光と影のつづれ織り

写真で綴る雑記帳

国宝 納涼図屏風など 東京国立博物館(2020.8.10)

2020年08月28日 | アート 日本画

2020年8月10日に行った東京国立博物館シリーズ、今日は本館2階、屏風絵コーナの紹介です。

国宝 納涼図屏風と再会しました。 前回は2012年7月28日

狩野派の高弟だった久住守景、狩野派を離れた後、狩野永徳などの豪壮な画とは対極をなす傑作を残してくれました。

 

 

農夫の家族の部分を近づいて撮影。 

夫の描線は太く力強く、妻は柔らかな線で白い肌が美しい、親の横で子供の無邪気な仕草、表情・・・夕涼みの温かい家族のひとときがにじみ出て、素晴らしい。

主題は江戸時代前期の歌人、木下長嘯子(きのしたちょうしょうし)の次の歌に着想したらしい。

「夕顔のさける軒端の下すずみ 男はててれ女(め)はふたの物」  ※ててれは襦袢あるいはふんどし、ふたの物は腰巻

久隅守景については、2011年12月1日のブログで紹介していますので、再掲します。

”狩野探幽の一番弟子にあたる技量です。しかし、一男一女の子息が、息子は罪を犯し佐渡に流され、娘も狩野門下の塾生と駆け落ちするなどして、狩野派からは距離をおき
 金沢、京都で生活し、そこで独自の制作活動を行った。 この時期の作品が彼の絶頂期にあたり、国宝「夕顔棚納涼図屏風」などを生み出している。”

 

 

次は尾形光琳の風神雷神図屏風。

トーハクでは正月に展示されることが多く、私も見慣れた作品です。 

俵屋宗達の風神雷神図屏風を、京都国立博物館の国宝展(2017年)で見ましたが、できれば並べて観たいもの。  

 

 

 

最後は、池大雅

右隻と左隻の風景が異なるので調べると、右隻が西湖春景図、左隻が銭塘観潮図とのこと。

西湖は中国浙江省杭州(せっこうしゅうこうしゅう)市域の西にある湖。古来名勝の地として知られる。

 

 

向かって右隻の西湖春景図

 

左隻の銭塘観潮図。

銭塘観潮は、同じく浙江省の銭塘江で旧暦8月18日、河を遡ってくる満潮を見物すること。

うーん、解説を見ないと、よくわからない作品でした。

 

この屏風絵コーナの展示は、この日が最終日でした。

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前田青邨「維盛高野」、東京国立博物館 博物館でお花見を

2019年03月31日 | アート 日本画
 
 東京国立博物館の春の恒例行事、「博物館でお花見を」に行ってきました。
 
庭園の中にある茶室「春草蘆」の屋根部分に懸かる桜。 

 
 
 
 
 
法隆寺宝物館前。 桜と柳が主役。
 
 
 
 
 
桜は、さわりだけにして(別途、昨年のものと一緒に掲載予定)
 
 今日は、前田青邨の「維盛高野」という素晴らしい作品を見ることができました。
 
 作品を見ている和服女性は、たまたま居合わせた方です。(撮影の承諾をいただきました)
 
館内でも華を見れてラッキーでした。 和服の色が薄い浅葱色だったのに、写真では

黒く写っているため、露出を調整した画像を最後に再掲しています。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 「維盛高野」は、私も知らなかったので調べると
”「平家物語」に取材した作品。木曾義仲(きそよしなか)に敗れた平家一族は、西海へ敗走するが、人の世の栄枯盛衰を
はかなんだ平重盛(たいらのしげもり)の子維盛は、高野山に登り仏門に入る。しかし、救いを得られず、ついに入水
して果てた。”

というもので、実に美しい色彩の作品です。 (画像は4月6日撮影分に貼り換えました)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 





 
 
 

ここからの山と樹々の色彩の美しいこと、絵筆のタッチも揺らぎやリズムがあり、なんともいえません。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 









 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 展示は以上です。

 
 
 
これでも和服の色は、濃すぎるかんじです。
暫くたって、2階の陶磁器のコーナでも、対面にいらしたのですが、もう一度
撮影をお願いする度胸がありませんでした。

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博物館に初詣 #3 小林古径「踏絵」、前田青邨「朝鮮之巻」

