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【民事訴訟法 訴終了 当事者の行為による終了①】 ノート形式

2014-10-13 00:30:33 | 民事訴訟法
【当事者行為による訴訟の終了】


[訴訟の和解]


(法的性質)
訴訟上の和解
・一定内容の司法適合を前提として、
・裁判所での指定期日(多くは和解期日)で為される。
〇司法的行為説~和解調書への記載→司法上の和解の公証
〇訴訟行為説~訴訟終了効を目指す訴訟上の陳述と看做す。
〇両性説~私法行為側面と訴訟行為的側面を帯有し、一方の瑕疵は他方に当然に影響する。
〇両行為併存説~夫々の実体法、訴訟法の規律を別個に受ける。
✻訴訟行為説と併存説が有効。

(要件)
〇対象の処分性
 和解の対象となる権利関係→当事者が自由に処分出来るものに限られる。
・境界画定訴訟~所有権の範囲についての和解条項作成
・離婚訴訟~名文で訴訟上の和解を許容(人訴第37条参照)。協議離婚を基礎とする和解も可能。
〇和解の内容の適法性~公序良俗違反や法律での禁止事項は赦され無い。
〇一定の訴訟要件具備~最低限の許容行為の有効要件 ex.当事者の実在、訴訟能力保持等→訴えの利益、当時主的確は必要なし。

(手続)
〇手続一般
・裁判所は訴訟のどの段階で在っても、訴訟が継続している限り和解を試みる人が出来る。

(和解の試み) 第八十九条  裁判所は、訴訟がいかなる程度にあるかを問わず、和解を試み、又は受命裁判官若しくは受託裁判官に和解を試みさせることができる。

・争点整理手続き(準備口頭弁論等)
・弁論を再開する事無く口頭弁論終結後、
民事訴訟規則32 (和解のための処置・法第89条)
2 裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、相当と認めるときは、裁判所外において和解をすることができる。
 口頭弁論期日や和解期日等何れかの訴訟期日に両当事者が出席した上で、裁判所の意思解決を行うのが基本である。

(専門委員の関与) 第九十二条の二  
3  裁判所は、和解を試みるに当たり、必要があると認めるときは、当事者の同意を得て、決定で、当事者双方が立ち会うことができる和解を試みる期日において専門的な知見に基づく説明を聴くために専門委員を手続に関与させることができる。

(訴訟代理権の範囲) 第五十五条
2  訴訟代理人は、次に掲げる事項については、特別の委任を受けなければならない。
二  訴えの取下げ、和解、請求の放棄若しくは認諾又は第四十八条(第五十条第三項及び第五十一条において準用する場合を含む。)の規定による脱退

民事訴訟規則32 (和解のための処置・法第89条)
2 裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、和解のため、当事者本人又はその法定代理人の出頭を命ずることができる。
民事訴訟規則67 (口頭弁論調書の実質的記載事項・法第160条)  口頭弁論の調書には、弁論の要領を記載し、特に、次に掲げる事項を明確にしなければならない。
一 訴えの取下げ、和解、請求の放棄及び認諾並びに自白

〇和解条項案の書面による受諾制度の場合

(判決事項) 第二百四十六条  裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。
民事訴訟規則163 (和解条項案の書面による受諾・法第264条)法第264条(和解条項案の書面による受諾)の規定に基づき裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官(以下この章において「裁判所等」という。)が和解条項案を提示するときは、書面に記載してしなければならない。この書面には、同条に規定する効果を付記するものとする。

✻2  前項の場合において、和解条項案を受諾する旨の書面の提出があったときは、裁判所等は、その書面を提出した当事者の真意を確認しなければならない。

〇裁判所が定める和解条項制度の場合
・裁定和解

(裁判所等が定める和解条項) 第二百六十五条  裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、当事者の共同の申立てがあるときは、事件の解決のために適当な和解条項を定めることができる。
2  前項の申立ては、書面でしなければならない。この場合においては、その書面に同項の和解条項に服する旨を記載しなければならない。
3  第一項の規定による和解条項の定めは、口頭弁論等の期日における告知その他相当と認める方法による告知によってする。
4  当事者は、前項の告知前に限り、第一項の申立てを取り下げることができる。この場合においては、相手方の同意を得ることを要しない。
5  第三項の告知が当事者双方にされたときは、当事者間に和解が調ったものとみなす。

民事訴訟規則164 (裁判所等が定める和解条項・法第二百六十五案)  裁判所等は、法第265条(裁判所等が定める和解条項)第1項の規定により和解条項を定めようとするときは、当事者の意見を聴かなければならない。

