刑法 第23章 賭博及び富くじに関する罪
(賭博)
第185条 賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
(常習賭博及び賭博場開張等図利)
第186条 常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。
2 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。
※ 賭博とは、金や物などをかけて 勝ち負けを争う競技やゲームをすること。
●『一時の娯楽に供する物』
・大審院大正13年2月9日・大審院刑事判例集3巻95頁「金銭はその性質上一時の娯楽に供する物ではない。」(「判例六法 平成2年版」有斐閣)
・大審院昭和4年2月18日法律新聞2970-9「一時の娯楽に供する物とは、関係者が即時娯楽のため消費するようなものをいう。」(「判例六法 平成2年版」有斐閣)
・大審院大正2年11月19日・大審院刑事判決録19巻1253頁「敗者に一時の娯楽に供する物の対価を負担させるために一定金額を支払わせた場合は、賭博罪を構成しない。」(「判例六法 平成2年版」有斐閣)
「関係者が即時娯楽のため消費する」代表的なものは飲食です。判例によれば、例えば「今日の夕飯代を賭けてじゃんけんをする」というようなことは、賭博罪にはあたらないことになります。食事代を賭けて勝負事、といえば日本テレビ系列で放映されているぐるナイの企画ゴチになりますが思い出されますが、判例を拠り所とすれば合法ということになるのでしょう。でも、金額が大き過ぎるような気もします。このようなときに良く使われるのが「社会通念に照らし合わせて」です。
「社会通念」とは、広辞苑第四版(CD-ROM版)によると「社会一般で受け容れられている常識または見解。良識。」とされています。かなり曖昧です。ゴチになります、の例だと、金額が非常識だと思う人の声が一般的だと思われれば、違法の可能性も生じます。
また、社会通念は「一時の娯楽に供する物」の拡大解釈にも使用されます。その場で消費できなくても、それほど高価ではないものならばよいのではないか、という考え方です。例えば、ボールペンを持ち寄って麻雀をし、勝者がそのボールペンをすべてもらっても、それが違法だという人はいないでしょう。これが「図書券を持ち寄って」となると微妙なラインです。図書券は換金性が高いので、立件されると違法となる可能性が高いと推測されます。
オンライン・ポーカーをリアル・マネーでプレーする場合は、購入した仮想チップを使用しています。その仮想チップは、社会通念に照らし合わせると、極めて換金性が高いと言えるので、違法と判断するのが妥当だと考えられます。
週刊文春の記事によると、6時間半にわたって賭けマージャンをした後、産経新聞記者が黒川検事長をハイヤーで自宅まで送ったという。,、賭けマージャンなら、刑法第185条の賭博罪が成立する。
黒川検事長辞職で、「定年延長」閣議決定取消しは不可避か に …
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👆の魚拓👇
東京高等検察庁の黒川弘務検事長が緊急事態宣言中に新聞社の社員らと賭けマージャンをしていたことが週刊文春で報じられたことを受け、黒川氏に対する批判が高まっており、辞任は避けられない情勢となっている。
検事長の任命権は内閣にあるが(検察庁法15条1項)、「検察官の身分保障」があり、「その職務を執るに適しない」との検察適格審査会の議決がなければ検事長職を解任されることはない(検察庁法23条)。
もっとも、懲戒処分による場合は、その意思に反して、その官を失うこともある(25条)。人事権者である内閣は、懲戒処分を行うことができるが、人事院の「懲戒処分の指針について」では、「賭博をした職員は、減給又は戒告とする。」「常習として賭博をした職員は、停職とする」とされているので、今回の「賭けマージャン」での懲戒免職というのは考えにくい。
黒川氏が辞職をするとすれば、自ら辞任を申し出て、任命権者である内閣が閣議で承認するという手続きによることになる。
現在の黒川氏の東京高検検事長の職は、今年1月31日、国家公務員法第81条の3の
任命権者は、定年に達した職員が前条第1項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にかかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して1年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。
とので規定を根拠に、定年後の「勤務延長」を認める閣議決定が行われたことに基づくものだ。
そして、森雅子法務大臣は、黒川検事長勤務延長に関して、国会で
東京高検検察庁の管内において遂行している重大かつ複雑困難事件の捜査公判に対応するため、黒川検事長の検察官としての豊富な経験知識等に基づく管内部下職員に対する指揮監督が不可欠であると判断したため
と答弁している。
法務大臣が答弁したとおり、「黒川氏の退職により公務の運営に著しい支障が生ずる」のであれば、今回、「賭けマージャン問題」で黒川氏が辞任を申し出て、法務大臣がそれを承認した場合、退職により「公務の運営に著しい支障」が生ずることになる。東京高等検察庁検事長の「公務」というのは、国民の利害に関わる重大なものであり、その「公務に著しい支障」が生じるのは、看過できない重大な問題だ。「公務の運営への著しい支障」について、法務大臣は説明しなければならない。
