中国では「唐の時代に木版印刷術が起こり、宋の時代に民間に広く普及した」(『世界の歴史』第6巻、中央公論社)といわれ、いわゆる宋朝体は、宋代の木版印刷に用いられた書体である。
宋は、 唐が滅亡した後の「 五代・十国 」の争乱を収拾し、 960 年に建国され、1279 年まで3世紀にわたって存続した。 しかし、文治政策を重んじ軍事的には弱体国家で、北方の外民族の進入に脅かされ続けた。 長年の宿敵、 契丹人の遼の滅亡に次いで、1127 年に宋が女直人の金に滅ぼされた後、皇族の一人が江南に逃れ、蒙古人の元に滅ぼされるまで、南宋として1世紀半も国家の余命を保った。
印刷術の発展によって、中国で近代宋朝体活字が用いられるに至った経緯は、残念ながら不明である。当然、日本でも宋朝体活字が導入されただろうが、印刷物にはもっぱら明朝体が用いられ、宋朝体の出番はなかった。吉川英治『三國志』(六興出版部)を印刷した東京印刷株式会社が、どのような系列の宋朝体活字を使用したのか知りたいところである。
嬉しいことにデジタルフォントでは、 ダイナ・新宋体とリョービ・花胡蝶の2種類が利用可能である。両者を比較した結果、私は迷わず前者を選択した。右の写真が、ダイナラブ・ジャパン ㈱ のダイナフォント見本の1ページで、一番上に新宋体の書体が示されている。
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