〔訴えの取下げ〕
(訴えの取下げの効果) 第二百六十二条 訴訟は、訴えの取下げがあった部分については、初めから係属していなかったものとみなす。
2 本案について終局判決があった後に訴えを取り下げた者は、同一の訴えを提起することができない。
(訴えの取下げの擬制) 第二百六十三条 当事者双方が、口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷若しくは退席をした場合において、一月以内に期日指定の申立てをしないときは、訴えの取下げがあったものとみなす。当事者双方が、連続して二回、口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷若しくは退席をしたときも、同様とする。
(控訴の取下げ) 第二百九十二条 控訴は、控訴審の終局判決があるまで、取り下げることができる。
2 第二百六十一条第三項、第二百六十二条第一項及び第二百六十三条の規定は、控訴の取下げについて準用する。
〔法的性質〕
取り下げは、与効的訴訟行為(訴訟終了行為を狙った原告の訴訟行為)の一種
「取り下げ契約」の解釈
①原告が被告に私的合意に関する義務を負う。
訴訟継続すると、権利保護の利益=訴の利益を欠く→訴えが不適法却下(最判昭和44年10月17日民集23・10・1825〔125〕)。
②訴訟契約として訴訟終了の効力を生じる。~近時有力
訴訟継続すると、訴訟終了宣言の判決をすべき。
〔要件〕
〇原告の訴えと取下行為
(訴えの取下げ) 第二百六十一条 訴えは、判決が確定するまで、その全部又は一部を取り下げることができる。
2 訴えの取下げは、相手方が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続において申述をし、又は口頭弁論をした後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。ただし、本訴の取下げがあった場合における反訴の取下げについては、この限りでない。
3 訴えの取下げは、書面でしなければならない。ただし、口頭弁論、弁論準備手続又は和解の期日(以下この章において「口頭弁論等の期日」という。)においては、口頭ですることを妨げない。
4 第二項本文の場合において、訴えの取下げが書面でされたときはその書面を、訴えの取下げが口頭弁論等の期日において口頭でされたとき(相手方がその期日に出頭したときを除く。)はその期日の調書の謄本を相手方に送達しなければならない。
5 訴えの取下げの書面の送達を受けた日から二週間以内に相手方が異議を述べないときは、訴えの取下げに同意したものとみなす。訴えの取下げが口頭弁論等の期日において口頭でされた場合において、相手方がその期日に出頭したときは訴えの取下げがあった日から、相手方がその期日に出頭しなかったときは前項の謄本の送達があった日から二週間以内に相手方が異議を述べないときも、同様とする。
✻終局判決後の取下には,再審禁止効が生じる。
〇相手方の同意
第二百六十一条 第2項参照。
一旦、同意を拒絶すれば、訴えの取下げは無効に確定し、改めて同意しても先の取下げの効力は発生し無い(最判昭和37年4月6日民集16.4・684〔176〕)。
〇訴訟能力・特別授権
「訴訟上の和解」と仝。
訴訟無能力者や無権代理人などが勝手に提起した訴訟に在っては、権限者による追認がある迄は自等訴えを取り下げることが出来る。
〇訴えの一部取下げ(=請求の減縮)
一部請求を容認する立場では、「訴えの一部取下げ」と看做される。数個の請求のうちの何れかを取り下げる場合とは峻別される。
〔手続〕
(訴えの取下げ) 第二百六十一条
3 訴えの取下げは、書面でしなければならない。ただし、口頭弁論、弁論準備手続又は和解の期日(以下この章において「口頭弁論等の期日」という。)においては、口頭ですることを妨げない。
4 第二項本文の場合において、訴えの取下げが書面でされたときはその書面を、訴えの取下げが口頭弁論等の期日において口頭でされたとき(相手方がその期日に出頭したときを除く。)はその期日の調書の謄本を相手方に送達しなければならない。
5 訴えの取下げの書面の送達を受けた日から二週間以内に相手方が異議を述べないときは、訴えの取下げに同意したものとみなす。訴えの取下げが口頭弁論等の期日において口頭でされた場合において、相手方がその期日に出頭したときは訴えの取下げがあった日から、相手方がその期日に出頭しなかったときは前項の謄本の送達があった日から二週間以内に相手方が異議を述べないときも、同様とする。
✻同意擬制による訴えの取下げである(訴え取下げ擬制とは異なる)。
〔取下げが無効である場合〕
(再審の事由) 第三百三十八条 次に掲げる事由がある場合には、確定した終局判決に対し、再審の訴えをもって、不服を申し立てることができる。ただし、当事者が控訴若しくは上告によりその事由を主張したとき、又はこれを知りながら主張しなかったときは、この限りでない。
五 刑事上罰すべき他人の行為により、自白をするに至ったこと又は判決に影響を及ぼすべき攻撃若しくは防御の方法を提出することを妨げられたこと。
→このような場合は訴の取下げは当然無効である(最判昭和46年6月25日民集25・4・640〔128〕)。
(再審の事由) 第三百三十八条
二 法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
→有罪判決の確定の要件は満たされ無くともよい。期日指定の申し立てをして、旧手続きを続行することに成る。勿論、
別訴の提起も赦される→二重訴訟とはなら無い。
〔効果〕
〇訴訟継続の遡及的消滅
(訴えの取下げの効果) 第二百六十二条 訴訟は、訴えの取下げがあった部分については、初めから係属していなかったものとみなす。
(裁判上の請求) 第百四十九条 裁判上の請求は、訴えの却下又は取下げの場合には、時効の中断の効力を生じない。
(催告) 第百五十三条 催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法 若しくは家事事件手続法 による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。
✻訴訟継続中に間断無く催告が為されたものととの効力くらいは認められよう。
(二重訴訟で先行訴訟を取下げた場合の時効中断について積極的に解する→最判昭和50年11月28日民集29・10・1797〔177〕)。
〇再訴禁止効
✻訴えの取下げ後に、同一請求につき当事者に対して、二打提訴することは原則として赦される。
(訴えの取下げの効果) 第二百六十二条
2 本案について終局判決があった後に訴えを取り下げた者は、同一の訴えを提起することができない。
→「再訴乱用禁止説」実質的な勝訴原告が取下げる場合と敗訴原告が取下げる場合とでは自ずと再審の意味も違ってくる。
✻終局判決→ 請求認容・請求棄却の各判決を言う。訴え却下判決は除く。
訴え取下げ後に、新たな事実が出て来たときは、判例は再審も許している(最判昭和52年7月19日民集31・4・693〔178〕)。
✻請求の棄却が赦され無い場合に、再訴禁止効を認められるか?
多数説~実質的には放棄を赦す等しいことから否定。
判例~肯定(最判昭和43年12月20日判時546・69〔216〕)。
続く
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