【請求の放棄・認諾】
(和解調書等の効力) 第二百六十七条 和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。
〇請求の一部についての放棄と認諾
訴訟を洗面的に終了させるものでは無く、赦され無いとされている。
✻「請求の併合」の場合は、夫々の事件を分離した上では赦されるとされる。
〔法的性質〕
訴えの取下げと同じ類型の訴訟行為(与効的訴訟行為)とされている。
✻当時主の意思に瑕疵があって為された場合~実体法上の規定を類推するのが定説である。
✻請求の放棄・認諾の客体~訴訟物・権利主張・事実主張
(例)建物収去土地明渡請求事件の場合
・原告による土地の明渡請求に着き、被告が請求を認める→請求認諾
・原告の土地所有権を被告が認めること、或いは被告の賃借権を原告において認めること~一定の法律関係乃至権利の存在について相手方が認めること→「権利自白」
・原告の土地所有権を理由付ける如何土地の買い取り行為そのものについて被告が認める→「事実自白」~弁論準備手続や口頭弁論に於居て此れをするのを「裁判上の自白」と呼ぶ。
効果:認めた当事者側には何れも不利に働くが、認める対象が、請求の認諾・権利自白・裁判上の自白の夫々に於いて違うように、大きな差異がある。
〇要件
①争いが当事者の処分可能なものであること
争われている利益が私的なものであって、当事者の意思によって処分可能なものに限られる→弁論主義が妥当する事件。
職権探知主義を前提とする場合、基本的に放棄・認諾は赦され無い。
人事訴訟法(職権探知) 第二十条 人事訴訟においては、裁判所は、当事者が主張しない事実をしん酌し、かつ、職権で証拠調べをすることができる。この場合においては、裁判所は、その事実及び証拠調べの結果について当事者の意見を聴かなければならない。
人事訴訟法(民事訴訟法 の規定の適用除外) 第十九条
2 人事訴訟における訴訟の目的については、民事訴訟法第二百六十六条 及び第二百六十七条 の規定は、適用しない。
※(和解調書等の効力) 第二百六十七条 和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。
✻婚姻関係訴訟や養子縁組関係訴訟
人事訴訟法第三十七条 離婚の訴えに係る訴訟における和解(これにより離婚がされるものに限る。以下この条において同じ。)並びに請求の放棄及び認諾については、第十九条第二項の規定にかかわらず、民事訴訟法第二百六十六条 (第二項中請求の認諾に関する部分を除く。)及び第二百六十七条 の規定を適用する。ただし、請求の認諾については、第三十二条第一項の附帯処分についての裁判又は同条第三項の親権者の指定についての裁判をすることを要しない場合に限る。
2 離婚の訴えに係る訴訟においては、民事訴訟法第二百六十四条 及び第二百六十五条 の規定による和解をすることができない。
3 離婚の訴えに係る訴訟における民事訴訟法第百七十条第三項 の期日においては、同条第四項 の当事者は、和解及び請求の認諾をすることができない。
人事訴訟法第四十四条 第三十七条(第一項ただし書を除く。)の規定は、離縁の訴えに係る訴訟における和解(これにより離縁がされるものに限る。)並びに請求の放棄及び認諾について準用する。
(旧法下で、放棄を許容~最判平成6年2月10日民集48・2・388〔179〕)。実親子関係訴訟~職権探知主義を前提に放棄も認諾も赦され無い。
②法律上赦された権利関係の主張であること
公序良俗違反等(犯罪を求めたり、法廷外の物件の確認を求める等)の場合は放棄も認諾も認められ無い。
→一見放棄を認めても弊害が無いと診られるが(消極的撹乱訴訟の場合、問題の余地もある)、認諾は赦され無い。請求が公序良俗違反である場合も、認諾はゆるされない(暴利行為に基づく金銭請求の認諾⇒多数説)。
③訴訟能力・特別授権の存在
・必要要件~訴訟上の和解や訴えの取下げと同様の要件が必要である。
・そのほかの要件は必要か?
従来は必要としていた⇒(最判昭和30年9月30日民集9・10・1491)。
✻基本的には放棄・認諾~当事者間の自主的解決方式の一つである→訴えの利益や当事者適格の存在までは要求すべきでは無い。
〇手続
①裁判所に対する陳述
(請求の放棄又は認諾) 第二百六十六条 請求の放棄又は認諾は、口頭弁論等の期日においてする。
第二百六十六条
2 請求の放棄又は認諾をする旨の書面を提出した当事者が口頭弁論等の期日に出頭しないときは、裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、その旨の陳述をしたものとみなすことができる。
・上告審でも構わ無い:源信の判決は失効する。
②要件の審査と調書への記載
民事訴訟規則67 (口頭弁論調書の実質的記載事項・法第160条)口頭弁論の調書には、弁論の要領を記載し、特に、次に掲げる事項を明確にしなければならない。
一 訴えの取下げ、和解、請求の放棄及び認諾並びに自白
〇効果
①訴訟終了効
放棄や認諾が調書に記載された時点→訴訟終了効が発生。
②「確定判決と同一の効力」
(続行期日における陳述の擬制) 第二百七十七条 第百五十八条の規定は、原告又は被告が口頭弁論の続行の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしない場合について準用する。
※(訴状等の陳述の擬制) 第百五十八条 原告又は被告が最初にすべき口頭弁論の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしないときは、裁判所は、その者が提出した訴状又は答弁書その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし、出頭した相手方に弁論をさせることができる。
民事執行法(債務名義) 第二十二条 強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
七 確定判決と同一の効力を有するもの(第三号に掲げる裁判を除く。)
・形成請求の認諾→形成力が生じる。
従来、認諾調書・放棄調書に既判力を認める⇒「訴訟上の和解に於いて生じた議論」が同様に生じる。
続く
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