公的需要とは、政府最終消費+公的固定資本形成だ。2023年ではこの合計は名目で約155兆円、実質で約146兆円である。
政府の予算よりはるかに大きいのでは?と思ったそこのあなた。正解です。ここで言う政府とは一般政府のことだ。一般政府=中央政府(いわゆる政府)+地方政府(地方自治体)+社会保障基金であり、GDPの政府とはこの一般政府のことをいう。
この公的需要を検討する前にGDPの総額を見てみよう。
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名目では600兆円に迫る勢いだが実質では5年以上停滞しており、直近では下がり気味である。結構深刻な問題だが、あまり注目されていない。呑気なものだ。といった今日この頃、興味深い記事を見つけた。
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防衛費、増額も検討を 物価高踏まえ有識者提起 時事
防衛省は19日、防衛力の抜本的強化について助言する有識者会議の初会合を開催した。座長に就いた榊原定征経団連元会長は「2023~27年度で約43兆円」とする防衛費について、物価高騰や円安の影響に触れ、必要に応じて積み増しも検討するよう提起した。
榊原氏は「見直しをタブーとせず、現実を踏まえたより実効的な水準や国民負担の在り方について議論すべきではないか」と強調した。木原稔防衛相も出席し、「防衛関係費は社会保障費に次ぐ規模だ。国民の期待に真に応えることが求められている」と指摘。28年度以降の防衛費の在り方も検討するよう求めた。
これに関し、林芳正官房長官は19日の記者会見で「政府としては、防衛力整備について一層の効率化・合理化を徹底し、防衛力整備計画で定めた43兆円程度の規模を超えることなく抜本的強化を実現していく」と明言。同計画の見直しは「考えていない」と述べた。
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官房長官が塩対応をしているのは、ユーシキシャ会議の皆さんは気づいていないだろうが、これは政府予算全般に言えることだからだ。物価高や円安に合わせて軍事予算を増額すると直ちに、記事にある社会保障費は?という声が飛んでくる。
では実際の公的需要はどうなっているのだろうか?
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名実ともに2002年(小泉構造改革)あたりから減少を始めている。失業率が戦後最大とか騒がれているときに公的需要を削る。これが「新自由主義」である。世論が自己責任論に屈服していなければこんなことはできない。
名目と実質がほとんど重なっている時期は物価が動かないか、下がっている時期である。
2008年まで名実ともに減少を続けているときにリーマン危機を迎えた。その結果はご存じのとおり悲惨なものとなった。
2008年から増額に転じたのは、団塊の世代の退職が始まったことと高齢化の進展で年金の支出と医療費(介護含む)が増大したためである。 これが経済にとって良くないことだと考える意見が大勢だが、筆者は逆の意見である。
直近では名目では上昇しているが、実質では横ばいである。後に分析するが、これが大問題である。
世の中が「資金不足」で生産設備の増強もできないような段階であれば、医療費の増大は他産業への悪影響は必至である。資金の「取り合い」が起きるからだ。こういうことは経済の発展段階が低い時代には起きる。だからこれから成長をしようという社会において医療・福祉を充実させることは難しい。
今は逆だ。余剰資金をどこが持つか?金融機関では持ちきれないほどの余剰資金が溢れているのである。ただこの状態があまりにも長く続くと供給能力そのものが棄損されてしまう。少子化こそ、「この供給能力の棄損」を端的に示しているのだ。
次回は「求められる財政」を検討する前段階として、現下の経済情勢を分析する。