2019年02月11日 | アート 日本画

 もう、旧正月も過ぎましたが、博物館に初詣 #3をまとめました。

小林古径「踏絵」と前田青邨「朝鮮之巻」です。 

 両作品とも、トーハク所蔵の近代日本画では大好きな作品で、それぞれ、過去のブログ

にも掲載しています。

小林古径「踏絵」・・・・2013年6月6日のブログ

前田青邨「朝鮮之巻」・・2011年6月3日

上の二つの記事は、ページビューも多いので、今回、新しく撮った写真でお色直しを

してみました。

まず、「踏絵」から。 

今回の撮影分では、軸装も含めて、ワイドにし、色彩等の補正も抑えめにしました。

ただ、ガラス面に天井や照明が映り込み、残念なのですがご容赦を。

 

 

 

 3人の女性達のアップです。 表情が妙に艶めかしく感じるのは、私の修業が足りないせいか。

 

 

 

 次は、前田青邨「朝鮮之巻」です。




大正三年(1914年)、単身、朝鮮に渡り、平壌付近で取材した成果とのこと。
 


 

 



 


城門を通り抜ける市井の人々。  左下の女性は洗濯中の姿だと思います。  昔は、洗濯物を棒で叩いていたんですね。

 

 

 


 

 

 



当時は、ほとんどの人が白衣で、両班と呼ばれる官僚支配階級だけが

色付きや柄付きの服を着ることを許されていた。

それにしても、自由闊達な筆さばき、さすが青邨だ。 

 


当時の民俗が、よく捉えられていると思います。

 


女性は頭の上に籠?を載せて、物を運ぶ姿が多い。 そして、短いチョゴリ(上着)から、乳房が見えているんですね。

赤ちゃんの背中への抱き方は、日本ではおんぶですが、当時の朝鮮では、腰に巻いた布でくるんだようで、ポテギという

そうです。

市場の群衆の光景、素晴らしい描写力です。

 



 

 

 

 



河岸の光景。 平壌を流れる大同江でしょうか。

 



 



瓦葺の屋根には、魔除けの雑像(チャプサン)が。

 


河岸で洗濯する女性達。 白い着物なので、洗濯は大変だったでしょう。

頭に載せているのは、洗濯物だったんだ。

緑布の屋形船のような舟は、何なのだろう。

 

 

 もう一艘、同型の舟が描かれていて、女性が網?を引いている?・・・その横には鼓を打つ女性

ますます分からなくなりました。



釣りをする小舟、洗濯をする女性達、展示はここまでです。 生活風俗を活き活きと表現した青邨の画力は、本当に素晴らしい。

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〈補足〉博物館に初詣 #2 国宝「松林図屏風」

2019年01月20日 | アート 日本画

1月5日に 国宝「松林図屏風」の記事をアップしましたが、1月11日にトーハクを再訪し

「松林図屏風」の写真と、その複製品の映像インスタレーションを撮ってきましたので

紹介します。

 まず、本物の国宝「松林図屏風」 。(この時は、すいていました。)

 


今回は落款も撮ってみました。

 


国宝室に掲げられた説明パネル

 

 

 

 

 次に、本館1階の特別4室で展示されていた、高精細複製品の映像インスタレーションです。

3分間の映像で、複製品に直接プロジェクタから投射されていました。

最初に大鷲が松林に向け、羽ばたいていきます。 

 

 

 池が現れます。 ここでは、松林図の松と映像が、少しアンマッチかな?

 

 

 池のほとりの林

 

 


右端から、また大鷲が飛んできます。

 

 

 

どんどん松林に入っていきます。 大鷲の目線で、画面が展開します。

 

 

 

 




 




そして、ほぼ松林図の風景が現れます。

 

 


夕暮れになっていきます。

 

 

 

 雪が降ってきました。 きらきら光る雪がゆっくりと舞い落ちて、きれいでした。

 

 


やがて雪も止み、松枝が薄っすらと雪化粧。

 

 

 宵闇が迫ってきました。

 

 

 朧月が少しづつ

 

 


朧月にシルエットになった形が何かよくわかりませんが、以上で映像インスタレーションは終了です。


雪の降るシーンが、印象に残りました。


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博物館に初詣 #2 国宝「松林図屏風」

2019年01月05日 | アート 日本画

東京国立博物館(略称:トーハク)の新年展示、人気No1は

長谷川等伯の国宝「松林図屏風」だと思います。

本館 国宝室の展示状況です。(1月2日 10:37頃) 

これでは、ゆっくりと鑑賞するのは無理。

 


 

 2016年のトーハク初詣の時にも、この屏風図が展示されていました。 

この時のブログで、少し苦労しましたが「松林図屏風」を写真でまとめています。

その中からの1枚を下に貼ります。




ところが、今年は畳の上に座って、ゆっくり鑑賞できる! 

