:(株)学習研究社