「賃金」とは,労働者が労働力を提供して他人に財産・労力等を提供した報酬として受け取る財産上の利益として支払われる金銭。近代経済学では,生産物や資金の価格と同様に,市場の競争原理 (需要,供給の原理) ,或いは労働力をもう1単位だけ増加することに依り可能に成る生産物の量の増加 に依って賃金の決定が説明されて居る。一方マルクス経済学では,賃金は労働力という特殊な商品の価格として捉えられ,労働力の生産した消費財や生産財を消費乃至使用することに依って生産過程で消耗した労働力や生産手段を更新し,再び新たな生産を行うという過程を継続的に繰返して人は生きて居るが,此の消費と生産の反復を再生産に必要な生活資料の価値によって決るとされる。賃金水準の決定に関しては,賃金基金説,生存費説,限界生産力説などの諸学説がある。
✱ 「賃金基金説」: 賃金として支払われる資本部分 (基金) は,富の蓄積と生産力の向上に依って増大するものの,一定の社会状態に於いては一定額であり,賃金とは其の経済活動の財産的基礎と成る資金を全労働者人口で割った額に等しいという説。
✱ 「賃金水準」: 国民経済学的には、「一つの国,産業,企業,事業所或いは地域に於ける賃金の支払総額を,其の単位に所属する総労働者数で割ったもの」をいう。特定のカテゴリーに属する労働者の平均賃金額を示す。たとえば一国の賃金水準は,その国の生活水準を示しうる。叉大企業と中小企業の賃金水準の差が多くの労働者を大企業に引き付ける原因と成る。或いは職種間の平均賃金水準の差が職種間の「労働移動」を齎す。更に賃金水準の上昇に伴う費用を価格に転化したとすれば,「インフレーション」を引き起こすことにも成る。
✱ 「生存費説」: 労働の自然価格 (賃金) は労働者をして平均的に生活し,また増減なくその種族を永続させるのに必要な価格であって,それは労働者とその家族を養うに必要な食物,必需品,便宜品およびある程度の慣習的娯楽品の合計によって決るとした。なぜ賃金がこの生存費の水準に決るかは,T.R.マルサスの人口法則を導入することによって説明した。
✱ マルサスの「人口法則」: 人間社会の人為的法則として説明される。即ち巨大な生産手段を独占的に所有する資本家が無産の労働者に生産を強制し,其の剰余労働を搾取する資本主義社会に於いて,生産の目的は搾取対象である労働者の剰余労働量の増大,詰まり資本蓄積の増大にある。従って資本家は労働者への支払い部分を減少させ,自らの収得部分を増大させるべく資本の有機的構成を絶えず高度化するよう努める。此の為労働者の過剰が必然的に累進化する。こうした労働者の過剰に表わされる過剰人口(一定地域の経済的人口収容力、詰まり適度な人口に対して人口が多過ぎる状態)の存在は,資本量の増大に対する労働者の相対的過剰 (相対的過剰人口) であり,資本家の有機的構成の高度化を通した資本蓄積に依って人為的に形成されたものに他なら無い。換言すれば其れは資本主義社会に特有な人口法則であるとする。
✱ 「限界生産力説」: 労働,土地,資本などの生産要素を使用して生産物を生産するとき,他の要素の量を一定にして,ある生産要素をもう1単位だけ増加することにより可能になる生産物の増加量をその生産要素の限界生産力と呼ぶ。
労働者が使用者に対し一定の対価を得て労務を提供することを約する契約を「労働契約」といい、民法の雇用契約が此れにあたるが,近代的労働関係に於いては,「使用者の組織した経営機構のなかに労働者が集団的に組込まれ,其の指揮命令の下に一定期間継続的に労働に従事する点が特色」であり,此の様な労働関係に於ける労働者を保護する為に生れた新しい労働法上の契約概念である。
企業には、経営層がおり、経営者層が基本経営方針を決めてものに従って管理者層が労働者を指揮監督する労働者が実務を行うのが企業の経営形態であることに異論を挟む者は居無いだろう。安倍晋三が提唱して居る「裁量労働制」は、上述した企業の組織論からすれば、雅に管理職の職務と労働者の業務を合体させて雇用関係を結ぶものであり、個別的労働者の実績の評価として賃金で反映させることは、一部に適用するものであっても、其の影響は単に労働の概念の変革に留まらず国民経済全般に与える影響は擋建設的なものとは到底言え無いものと看做される。況してや、此れは「依頼人と日限・報酬等を定めて仕事を引き受ける」正しく請負契約である。安倍晋三は、此の世の基本概念も知らずに政策を打ち出すのか?
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