【失業とインフレーションの解析③】からの続き
纏 め
① 今迄、「完全雇用」と「物価安定」は両立するかの様に話を進めて来たが、現実の社会経済では何方かを達成する為には他の何方かを犠牲にしなければ成らないということである。
② 摩擦的失業は動的経済、詰まり経済の変化に依って起きると考えられて居る。変化の程度は一定のもので無いので、摩擦的失業が労働力の一定率を占めるという予測が出来る理由は存在し無い。非摩擦手的失業の大きさは失業統計から決定することが出来無いので、総需要の増加が望ましいか、或いは減少が望ましいかについては意見が分かれる処である。完全雇用は何時其れが存在するのかを述べることは出来無いので達成出来無いものなのかも知れない。
③ 米国経済の新たな一つの問題、コストプッシュ・インフレーションに米国は悩まされてる。失業と生産能力の過剰が存在するにも拘らず賃金と物価が減少しなければ、其れ等は同じ状況の下でも存在することに成るだろう。
④ コストプッシュ・インフレーションの可能性を認めたとしても、インフレーションが超過需要によって発生せしめられたか、其れともコストプッシュによって発生せしめられたものか判定することは困難である。コストプッシュ・インフレーションは失業率が3乃至4%を超えれば存在するとしたものもあるが、摩擦的失業の程度が、此の範囲を超えることも在るだろう。賃金と物価の何方が先に上昇したかも此れの判定方法の一つであろうか?其処では賃金の上昇が先であるとする。財及びサービスに対する需要の増加は、企業が更に積極的に労働の価格を競り上げる時、物価が上昇する前に賃金上昇に導く可能性がある⇒物価は賃金が上昇後に初めて上昇するかもしれない⇒賃金の上昇が物価の上昇に先行する様に見えるだけで、コストプッシュ・インフレーションが発生して居ると断定することは出来無いだろう。
⑤ コストプッシュ・インフレーションは経済政策担当者にとって非常に厄介なものと成る。インフレーションというものである以上、需要を抑制すべきものであるのだが、此の現象は総需要の超過から発生してるものでは無いのに、失業対策と需要の逓減の何れかを選択せざるを得ず、総てを満足することは不可能なのである。
⑥ コストプッシュ・インフレーションの阻止には、賃金の上昇が生産性の変化に一致すべきであると示唆された。此の考え方に対しては、様々な解釈が出来る。
(1)或る企業又は産業で賃金は夫々の企業又は産業の一人当たりの産出高の増加の理由の如何を問わず、其れと一致して上昇すべきという解釈である👈機械を導入した為の其の産出高の増加は賃金の上昇に繋げる理由には成ら無い。
(2)或る企業又は産業で賃金は夫々の企業又は産業の労働固有の生産性の上昇と完全に一致すべきというものである。生産性の此の様な変化が算定不可能なことは扠置いても、此の考え方には違和感を感じる。市場経済では、生産要素に対する報酬が生産性の上昇と一致して上昇することには成らず、下落する可能性さえ在る。十分機能して居る経済では、生産性の上昇は生産要素の使用量の減少を要求するかもしれない。其の場合、生産要素に対する相対的な報酬は増加せずに下落し、他の分野への生産要素の移動を引き起こす。然も更に他にも懸念が生じる。或る活動分野では、生産性の変化が遅いか全く存在し無い。厳格に考えれば、此の分野で働く労働者は賃金上昇に全く与ら無いことを意味することに成る。
⑦ 賃金は一般に生産性一般の上昇と一致して上昇すべきとするのが当然の帰結とすべきである。経済全体として一人当たりの産出高が年当たり或る率で上昇したなら、賃金は総て其の年当たりの率に一致して一斉に上げるべきである。然し、十分機能して居る経済では、相対賃金は生産要素の希少性の変化を相対的に反映して変化するが、一方此の説は相対賃金が、全く変化し無いことを意味する。更に、或る人々は疑いも無く相対的に不充分な報酬しか受け取って無いと感じるので、彼等が此の原則に同意すると期待することは無理である。強力な組合を結成して居る他の人々は其の他の人達は不十分な報酬しか受け取って無い人々が追付く為に、平均以下の賃金引き上げ又は平均的な賃金引上げさえ認めることは無いだろう。
つづく
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