<time datetime="2013-11-07" pubdate="pubdate"></time>2013-11-07 20:57:32
テーマ:政治・経済・選挙2
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「危険な先例『国会図書館閲覧禁止』 秘密保護法案」2013/11/07(東京新聞)
<書き起こし開始→
国会図書館所蔵の法務省作成資料が二〇〇八年に突然、全面閲覧禁止になった。それまで公開され、同じ資料が古書店に出回っていたにもかかわらず、同省が要請した。秘密はその内容が知られているか否かではなく、官僚が勝手に指定したものがそうなるという先例だ。秘密保護法案は、その延長線上にある。(出田阿生記者)
◇
問題の資料は、法務省刑事局が一九七二年三月に作成した「合衆国軍隊構成員等に対する刑事裁判権関係実務資料」。日本国内で罪を犯した米兵の扱いについて、検察官の参考用につくられた。
作成時には非公開文書の扱いだった。だが、その後、古書店に多数出回るように。実は国立国会図書館も古書店から購入していた。個人や大学図書館も所蔵し、「秘密」とほど遠い資料だった。
たびたび、国会でも取り上げられた。例えば、共産党の赤嶺政賢議員は二〇〇五年、沖縄国際大での米軍ヘリ墜落事故(二〇〇四年)に関連し、衆院外務委員会で「なんでこんなもの(資料)がマル秘なのか、理解できませんけれども」と、資料のコピーを示して質問した。
だが、二〇〇八年五月、法務省は国会図書館にこの資料の閲覧禁止とオンライン蔵書目録からの削除を要請。国会図書館は全面閲覧禁止と目録からの削除を決めた(その後、一部を除いて再公開)。
赤嶺議員事務所の担当者は「法務省は国会での質問には『そんな資料は把握していない』と、しらを切っていた。だが、閲覧禁止要請により、資料の存在を認めた。皮肉だった」と振り返る。
法務省は禁止要請の理由を「非公開資料で、公共の安全と秩序維持や米国との信頼関係に支障を及ぼす恐れがある」と主張した。だが、その無内容さは、すでに周知だった事実から明らかだ。
隠れた理由があったのだろうか。国際問題研究者の新原昭治さんによると、日米地位協定では公務外の米兵の犯罪は日本側に優先裁判権があるとしている。ところが、日米行政協定(地位協定の前身)の改定を交渉していた一九五三年、日米合同委員会の分科会で「公務外であっても、重要な案件以外、日本は裁判権を放棄する」ことが密かに合意されていた。
新原さんは「資料は、密約に基づく実務上の運用について書いてある。法務省は沖縄をはじめ、国民に密約の存在を知られたくなかったのだろう」と語る。
「ただ、密約自体は複数の米公文書で裏付けられているし、資料は国会図書館以外にたくさん出回っており、閲覧禁止の効果はなかった」
山口大の纐纈厚副学長(日本政治史)は「実にばかばかしい話。といっても、笑ってはいられない。秘密保護法が制定されれば、閲覧禁止どころか、官僚が勝手に秘密指定した資料を持っているだけで罰される危険さえ出てくる」と危ぶむ。
そうした状況が戦前・戦中にはあった。以前、この欄でも紹介した「宮沢・レーン事件」だ。北海道帝国大の学生が「軍機保護法違反」とされて投獄されたが、この学生が漏らした「秘密」のひとつは北海道・根室の海軍飛行場の存在。ところが、この飛行場は世間ではよく知られていた。
※「軍機保護法 秘密保護法と酷似 スパイ濡れ衣 宮沢・レーン事件」2013/10/14(東京新聞) http://amba.to/1hQ9J1Y
法案では「特定秘密」を「公になっていないもの」と定義しているが、それは形だけだろう。纐纈副学長は「国会図書館での一件は、官僚が指定したものが『秘密』という事実を明らかにしている」と話している。
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国会図書館所蔵の法務省作成資料が二〇〇八年に突然、全面閲覧禁止になった。それまで公開され、同じ資料が古書店に出回っていたにもかかわらず、同省が要請した。秘密はその内容が知られているか否かではなく、官僚が勝手に指定したものがそうなるという先例だ。秘密保護法案は、その延長線上にある。(出田阿生記者)
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問題の資料は、法務省刑事局が一九七二年三月に作成した「合衆国軍隊構成員等に対する刑事裁判権関係実務資料」。日本国内で罪を犯した米兵の扱いについて、検察官の参考用につくられた。
作成時には非公開文書の扱いだった。だが、その後、古書店に多数出回るように。実は国立国会図書館も古書店から購入していた。個人や大学図書館も所蔵し、「秘密」とほど遠い資料だった。
たびたび、国会でも取り上げられた。例えば、共産党の赤嶺政賢議員は二〇〇五年、沖縄国際大での米軍ヘリ墜落事故(二〇〇四年)に関連し、衆院外務委員会で「なんでこんなもの(資料)がマル秘なのか、理解できませんけれども」と、資料のコピーを示して質問した。
だが、二〇〇八年五月、法務省は国会図書館にこの資料の閲覧禁止とオンライン蔵書目録からの削除を要請。国会図書館は全面閲覧禁止と目録からの削除を決めた(その後、一部を除いて再公開)。
赤嶺議員事務所の担当者は「法務省は国会での質問には『そんな資料は把握していない』と、しらを切っていた。だが、閲覧禁止要請により、資料の存在を認めた。皮肉だった」と振り返る。
法務省は禁止要請の理由を「非公開資料で、公共の安全と秩序維持や米国との信頼関係に支障を及ぼす恐れがある」と主張した。だが、その無内容さは、すでに周知だった事実から明らかだ。
隠れた理由があったのだろうか。国際問題研究者の新原昭治さんによると、日米地位協定では公務外の米兵の犯罪は日本側に優先裁判権があるとしている。ところが、日米行政協定(地位協定の前身)の改定を交渉していた一九五三年、日米合同委員会の分科会で「公務外であっても、重要な案件以外、日本は裁判権を放棄する」ことが密かに合意されていた。
新原さんは「資料は、密約に基づく実務上の運用について書いてある。法務省は沖縄をはじめ、国民に密約の存在を知られたくなかったのだろう」と語る。
「ただ、密約自体は複数の米公文書で裏付けられているし、資料は国会図書館以外にたくさん出回っており、閲覧禁止の効果はなかった」
山口大の纐纈厚副学長(日本政治史)は「実にばかばかしい話。といっても、笑ってはいられない。秘密保護法が制定されれば、閲覧禁止どころか、官僚が勝手に秘密指定した資料を持っているだけで罰される危険さえ出てくる」と危ぶむ。
そうした状況が戦前・戦中にはあった。以前、この欄でも紹介した「宮沢・レーン事件」だ。北海道帝国大の学生が「軍機保護法違反」とされて投獄されたが、この学生が漏らした「秘密」のひとつは北海道・根室の海軍飛行場の存在。ところが、この飛行場は世間ではよく知られていた。
※「軍機保護法 秘密保護法と酷似 スパイ濡れ衣 宮沢・レーン事件」2013/10/14(東京新聞) http://amba.to/1hQ9J1Y
法案では「特定秘密」を「公になっていないもの」と定義しているが、それは形だけだろう。纐纈副学長は「国会図書館での一件は、官僚が指定したものが『秘密』という事実を明らかにしている」と話している。
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