〇確定判決の効力
「形式的確定力」~終局判決が、最早当事者にとっても争う余地の無い状態となった場合
「判決の確定」~「形式的確定力」の状況。
「確定判決」~「判決の確定」をする判決。
①「既判力」(基準時と遮断効)~確定判決の本来的効力である。
・「判決の確定」⇒事実審の口頭弁論終結時で判決の基準時乃至は標準時点と成り、法律関係について裁判所の判断が最早争われなくなる。~判決の時限的限界が生じる。
・後訴裁判所は、其の消極的作用として、既判力を覆すような攻撃防御方法を取り上げることが出来無い。
「遮断効」~当事者の立場からすれば、既判力を覆すような攻撃防御方を最早提出することが出来無い(最判平成9年3月14日判時1600・89〔180〕)。
(例)貸し金債権不存在確認訴訟で敗訴した被告
其の後提起された相手方からの貸金返還請求訴訟で貸し金の不存在を再び争うことは出来無い。
・積極的作用として、既判力のある判断内容を前提に後訴について裁判しなければならない。
通説は、翻案の内容について後訴裁判所の判断を拘束するものと見る。反対説は、一事不再理の現われとして訴えの却下を判決すべきとする。
・前訴判決の既判力が控訴に及ぶ関係~前訴と後訴の請求内容が同一関係・先決関係・矛盾関係にある場合に限られる。
「同一関係」~前後の訴訟で訴訟物が同一(同一の土地の所有権確認請求)
「先決関係」~前訴の訴訟物が後訴の訴訟物の前提と成る関係にある場合。
(例)前訴が土地の所有権確認請求で、後訴が土地所有権に基づく建物収去土地明渡請求訴訟のような場合。
「矛盾関係」~前訴敗訴した被告が、今度は原告となって自らの所有権の確認の訴えを提起すると言う場合である。
前訴と後訴が上にかがげた三つの関係に無い場合、前訴判決は後訴に作用せず、後訴提起自体が権利濫用と評価するときに限って、却下判決がなされる。
・既判力の双面性~既判力が当事者にとって有利にも不利にも作用すること。
(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)民法第七百十七条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
(例)建物所有権確認訴訟で敗訴した被告が。同建物の瑕疵により損害を生じ、損害賠償請求訴訟を提起した場合、被告は最早建物の所有権の帰属を巡って争うことは出来無い。
(外国裁判所の確定判決の効力)第百十八条 外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。
一 法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。
二 敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。
三 判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。
四 相互の保証があること。
(例)代理母による実親子関係の成立を認める外国裁判は、公序に反する(最決平成19年3月23日民集61・2・619)。
〇一部請求後の残額請求
此れを残部請求と言う。
・数量的に可分な債権の一部のみを請求することが実務で認められる。
(例)損害賠償請求訴訟
一部請求が認められ判決が確定し既判力が生じた場合、残部についての請求は認められるか?
・既判力の「双面性」から赦され無いという見解
・一部を区別する明確な法律上の標識が有る場合には赦されるという見解
・処分権主義を背景に基本的には権利の分割行使は赦されるという見解
(判例)
・一部請求を明示した場合には、残額請求は既判力に触れ無い(最判昭和37年8月10日民集16・8・1720〔181〕、最判昭和20年7月10日判時2020・71)。
・明示が無い場合は控訴は遮断される(最判昭和32年6月7日民集11・6・948〔182〕)。
・黙示の場合も含めて、被告が其の訴訟で通常争われるべきとの認識を持つだろうとされる場合には、残額請求は被告の信頼を著しく損なうことも無いという見解⇒予期し得無い後遺症による損害賠償:民事調停が成立した後に被害者が死亡した場合(最判昭和43年4月11日民集22・4・862〔183〕)。
・請求の著しい細分化など、権利濫用と認められれば、不適法な訴えとして却下される。
(最判平成10年6月10日民集52・4・1147〔184〕、最判平成10年6月30日民集52・4・1225〔185〕)。
〇執行力
給付判決が確定した場合及び未確定であっても仮執行宣言が付けられた場合に生ずる効力で、其処に示された一定の給付内容を民事執行手続きによって強制的に実現することが出来る(狭義の執行力)。
・「債務名義」~執行証書や和解調書等⇒執行機関は此れに基づいて強制執行の手続きを行う(債務名義は執行文の付与を受けておかねばなら無い)。
・広義の執行力~強制執行以外の方法で判決の本来意図した常態を実現出来る場合をいう。
(例)所有権移転登記請求訴訟~登記への反映は、狭義の執行力に基づくものでは無い。
不動産登記法(判決による登記等)第六十三条 第六十条、第六十五条又は第八十九条第一項(同条第二項(第九十五条第二項において準用する場合を含む。)及び第九十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、これらの規定により申請を共同してしなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は、当該申請を共同してしなければならない者の他方が単独で申請することができる。