 





実は高精細複製品なのです。

 




途中から映像が加わります。

 

 

 

 

 映像が加わった時、松林をカラスのような鳥が2,3羽飛び去って行きました。 慌ててカメラを向けたのですが

飛び去った後の写真になってしまいました。


今回は、畳に上がらず、周りから撮影しましたが、期間中に畳に上がって鑑賞・撮影したいと思っています。

1月20日の記事で映像インスタレーションを紹介しています。(1月20日記事追加)

 展示日程は、2019年1月2日(水) ~ 2019年2月3日(日)です。

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「木島櫻国 PartⅠ 近代動物画の冒険」展 泉屋博古館分館に行って #2

2018年03月08日 | アート 日本画

木島櫻国は、明治10年(1877年)に京都市内、三条室町に生まれた。

京都の経済や文化の中心地だったこの地で、絵の才があった櫻国は、16歳で京都画壇の重鎮であった

今尾景年に入門し、技量を磨いた。  一方、漢籍も別の師について学び、昼は絵画制作、夜は漢籍

読書の生活を生涯送る。

20代前半には独立し、各種展覧会に出品するようになった。

当時の出品作。  (なお、撮影は美術館より特別の許可を得て行っています)

 

左の猛鷲図の解説です。説明する実方(さねかた)葉子学芸課長(京都・泉屋博古館)。 本展を中心となって企画・準備された方で

エピソードなどを交えながら、わかりやすい説明をしていただきました。

 

 

 

 

卓越した技量の源泉となったのが写生。

今回の展示では、その一部が展示され、櫻国の修行ぶりが垣間見られる。 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この屏風の制作が7月となっており、京都の街中の家で個人所蔵されていることから、祇園祭宵山で、屏風祭に使われたと思われるとのこと。

注:屏風祭 宵山の期間中、各山鉾町の個人宅(有志)の表の格子を外して秘蔵している屏風や美術品、調度品などを飾り、祭り見物に来た人々にも、通りから鑑賞してもらえるようにしている。

 

 

 

 

この作品も洛中の旧家の伝来品なので、屏風祭用か。  獅子の顔貌や瞳が、獣というより、高邁な精神を宿しているように見える。

 

 

 

 

 

キャプションにもあるように、熊の眼差しが優しく、冴えわたった画技に奥行を与えている。

 

 

 

 

 「かりくら」  100年以上行方不明で、ボロボロで発見されたものを、2年かけて修復したもの。

馬の躍動感や、草花の描きこみがさすがです。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高価な青系絵具などを、たくさん持っていて、調査をしている芸大生たちから、垂涎の的らしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 左 :「獅子」 昭和時代 櫻国文庫蔵

   

                         

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に、「寒月」の横に展示している「時雨」。 第1回文部省美術展覧会の日本画で最高位を受賞した作品。

 

「時雨」 明治40年(1907) 東京国立近代美術館蔵


泉屋博古館分館は、こじんまりした美術館ですが、充実した展示で、見応えある美術展になっていました。 お勧めします。

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「木島櫻国 PartⅠ 近代動物画の冒険」展 泉屋博古館分館に行って #1

2018年03月05日 | アート 日本画

「生誕140年記念特別展 木島櫻国 PartⅠ 近代動物画の冒険」 に行ってきました。(2018/2/23)

フライヤーです。

 

 

フライヤーにも載っているメインヴィジュアルの「寒月」が素晴らしい。

私にとっては、国宝級の屏風絵に思えます。


室内の展示光景。 左の屏風絵が「寒月」です。(美術館より、特別許可を得て撮影しています。)

 


 

