言語道断の原発回帰・新増設
石破茂内閣が閣議決定した第7次エネルギー基本計画は、東京電力福島第1原発事故後に掲げてきた「原発依存度低減」を削除し、原発の「最大限活用」と新たな原発建設を明記しました。事故の教訓を投げ捨て、財界や大手電力会社の要求を丸のみした言語道断の露骨な原発回帰です。意見提出が4万件を超え、厳しい批判が多数出されたのは当然です。
■福島から怒りの声
福島原発事故は、いまだ収束の見通しすらなく、被災地の復旧もまだまだ途上です。
にもかかわらず今回の計画では、既設・建設中の原発ほぼすべてを再稼働させようとしています。東電柏崎刈羽原発の再稼働は、「政府を挙げて対応を進める」と特筆しました。被災地・福島からは、県民を愚弄(ぐろう)するものだと怒りの声があがっています。
石炭火力を2030年以降も温存することも重大です。
最大の二酸化炭素排出源である石炭火力の廃止は気候変動対策の試金石です。国連のグテレス事務総長は、先進国は30年までに石炭火力を廃止するよう訴えています。日本は主要7カ国(G7)で唯一廃止期限を決めないなど脱炭素に逆行しています。
日本がなすべきは、30年度までに原発ゼロ、石炭火力ゼロにすることです。
国内の再生可能エネルギーの潜在量は、現在の発電量の7倍以上もあります。研究者グループの試算では、電力の再エネ比率は、35年に80%、40年には100%にできます。しかし今回の計画では、40年度で4~5割しか見込んでいません。
政府が原発の再稼働を進めた結果、九州電力など大手電力会社は、再エネの発電を抑える「出力制御」を繰り返しています。今回の計画では再エネ、原発ともに「最大限活用」としていますが、再エネの最大限活用は、原発ゼロを決断してこそ可能です。
■根本的な見直しを
今回の計画では、40年度のエネルギー消費は現状より1割余りしか減りません。さらなる省エネのためには「非連続的な技術開発・取り組み強化」が必要などとして、省エネ対策は事実上、先送りされています。しかし、既存技術の普及でエネルギー消費量は2分の1、3分の1に減らせます(13年度比)。足元の対策こそ強化すべきです。
データセンターや半導体工場による電力需要の増加が強調されていますが、実際には電力消費の数%程度にすぎません。この分野で諸外国より悪いエネルギー効率の改善こそ必要です。
地球温暖化対策計画も同時に閣議決定され、温室効果ガス排出量の35年度削減目標は、13年度比で60%削減とされました。これは、世界全体で求められる削減目標より低いものです。世界第5位の排出大国の責任として、13年度比75~80%削減を目標とすべきです。
猛暑、豪雨、豪雪など温暖化の影響が深刻化しており、温室効果ガス排出削減は急務です。今後10年間の取り組みに人類の未来がかかっています。計画を根本から見直し、気候危機打開に真剣に取り組むことが求められています。
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