2 相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。
戸籍法第七十一条 民法第八百十一条第二項の規定によつて協議上の離縁をする場合には、届出は、その協議をする者がこれをしなければならない。
戸籍法第六十三条 認知の裁判が確定したときは、訴を提起した者は、裁判が確定した日から十日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければならない。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければならない。
2 訴えを提起した者が前項の規定による届出をしないときは、その相手方は、裁判の謄本を添付して、認知の裁判が確定した旨を届け出ることができる。この場合には、同項後段の規定を準用する。
〇形成力
判決の内容に従って法律関係の変動を生じしめる効力。
(例)離婚訴訟 : 離婚を認容する確定判決→婚姻関係の解消
・形成力は形成判決が確定することを前提として生じるのが基本である(判決確定前の先取り→最判昭和40年3月26日民集19・2・508〔186〕)。
・対世効~形成力が広く第三者にも及ぶ効力。此の性質については理解は分かれるる。
*形成判決→既判力も認められる。判決の基準時に於ける形成要件の存在が既判力によって確定される。
・相手方によって離婚の確定判決が不当に為されたとする損害賠償請求は前訴である離婚訴訟の確定判決の既判力を受ける⇒確定判決の騙取が行われた場合、再審の提起とは独立に、不法行為に基づく損害賠償の請求が可能と解される(最判昭和44年7月8日民集23・8・1407〔187〕)。
✻恵勢力は法律関係の変動を徹底すべき場合には、其の効力は遡及する(認知裁判)。⇔将来に向けて効力を生ず(離婚判決等)。
続く
「形式的確定力」~終局判決が、最早当事者にとっても争う余地の無い状態となった場合
「判決の確定」~「形式的確定力」の状況。
「確定判決」~「判決の確定」をする判決。
①「既判力」(基準時と遮断効)~確定判決の本来的効力である。
・「判決の確定」⇒事実審の口頭弁論終結時で判決の基準時乃至は標準時点と成り、法律関係について裁判所の判断が最早争われなくなる。~判決の時限的限界が生じる。
・後訴裁判所は、其の消極的作用として、既判力を覆すような攻撃防御方法を取り上げることが出来無い。
「遮断効」~当事者の立場からすれば、既判力を覆すような攻撃防御方を最早提出することが出来無い(最判平成9年3月14日判時1600・89〔180〕)。
(例)貸し金債権不存在確認訴訟で敗訴した被告
其の後提起された相手方からの貸金返還請求訴訟で貸し金の不存在を再び争うことは出来無い。
・積極的作用として、既判力のある判断内容を前提に後訴について裁判しなければならない。
通説は、翻案の内容について後訴裁判所の判断を拘束するものと見る。反対説は、一事不再理の現われとして訴えの却下を判決すべきとする。
・前訴判決の既判力が控訴に及ぶ関係~前訴と後訴の請求内容が同一関係・先決関係・矛盾関係にある場合に限られる。
「同一関係」~前後の訴訟で訴訟物が同一(同一の土地の所有権確認請求)
「先決関係」~前訴の訴訟物が後訴の訴訟物の前提と成る関係にある場合。
(例)前訴が土地の所有権確認請求で、後訴が土地所有権に基づく建物収去土地明渡請求訴訟のような場合。
「矛盾関係」~前訴敗訴した被告が、今度は原告となって自らの所有権の確認の訴えを提起すると言う場合である。
前訴と後訴が上にかがげた三つの関係に無い場合、前訴判決は後訴に作用せず、後訴提起自体が権利濫用と評価するときに限って、却下判決がなされる。
・既判力の双面性~既判力が当事者にとって有利にも不利にも作用すること。
(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)民法第七百十七条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
(例)建物所有権確認訴訟で敗訴した被告が。同建物の瑕疵により損害を生じ、損害賠償請求訴訟を提起した場合、被告は最早建物の所有権の帰属を巡って争うことは出来無い。
(外国裁判所の確定判決の効力)第百十八条 外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。
一 法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。
二 敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。
三 判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。
四 相互の保証があること。
(例)代理母による実親子関係の成立を認める外国裁判は、公序に反する(最決平成19年3月23日民集61・2・619)。
〇一部請求後の残額請求
此れを残部請求と言う。
・数量的に可分な債権の一部のみを請求することが実務で認められる。
(例)損害賠償請求訴訟
一部請求が認められ判決が確定し既判力が生じた場合、残部についての請求は認められるか?