展覧会は、動物画を中心に、画業をたどる構成になっていますが、「寒月」が図抜けて素晴らしいので、先に「寒月」をメイン

に紹介し、後編で、他の作品などを紹介します。

 

正面から




「寒月」を初めて見たのは、2013年の「夏目漱石の美術世界」展、漱石が当時の新聞の美術批評欄で、「寒月」を酷評している

ことを知り、驚きました。 もう一度見たいと思って、2014年に泉屋博古館分館の木島櫻国展に行ったのですが、展示替えのため

見逃してしまいました。 

そして昨年、京都の泉屋博古館で本展が先行開催されたとき、NHK Eテレの日曜美術館で「漱石先生 この絵はお嫌いですか

~木島櫻国~」と題して紹介されたのを見て、櫻国の絵の先進性、革新性になるほどとうなずき、もう一度見たいと思っていました。

(3月11日9:00から、Eテレで再放送があるようです。)

それでは、いただいた図録と、京都泉屋博古館の実方(さねかた)葉子学芸課長の詳しい解説も含めて「寒月」の魅力を述べてみた

いと思います。

 

図録の表紙です。

 

 

図録本文に載っている狐の顔の拡大図。 眼が鋭い・・・櫻国の他の動物絵は、優しさを湛えた眼が多い。

 

 

 

図録の裏表紙です。 月明りに浮かぶ夜空と雪景色が絶妙。 

実方学芸課長の話では、この空の色は何を使ったのか、まだ分かっていないそうだ。

 

 

 

 

こちらは、図録本文の竹林の拡大図。 高価な群青を焼いて、黒い青味を出している。

右下の解説に”野草の白綿毛の油彩風なマチエールも新鮮”とあります・・・確かに、この白い花が

効果的なのです。

 

 

屏風の右側部分です。  白い綿毛がリズミカルに目に入ってきます。

 

 

 

 

綿毛の華の部分を拡大。 油彩風なマチエールが分かります。

実方学芸課長の話では、櫻国は洋画家の浅井忠と親交があったらしく、その影響も考えられるとのこと。 

 

 

 

 

次に、「寒月」が生まれた土壌も観ることができます。

写生帖です。  中央右の券は、動物園から贈られた優待観覧券(年間パスポート)

 

 

 

 

 

写生帖の狐の顔、「寒月」と連なっています。

 

 

 

 

同じく、貴船の雪景。 ここで、獣の足跡を見たことが「寒月」の契機になった。

 

まず、「寒月」編はここでおきます。

 

 

寒月の東京といっても、こちらは泉屋博古館分館の入口。 白い綿毛の代わりに、高層ビルの窓明りが美しい。

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「世界に挑んだ7年 小田野直武と秋田蘭画」展プレミアムトークに参加して(一部修正)

2016年09月06日 | アート 日本画

秋田蘭画って、 まったく知りませんでした。 

そのため、「秋田蘭画展」プレミアムトークの参加案内をいただいたとき

申し込みをためらったのですが、こんな時は、積極的に参加した方が良い

と、経験からの後押しで応募して当選。

 

当日、会場に貼ってあったポスター

プレミアムトーク概要は次の通りでした。

日時 2016826日(金)15:0017:00  
会場:サントリー美術館 6階ホール    
内容: 「秋田蘭画の魅力」
     秋田蘭画に造詣の深い 3 名により、謎の多い秋田蘭画の魅力と展覧会の見どころを紹介。
登壇者:高階秀爾氏(美術史家、大原美術館館長、公益財団法人西洋美術振興財団理事長)
     河野元昭氏(京都美術工芸大学学長、静嘉堂文庫美術館館長、秋田県立近代美術館名誉館長)
     田中優子氏(法政大学総長)
進 行 役:石田佳也(サントリー美術館学芸部長)、展覧会説明:内田洸(サントリー美術館学芸員、本展企画担当)
 
無知の秋田蘭画について、錚々たる先生方のトークセッション、さぞ難しく、専門的な話しになるのかなと、腰が引け
気味でしたが、いやいや面白いこと!
 