そもそも、この黒川氏の定年後の勤務延長を認める閣議決定については、【黒川検事長の定年後「勤務延長」には違法の疑い】で述べたように、検察庁法に違反し違法であることを指摘してきた。※※
その後、その点について、国会で厳しい追及が行われたが、【「検事長定年延長」森法相答弁は説明になっていない】で述べたように、黒川検事長の定年延長についての森法務大臣の答弁は、法律解釈としても疑問であり、実質的な理由も全く理解できないものだ。
黒川検事長辞任を内閣が承認するということは、現時点で、「退職による公務の運営への著しい支障」はないと判断したことになるのであるから、「著しい支障がある」と判断した閣議決定が取り消されるのは当然だ。
内閣は合理的な説明できるか »
※※ 「 国家公務員法では、職務の特殊性や特別の事情から、退職により公務に支障がある場合、1年未満なら引き続き勤務させることができると定めているので、この規定を適用して、東京高検検事長の勤務を延長することにしたとのことだ。
しかし、検察官の「定年延長」が、国家公務員法の規定によって認められるのか、重大な疑問がある。
検察庁法22条は、「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する。」と定めている。
国家公務員法第81条の3で、「任命権者は、定年に達した職員が前条第1項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にかかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して1年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。」とされており、この規定を根拠に定年後の「勤務延長」を閣議決定したものと思われる。
しかし、この「前条第1項」というのは、同法81条の2第1項の「職員は、法律に別段の定めのある場合を除き、定年に達したときは、定年に達した日以後における最初の3月31日又は第55条第1項に規定する任命権者若しくは法律で別に定められた任命権者があらかじめ指定する日のいずれか早い日(以下「定年退職日」という。)に退職する。」という規定であり、この規定で「法律に別段の定めのある場合を除き」とされている「別段の定め」が検察官の場合の検察庁法22条である。検察官の場合、定年退官は、国家公務員法の規定ではなく、検察庁法の規定によるものであり、81条の2の「第1項」の規定によるものではない。
したがって、国家公務員法81条の3による「勤務延長」の対象外であり、今回、検察官の定年退官後の「勤務延長」を閣議決定したのは検察庁法に違反する疑いがある。
検察庁法22条は、検察官の定年の年齢を定めただけで、検察官も国家公務員である以上、定年による退職は、国家公務員法に基づくものだという解釈をとったのかもしれないが、検察庁法が、刑訴法上強大な権限を与えられている検察官について、様々な「欠格事由」を定めていることからしても、検察庁法は、検察官の職務の特殊性も考慮して、検事総長以外の検察官が63歳を超えて勤務することを禁じる趣旨と解するべきであり、検察官の定年退官は、国家公務員法の規定ではなく、検察庁法の規定によって行われると解釈すべきだろう。 」
閣議決定の効力については、2013年7月2日に、第二次安倍内閣で行われた閣議決定で、
閣議決定の効力は、原則としてその後の内閣にも及ぶというのが従来からの取扱いとなっているが、憲法及び法律の範囲内において、新たな閣議決定により前の閣議決定に必要な変更等を行うことは可能である。
とされている。過去に、閣議決定が取り消された例を調べてみると、民主党政権時代の2011年6月、学術や産業で功績のあった人物や団体に国から贈られる褒章をめぐり、国土交通省が推薦した会社社長の男性の受章が、14日に閣議決定されながら、「ふさわしくない事態が判明した」として3日後の閣議で取り消された例がある。
今回も、勤務延長を認めた閣議決定を取り消すことになるだろうが、その際、閣議決定取り消しが決定時に遡及するのか、取り消すまでは有効なのかが問題となる。「公務の運営への著しい支障」による勤務延長の必要性について、当初の判断は誤っていなかったが、現時点では異なる判断をしたというのであれば、その点についての内閣の説明が必要だ。その点について、合理的な説明がなければ、黒川氏の勤務延長は、閣議決定の取り消しにより決定の時点に遡って無効とならざるを得ないだろう。それによって、黒川検事長の指揮を受けて行われた高検検察官の職務の適法性にも重大な疑問が生じることになる。
検事長は、国務大臣と同様に、内閣が任命し、天皇が認証する「認証官」だ。これまで、大臣の失言や不祥事で総理大臣の判断による「首のすげ替え」が簡単に行われてきたが、黒川検事長については、「退職により公務の運営に著しい支障が生ずる」として閣議決定によって「勤務延長」を行ったことによって、その検事長職が根拠づけられているのであり、大臣辞任の場合のように、安倍首相が「任命責任は総理大臣の私にある」と述べただけで済まされるような問題でない。
黒川検事長の辞任は、安倍内閣に重大な責任を生じさせることになる。
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