・既判力の「双面性」から赦され無いという見解
・一部を区別する明確な法律上の標識が有る場合には赦されるという見解
・処分権主義を背景に基本的には権利の分割行使は赦されるという見解
(判例)
・一部請求を明示した場合には、残額請求は既判力に触れ無い(最判昭和37年8月10日民集16・8・1720〔181〕、最判昭和20年7月10日判時2020・71)。
・明示が無い場合は控訴は遮断される(最判昭和32年6月7日民集11・6・948〔182〕)。
・黙示の場合も含めて、被告が其の訴訟で通常争われるべきとの認識を持つだろうとされる場合には、残額請求は被告の信頼を著しく損なうことも無いという見解⇒予期し得無い後遺症による損害賠償:民事調停が成立した後に被害者が死亡した場合(最判昭和43年4月11日民集22・4・862〔183〕)。
・請求の著しい細分化など、権利濫用と認められれば、不適法な訴えとして却下される。
(最判平成10年6月10日民集52・4・1147〔184〕、最判平成10年6月30日民集52・4・1225〔185〕)。
〇執行力
給付判決が確定した場合及び未確定であっても仮執行宣言が付けられた場合に生ずる効力で、其処に示された一定の給付内容を民事執行手続きによって強制的に実現することが出来る(狭義の執行力)。
・「債務名義」~執行証書や和解調書等⇒執行機関は此れに基づいて強制執行の手続きを行う(債務名義は執行文の付与を受けておかねばなら無い)。
・広義の執行力~強制執行以外の方法で判決の本来意図した常態を実現出来る場合をいう。
(例)所有権移転登記請求訴訟~登記への反映は、狭義の執行力に基づくものでは無い。
不動産登記法(判決による登記等)第六十三条 第六十条、第六十五条又は第八十九条第一項(同条第二項(第九十五条第二項において準用する場合を含む。)及び第九十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、これらの規定により申請を共同してしなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は、当該申請を共同してしなければならない者の他方が単独で申請することができる。
2 相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。
戸籍法第七十一条 民法第八百十一条第二項の規定によつて協議上の離縁をする場合には、届出は、その協議をする者がこれをしなければならない。
戸籍法第六十三条 認知の裁判が確定したときは、訴を提起した者は、裁判が確定した日から十日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければならない。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければならない。
2 訴えを提起した者が前項の規定による届出をしないときは、その相手方は、裁判の謄本を添付して、認知の裁判が確定した旨を届け出ることができる。この場合には、同項後段の規定を準用する。
〇形成力
判決の内容に従って法律関係の変動を生じしめる効力。
(例)離婚訴訟 : 離婚を認容する確定判決→婚姻関係の解消
・形成力は形成判決が確定することを前提として生じるのが基本である(判決確定前の先取り→最判昭和40年3月26日民集19・2・508〔186〕)。
・対世効~形成力が広く第三者にも及ぶ効力。此の性質については理解は分かれるる。
*形成判決→既判力も認められる。判決の基準時に於ける形成要件の存在が既判力によって確定される。
・相手方によって離婚の確定判決が不当に為されたとする損害賠償請求は前訴である離婚訴訟の確定判決の既判力を受ける⇒確定判決の騙取が行われた場合、再審の提起とは独立に、不法行為に基づく損害賠償の請求が可能と解される(最判昭和44年7月8日民集23・8・1407〔187〕)。
✻恵勢力は法律関係の変動を徹底すべき場合には、其の効力は遡及する(認知裁判)。⇔将来に向けて効力を生ず(離婚判決等)。
続く
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