最初に、登壇者の紹介。(写真はトーク終了後の記念撮影)
右から、高階秀爾氏、田中優子氏、河野元昭氏
この御三名の方々は、サントリー美術館の企画委員もされていて、秋田蘭画もこの先生方のプッシュで
実現したとか。
 
 
最初にお詫びです。  当日はサブカメラで撮りましたが、下の写真のように説明スライドに
縞模様が顕れ見苦しいので、白黒に変えました。
 
秋田蘭画の主役は小田野直武。
秋田、角館の生まれ・・・(角館は、私が22歳の頃、冬の旅をしたところで懐かしい)
小田野直武は、若い頃より画才を発揮して、絵馬などが残っています。
当時の秋田藩主、佐竹曙山や、角館城代の佐竹義躬も、直武と同年代で、秋田蘭画のコア
となる人たちです。
 
 
秋田蘭画は知らなくとも、解体新書は知っています。 この挿絵を描いたのが小田野直武。
 
安永2年(1773)7月に、本草学や戯作などで高名な平賀源内が、鉱山開発で秋田に招かれたのがターニングポイント。
3か月ほどで、源内は江戸に戻るのですが、小田野直武は藩主・佐竹曙山から銅山関係の調査役を命じられ、同年12月に
江戸に派遣され、源内宅に住み込み。
そこで、源内の多才な人脈と交友を持ち、「解体新書」の挿絵作者として抜擢される。
このとき、西洋の「遠近法」や「陰影法」をマスター 
 
 
一方、享保16年(1731)に長崎に来航した中国人画家・沈南蘋(しんなんびん)の写実的で華麗な画風が
全国に伝播し「南蘋派」として流行していました。
 
当時、江戸では、南蘋風花鳥画を広めた宋紫石がいて、直武も様々な技法を学んだと思われます。 
  
 
こうして、小田野直武のなかで、従来の日本画、西洋画、南蘋風絵画が混然一体となった秋田蘭画が生まれた。
 
 
この児童愛犬図も独特ですね。 30代女性に見える、左の女子児童など、ケチをつければ一杯あるのですが
従来の日本絵画にはない、面白さが魅力です。 
 
 
 
 
 
 
 
上図の右側、下部の部分アップ。 細密な花鳥、薄い遠景、枝葉の遠近と陰影・・・・確かに新しい画が誕生している。
 
 
 
 
小田野直武は、安永6年(1777)に一時、秋田に帰国し、翌年に藩主・佐竹曙山と再び江戸に上る。
この間に、秋田藩内に蘭画の技法が伝わったようです。 

 

藩主・佐竹曙山も幼少より画才で鳴らしており、蘭画の影響を受けた作品を残している。
直武の絵よりも、クールな感じを受けます。 
 
     

 

 舶載のプルーシャンブルーを用いた青空の色彩も特徴。  後の北斎や広重にも影響を与えている。 

 

 

 

 

 

安永8年(1779)、直武は秋田藩より突然、謹慎を命じられ帰郷。

同じ頃、平賀源内が人を殺めた咎で捕まり獄死。 そして安永9年(1780)5月、直武は数え年32歳で亡くなる。

直武の謹慎の理由や死因は謎のまま。  また、佐竹曙山もその5年後に亡くなり、主要な人物がいなくなって秋田蘭画の火が消える。

 

ただ、直武に学んだとされる司馬江漢が、更に銅版画や油彩画を用いて、新たなジャンルを切り開いていき、命脈は繋がった。

 

以上までが、展覧会の構成に沿った解説でした。

 

 

これからが、パネラーによるトークで、トップは高階秀爾氏。

当時のオランダは共和国で(王侯貴族はいない)商業が中心、東インド会社などから長崎を通じ、その文化が日本に入ってきた。

絵画はフランドル絵画と呼ばれ風景画や静物画が発達し、他の西洋諸国のような宗教画は少なかった。 また、1770年代に

大百科辞典ができ、知識を学ぶツールも揃い、日本に馴染みやすかったことが要因で、蘭学がブームとなり、江戸でもそうした

文化が沸騰した

 

 

 

 

 

 

二番目は田中優子氏、毎日新聞のコラム「江戸から見れば」を読んでおり、江戸文化に詳しい方で、法政大学の総長。

 

 

