【間接民主主義に於ける代表者への信任の限界】

　「『代表制民主主義』とは間接民主主義とも言い、国民が代表者を選出し、政治を委託するという方法で行われる政治制度、または政治運営の方式。『委託』とは、自分の代わりを人や機関に頼み委ねること。」

　「委ねるとは、」一切を他人に任せることである。


【日本国憲法前文】日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて 自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲 法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民が これを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安 全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地 位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

✻国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、⇒「信託」とは、信頼して，政治等を任せる（自分の権限等を他の人に譲って，仕事を代行して貰う。）こと。

✻「国政」とは、国を治め、運用する行為。「行為」とは、個人がある意志・目的を持って意識的にする行い。
　以上から、代表制民主主義での代表者＝政治家の代表権の中身を考察する。

　憲法前文から、国民は、「正当に選挙された国会における代表者を通じて行動」するものであって、国民の代表者への信託は雅に「国を治め、運用する“行為”」なのであって、国政に持つ理念迄政治家の自由に任すことでは無い。詰まり、政治家は民主主義の原則に則って国民各位の最大公約数の意思を反映した方向に政治を運用すべきで、政治屋個人が持つ信条で政治を遣ることは国民主権を逸脱することに成るのだ。

　「正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」と言う文言から、公約を掲げて当選した以上、国民の総意を受け取ったことに成るかが問題と生る。現憲法の枠内での法律の改正等は其れこそ代表者達に全権委任で善いが、厳格に手続きが定められている憲法改正は別として、現憲法での解釈論が分かれいるような大きな政治的転換を公約に掲げてあったから信任を得たと済まされるものでは無い。

　何故なら、憲法解釈論が分かれて居るような事項については、そも々選挙の公約として掲げること自体可笑しいのだ。何故なら、解釈が紛糾するものをなし崩しにするならば、此れは憲法の文言を変えずに改正をしたと言う可笑しなことに成って終うからである。更に、民意の反映なき代表者の個人的思いを政策に反映することは代表制の意義自体を大きく逸脱し、赦されざるべきことである。