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天道の真髄は如何に?

【失業とインフレーションの解析③】

2018-02-09 15:17:46 | マクロ経済の基礎の基礎

【失業とインフレーションの解析②】からの続き

 賃金とインフレーションの関係のジンマを「賃金の上昇を生産性の上昇に一致させる」とする一つの解決策が提案された。何処かで聞いた様な考え方である。此の考え方の背景には、「賃金が生産性に結び付けられる」成らば、「賃金の上昇は物価の上昇は必要とし無い」とすることが出来るので「コストプッシュ・インフレーションは発生し無いだろう」ということがある。

 「賃金の上昇=生産性の上昇」☜ 「生産性の変化」を如何に測定出来るか?「労働の生産性を測定する方法」☜ 生産性=産出高/労働者数⇒ 生産性の定義は、「一人当たりの労働者の平均産出高」
 生産性指数が上昇する二つの異なった理由として、
一、「労働は一定量の資本と他の資源を以て、より多くのものを生産出来る」という意味で、「より生産的に成る可能性を持つ」。
二、「一人当たりの産出高は単に労働者に代えて機械をすることで増加する可能性を持つ」。
 後者の状態は例えば或る企業がオートメ化した場合に発生する⇒同一の生産高が以前より少ない直接労働によって齎される⇒労働者自体の生産性が上がったことには成ら無い。

 求めるべきは、「賃金と結び付けられる様な労働生産の変化の形」を決定しなければ成らないと言ことである⇒👆の第二の可能性は排斥されるべき⇒以前大勢の労働者を抱えていた生産現場にオートメ化が導入されて、以前と変わら無い産出高をたった一人の労働者で賄える様に成っても、其の労働者の賃金を以前の労働者全員の賃金に出来様か⇒如何やら賃金上昇に意味を持つのは👆の第一の方法か。

 「労働固有の生産力の改善に基づく生産性変化」は「生産性に結び付ける」ことを正当化する様に思えるかもしれないが、此の様な生産性変化の大きさを推測することは不可能とは言え無いが困難なことである。
 企業が優れた新しい資本を追加した場合、労働者一人当たりの産出高の増加の内何れ程が此の要因に依るものか、何れだけ労働固有の生産性に依るものかを如何にして決められるか👈の様な疑問が解決出来たとしても、此の解決が賃金の上昇と繋がる関連性には常識論として疑問である。

 「自家消費農園の例」から考えて見る。彼が同じ生産資源で生産性を増したならその貢献度総て彼の労働手段の改善が総て生産性を増したことに成り、其の農家は、より豊かな農業生産物に依ってより豊かな食生活を享受出来る。
 然し、自家消費農園に当嵌まることが、複雑な経済社会に其の儘真実だとは言え無い。専業農家等の農業生産物は市場で現金化される。此の現金化に依る所得の在り方で生活水準の在り方に焦点に当てれば、彼がより生産性を上げたとしても、彼の所得は必ずしも増加し無いので彼の生活水準を上げることには成らない。一人の農夫の生産性を上昇させた方法は彼が独占して無い限り、他の農民も又同じ様に生産性を増すことに成る⇒産出高の増加⇒需要が非弾力的であれば⇒総ての農民の所得は減少する⇒生産性の増加に依る利益は社会の他の分野へと転じる☜ 生産農民の減少がある場合のみ、残った農民の所得は上がり、生活水準も上昇することに成る。

 現実には農業生産高が上昇したとき生産農民が減少し無くとも、政府の生産過多に対する補助等様々な農業政策に依って農業生産者は所得の維持増加が保障され、農業生産性の変化に一致した所得の増加も見込まれることは、人々が知る処である。もし、此の政策が無く成ったならば、農産物の生産性の増加による全農産物の問題は全社会的な大問題と成るだろう。

 「労働賃金が生産性に比例して与えられるべきである」との考えに一致すれば、生産性に関係無く賃金を与えられて居る職業分野では賃金を変えるべきで無いということに成る。例えば、教育や医療や理髪の場合は、質が低下し無いで生産性の変化が可能か如何かは明確とは成ら無い。此れ等の職種の就業者には実質所得の増加の配分を原則的に共有出来無ければ、此れ等の職業分野の職に就く者は居無く成る。「市場経済では、生産要素が其れに固有の生産性の変化に直接比例して賃金を受け取る理由が存在し無いだけで無く、何故其の様なことが起こら無いのかの十分な理由も存在する」のだ。

 処で、「賃金の上昇が生産性の変化と一致すべきであるという説」には他の意味も存在する☜「賃金は総て労働の生産性一般の上昇率で上昇すべきである」。
 賃金率に限定を加えるのは、国民所得NNPの総雇用に対する比率の変化である👈労働一単位当たり産出額が経済全体として4%/年の率で増加するならば、其の場合は賃金は総て年4%上昇すべきであるとする⇒理髪師、教師、医師も譬え彼等の生産性が上昇し無くとも、所得の増加の分け前に与ることが出来る👈此れがコストプッシュ・インフレーションを阻止し得る政策であると多くの人が信じて居る。

 👆の原則に厳格に従うならば、賃金は相対的に変化し無いだろう。
 機械工が掃除人より25%多く収入を得て居るならば、此の状態は永久的なものと成るだろう。
 相対賃金は種々の職業分野の労働の相対的な希少性を反映し、其れは円滑に機能して居る経済では変化する筈である。特殊な職種に就く特定種類の労働が相対的に希少と成るときは、其の労働の賃金の上昇率は速く成る筈である。

 👆に述べた原則が合理的なもので在ったとしも、組合が其れを承認することは極めて難しい。より低い賃金を受けて居る人々は速やかに平均賃金に追い付くべきだ」と感じて居る⇒彼等自身の現行賃金を「不公平である」と考えるならば、「賃金が常に同一の相対水準に留まるべきである」という考えを受け入れることは無い。彼等が組合を結成して居るならば、組合は生産性の平均上昇よりも高い賃金引き上げの為に闘争することに成る。
 此の様な賃金の引上げは、賃金が当初相対的に高過ぎる水準に決定され、従って低い率で増加する可能性を持つならば、インフレーションを引き起こさ無い可能性が出て来る。然し、不当に高い賃金を現在得ている労働層が存在するならば、彼等が強力な組合を結成する可能性は大きいのだ。強力な契約上の地位を占める組合が存在し、全国水準よりも低い賃上げを要求する組合は先ず無い。其れ等の組合長が全国平均に等しい賃上げの目標を強く承認し様としても、其れ等の者は尤過激な組合指導者に速やかに取って代わられる危険が存在する。


つづく

 ※ 本投稿文中の綴りや語句の使い方や理論分析の誤りは、適当に解釈して貰うか、コメント欄で指摘して頂きたい。


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