多才な平賀源内、秋田に行った理由など解説されていました。  源内は殖産興業の思いがあり、時の老中・田沼意次も気に入っていたとされます。

直武と源内が会ったという伝承が角館にあるが、どうも怪しく、藩主・佐竹曙山が銅山開発の名目で、蘭画を吸収するため直武を派遣した説が有力。

田中先生、もう一つの説、源内はゲイで、若い直武を気に入った・・・・というのもチラッといわれました。  確かに調べると、源内は、武士や

僧侶などで一般的だった衆道でも有名で、高級男娼茶屋の江戸案内本もつくっている。 源内47歳、直武23歳・・・・ウーンあるかも

 

 

源内は画才はないものの、洋書のコレクションが凄く、その中の挿絵などから、直武は西洋画法を学んだ。

 

 

 この絵の円窓も西洋画にはないものとか。

 

 

 

次に、河野元昭氏。  解体新書の挿絵で、原著との比較を示し、銅版画の絵を木版画でつくった技術の高さを指摘。

 

 

 

 

 

 

この後は、司会者から各パネラーにQ&A 

 

 

 

 

 

最後に、メインヴィジュアルである直武の「不忍池図」について

田中先生「以前、NHKの日曜美術館で、この絵の鉢の土の見え方はおかしいという指摘があった」 ・・・ 確かに

高階先生「日本の絵画では、複数視点のものは珍しいことではない」 ・・・ウーンそういえば

絵も大きいものらしく、実物を見たくなります。

 

 

細かいですが、花の蕾部分に蟻が描かれています。

 

 

 

 

 

1時間半のプレミアムトークも終わりに。

 

 

 

 記念撮影。 参加者はプレスの方と、ブロガー、カメラをみるとわかります。 

 

 

ぐっと身近になった秋田蘭画、三人の先生方も満足の笑みでした。

 

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日本画など 横浜美術館コレクション展から

2015年10月21日 | アート 日本画

10月4日から2週間以上、ご無沙汰でした。

両親の回忌法要で、11,12日は滋賀県の彦根、米原に。

その後は、風邪でダウンして、またぶり返したりで、やっと落ち着いてきました。

横浜美術館コレクション展第Ⅱ期も、10月18日に終わりましたが、未紹介の作品をアップします。

 

カンディンスキー、色調や細かい形が面白い。

 

 

 

ここから日本画。  紫紅は横浜出身なんですね。 南画のおおらかなタッチ。

 

 

 

全体はおおらかですが、滲みやぼかし、グレーの輪郭線など、繊細な感覚だ。

 

 

 

 

観山は、この手の構図が多い。

 

 

 

このての人物の顔表現、弱法師もそうですが、私は好きではありません。

 

 

大観の水墨。 大家の悠然とした作品ですが

 

 

 

 この図の人物表現も、何か違和感があります。

 

 河岸の図は素晴らしい。

 

 

安田靫彦の「窓」。  私も窓辺が好きで、ブログにも昔、アップしました。

 

 

 

 

前田青邨の六歌仙

 

 

六人とも一癖ありそうな人物に描かれている。

 

 

出家姿の歌人もギラギラとしています。

 

 

今、気が付いたのですが、辻説法の下図の制作が1894年、本画が1892年制作 ?

  

 

 

 

中央部のアップ。

 

 

最後に会場光景を。

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東京国立博物館(2015.4.4) 国宝「花下遊楽図屏風」、俵屋宗達「桜山吹図屏風」

2015年04月06日 | アート 日本画

 トーハク本館の展示も、お花見に因んだ作品が多く展示されています。

 国宝「花下遊楽図屏風」は国宝室に展示され、多くの鑑賞客の眼を惹いていました。 以前にも紹介したことはあるのですが、もう一度撮ってみることにしました。

 

キャプションの解説者も変わり、内容も変わっています。

 

 

右側の若衆の粋な姿が、前回撮れていなかったのですが、今回、撮れました。(3年前に撮った内容は覚えていませんので、偶然、撮ったことになります)

 

 

 当時の若い女性の、アイドルだったことでしょう。

 

 

舞台裏の光景もきちんと描いています。

 

 

 

 眺める高貴な方になります。  扇子で口元を隠しているのは、笑う時に歯を見せぬようにする礼儀作法だった。

縁台下の駕籠かき従者の顔も面白い。 

 

 

もう一つ、素晴らしい屏風がありました。

 

 

 

 

 

 

部分図です。 色紙の流麗な文字は、光悦と言われればうなづけます。

 

 

 

 

 

 