→この場合訴訟期日外に和解が成立する場合もある(民調34の3などを参考にした規定)。

〇和解に代わる決定

(和解に代わる決定) 第二百七十五条の二  金銭の支払の請求を目的とする訴えについては、裁判所は、被告が口頭弁論において原告の主張した事実を争わず、その他何らの防御の方法をも提出しない場合において、被告の資力その他の事情を考慮して相当であると認めるときは、原告の意見を聴いて、第三項の期間の経過時から五年を超えない範囲内において、当該請求に係る金銭の支払について、その時期の定め若しくは分割払の定めをし、又はこれと併せて、その時期の定めに従い支払をしたとき、若しくはその分割払の定めによる期限の利益を次項の規定による定めにより失うことなく支払をしたときは訴え提起後の遅延損害金の支払義務を免除する旨の定めをして、当該請求に係る金銭の支払を命ずる決定をすることができる。
2  前項の分割払の定めをするときは、被告が支払を怠った場合における期限の利益の喪失についての定めをしなければならない。
3  第一項の決定に対しては、当事者は、その決定の告知を受けた日から二週間の不変期間内に、その決定をした裁判所に異議を申し立てることができる。
4  前項の期間内に異議の申立てがあったときは、第一項の決定は、その効力を失う。
5  第三項の期間内に異議の申立てがないときは、第一項の決定は、裁判上の和解と同一の効力を有する。


(効果)

民事訴訟規則67 (口頭弁論調書の実質的記載事項・法第160条)口頭弁論の調書には、弁論の要領を記載し、特に、次に掲げる事項を明確にしなければならない。
一 訴えの取下げ、和解、請求の放棄及び認諾並びに自白
民事訴訟規則163 (和解条項案の書面による受諾・法第264条)
3  法第264条の規定により当事者間に和解が調ったものとみなされたときは、裁判所書記官は、当該和解を調書に記載しなければならない。この場合において、裁判所書記官は、和解条項案を受諾する旨の書面を提出した当事者に対し、遅滞なく、和解が調ったものとみなされた旨を通知しなければならない。

(和解調書等の効力) 第二百六十七条  和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。
✻離婚する旨を和解調書に記載すれば、其の時点に直ちに離婚の効力が生じる。

〇和解によって訴訟は終了する。和解につき当事者の意思に瑕疵があるときは、和解の法的性質論とも絡むが、訴訟終了工が解消し、窮鼠が復活するか如何かの議論となる。

〇執行力

民事執行法(債務名義) 第二十二条  強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
七  確定判決と同一の効力を有するもの(第三号に掲げる裁判を除く。)

〇既判力
 判例・実務は、所謂制限的既判力説の立場である~訴訟上の和解にも既判力が生じるが、実体法の瑕疵がある場合は既判力が生じ無いと視る(既判力を認め無いと同じだとの批判がある。)
✻再審に準ずる自由が無ければ此れを争うことが出来無いとするのが生じ無いとするのが、既判力肯定説である。

〇形成力
 和解離婚する旨の形成条項については形成力が認められる。戸籍へは報告届出となる。


(訴訟法上の和解の瑕疵を争う方法)

〇調書上の記載間違いについては次を類推

(更正決定) 第二百五十七条  判決に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。

2  更正決定に対しては、即時抗告をすることができる。ただし、判決に対し適法な控訴があったときは、この限りでない。
(更正決定) 第二百五十七条  判決に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。
2  更正決定に対しては、即時抗告をすることができる。ただし、判決に対し適法な控訴があったときは、この限りでない。

〇和解に無効・取消の原因がある場合
 旧訴について期日指定の申し立てをすべきか、和解確認訴訟の提起をすべきか、請求異議の訴え(民執35条)によるべきか、実体法上の権利関係の存否確認訴訟の別訴によるべきか、あるいは其れ等の何れでも良いか争いがある。

(請求異議の訴え) 第三十五条  債務名義(第二十二条第二号、第三号の二又は第四号に掲げる債務名義で確定前のものを除く。以下この項において同じ。)に係る請求権の存在又は内容について異議のある債務者は、その債務名義による強制執行の不許を求めるために、請求異議の訴えを提起することができる。裁判以外の債務名義の成立について異議のある債務者も、同様とする。
2  確定判決についての異議の事由は、口頭弁論の終結後に生じたものに限る。
3  第三十三条第二項及び前条第二項の規定は、第一項の訴えについて準用する。



〇和解が解除された場合の扱い
 和解契約の解除によっては一旦終了した訴訟は復活せず、新規提起は二重訴訟に抵触し無い(最判昭和43年2月15日民集22・2・184〔174〕)。
 「確定判決と同一の効力」を有する訴訟上の和解そのものを解釈する訳では無く、其の基礎と成った和解契約を解除した場合には、旧訴訟が復活するとして期日指定の申し立てをすべきとの見解や新訴を提起すべきとする立場などがある。
 判例は特に救済の方法を特定して居無い。
✻近時は複数の救済方法の競合を認める判例の立場を支持する見解が最も有力である。
✻任意的訴訟担当とされる選定当事者が和解できるかと言う問題について、判例は特別授権を要する事無く和解することが出来るとした(最判昭和43年8月27日判時534・48〔175〕)。
続く

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