山吹の表現も拡大すると、迫力があリます。

 

以上、正月の檜図屏風から素晴らしい屏風を連続して見れました。

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東京国立博物館(2014.4.25) 海北友松 

2014年06月28日 | アート 日本画

特別展「栄西と建仁寺」 (平成館 特別展示室   2014年3月25日 ~ 2014年5月18日)

を見に行った4月25日の本館での、海北友松の作品紹介です。

「栄西と建仁寺」 展では、宗達の「風神雷神図」とともに、友松の「雲竜図」や「竹林七賢図」が見応えがありましたが

本館でも、タイアップして友松の屏風図が2点、展示されていました。

 右隻

 左隻

 

 

構図や配色、描線すべてに巧い。  

 

 

 

女性の体形は柔らかく描写しているのですが、表情に色香がないのは、武門の出自が影響しているのでしょうか。

 

 

 山水画もいいですね。

 

 

 

木々の描き方が素晴らしい。

 

 

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東京富士美術館 「江戸絵画の神髄─秘蔵の若冲、蕭白、応挙、呉春の名品、初公開 !!─」その2

2014年06月14日 | アート 日本画

昨日に引き続き、江戸絵画の神髄  第Ⅱ章 革新の時 以降を紹介します。

 

 

曽我蕭白は、作品によって好き嫌いが分かれます。   今回は好きな作品が多かった。

 

 

部分拡大

 

 

 

 

 

 

部分拡大です。

 

 

 

この展示会のメインヴィジュアルで、伊藤若冲の「象図」  迫力十分。

 

 

 

 

 

もう少し拡大。

 

 

 

鈴木基一の風神雷神図は、端正で宗達や光琳とは一味違います。

 

 

展示ガラス面の反射で見ずらいところはご容赦を。

 

 

この展示室では、ガラスの反射がどうしても避けられませんでしたが、絵は良かった。

 

 

中央部の拡大です。

 

 

上部の拡大。

 

 

長澤芦雪も、端正な絵でいいですね。

 

 

この展示の最後は南画で、谷文晁の作品が素晴らしい。

 

 

 

 

上部の拡大です。

 

下部の拡大。

 

 

 

以上、多数の作品を紹介しました。  次は西洋画のコレクションを紹介します。

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東京富士美術館 「江戸絵画の神髄─秘蔵の若冲、蕭白、応挙、呉春の名品、初公開 !!─」

2014年06月12日 | アート 日本画

5月25日(日)に行った東京富士美術館の二つの所蔵品展を紹介します。

開館30周年記念で、素晴らしい内容でした。 まず初めに

江戸絵画の真髄 ─秘蔵の若冲、蕭白、応挙、呉春の名品、初公開 !!─

以下、公式サイトからの引用です。

本展では260年余にわたる江戸絵画の流れを、
Ⅰ章:開花の時̶江戸前期、
Ⅱ章:革新の時̶江戸中期、
Ⅲ章:爛熟の時̶江戸後期
の3章に分け、狩野派、琳派の名品をはじめ、伊藤若冲、曾我蕭白らのいわゆ
る奇想派による作品から、後に琳派を継承した鈴木其一による《風神雷神図襖》
にいたるまで、当館所蔵の多彩な江戸時代の絵画約70点を一堂に展覧いたします。
同時に、若冲、蕭白、円山応挙、呉春らの秘蔵の作品18点を一挙初公開いたします。
 

早速、撮影した写真を。  そうだ、東京富士美術館も撮影OKになっていました。 ダメもとで聞いたのですが撮影OKとのこと。
(西洋絵画の一部に撮影禁止がありましたが) 嬉しいですね。  国立博物館、近代美術館なども撮影OKですし、ひろがってくれれば有難い。
ただし、撮影マナーをしっかり守っていくことが大事ですね。

 

 

 

 

右隻の鳳凰の部分拡大です。  狩野派の力強い表現がよくわかります。

 

 

 

この展覧会は、端正な作品が多いとう印象で、この作品もそうです。  作品制作時から300年以上経っているのですが、古さは感じなかった。

《雪禽図屏風》
伝 狩野山雪(1590-1651)   江戸時代前期   171.4×37.8cm(各)  紙本墨画・屏風装(六曲一双)

 

 

左隻の部分拡大。  山雪の落款があるのですが、伝 狩野山雪となっているのは、真贋が明確になっていないのかな?

 

 

 伊年印の落款は俵屋宗達の工房のブランド。  琳派の装飾性の萌芽も感じます。

《春秋草花図屏風》  伊年 印  江戸時代前期  156.5×171.0cm  紙本金地着色・屏風装(二曲一隻)

 

 

会場光景です。  日曜日でしたが人は多くなく、ゆったり見れました。

 

 

 琳派の絵ということで、作者は不明。 背景の色合いで、渋い感じも受けますが、白い花が効いていて、渋さと華やぎが同居している感じ。

 

 

部分拡大

 

 

 今度は土佐派の絵。  源義仲と義経が対峙した宇治川合戦を描いています。

 

部分拡大。  従者の左手は写楽の浮世絵にでてくるものと同じだ。 土佐派にしては琳派風な構図に驚き。

 

 

 

 

 

屏風の部分ですが大原御幸

《平家物語図屏風(大原御幸・小督)》 
土佐派  江戸時代  153.0×359.0cm(各) 紙本金地着色・屏風装(六曲一双)

 

 

《源氏物語図屏風》
岩佐派  江戸時代前期  154.4×361.1cm(各)  紙本金地着色・屏風装(六曲一双)

 

源氏物語を題材にした屏風。  作者不詳ですが、傑作です。

《源氏物語図屏風》
作者不詳  江戸時代前期-中期  55.6×347.7cm(各)  紙本着色・屏風装(六曲一双)

 

右端の鳥舞いのところを拡大。

 

右隻。

 

部分拡大。

 

 

女御の表情なども丁寧に描かれています。

紹介する作品が多いので、今日はここまで。

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国立近代美術館(2013.11.16) 平福百穂

2013年11月19日 | アート 日本画

今回の近代武術館では、 所蔵作品展「MOMATコレクション」が充実した内容で楽しめました。

特集「何かがおこってる:1907-1945の軌跡」(2-10室)と銘打って、日露戦争から太平洋戦争の終結までの時代相を、美術作品等を通して透かしていきます。

その前に、ハイライトコーナ(美術館の精華ともいうべき作品の集中展示コーナ)から平福百穂の作品を紹介します。

以下、近代美術館のWebサイトから引用。

昨年、三笠宮崇仁親王殿下より寄贈を受けた平福百穂の《丹鶴青瀾》を初めてご紹介します。大正天皇御大婚25周年を奉祝し、衆議院から献上された作品で、となりに並べた《荒磯》より半年ほど制作年がさかのぼります。

青い海と波を琳派のように描き、躍動感のある作品です。  青の色調も好きです。

 

 

 

荒磯(ありそ)も同じような作品。  こちらは切手にもなっています。

平福百穂《荒磯(ありそ)》1926年

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国立博物館(2013.4.20)日本画 鏑木清方、伊東深水

2013年06月07日 | アート 日本画

トーハクの近代日本画で良かった鏑木清方、伊東深水の作品を紹介します。

まず、伊東深水の師匠である鏑木清方の作品から

  

 

黒髪を梳く女性の拡大を。  昔からの日本美人の描き方なのですが、少しリアルさを取り入れてくれたら、もっと好きになるのですが。

 

弟子の伊東深水の美人画「春」。

 

 

上半身部分を拡大。   深水の描き方には、リアルさも感じられ、この作品などは素晴らしいと思います。

 

同じく深水の「ひでり雨」。  女性の表情が素晴らしい。 妙にリアルさを感じます。

 

 

深水の風景画「近江八景」です。

 

 

近江八景  石山寺        錦絵 大正6年

 

 

近江八景  唐崎の松        錦絵 大正7年

 

近江八景  瀬田の唐橋        錦絵 大正7年

 

近江八景  比良        錦絵 大正6年

 

近江八景  堅田浮御堂(かたたうきみどう)        錦絵 大正7年

 

近江八景  粟津        錦絵 大正6年

 

近江八景  矢橋(やばせ)        錦絵 大正6年

風景画の雰囲気は、以前、紹介した同時代の川瀬巴水橋口五葉と共通したものを感じます。

近江はいいですね。  私も、琵琶湖の湖岸を自転車で一周しながら、撮影したいものです。

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