いつも車を止める林道脇から、ギョウジャニンニクが採れる参橋右壱の沢まで、300㍍くらいの距離がある。その間は、中ほどに湧き水が流れる広い沼地で、女房と私は、ヤチボウズのあいだを慎重に歩いて目的地にたどり着く。
毎年、四月中旬にこの場所を訪れると、エゾアカガエルの「クワワッ、クワッ、クワワッ」という大合唱で迎えられる。この春も、既にいたるところに大きな卵塊があり、うっかりすると踏みつけてしまうほど数多くのカエルが、足元で跳びはねるのである。警戒心が強く、あわてて水中に飛び込んで物陰に隠れる姿に、思わず「ごめん、ごめん」と声が出る。
カエル・サンショウウオ・イモリなどの両生類は、生息環境の変化に最も影響を受け易い生物で、最近は急激に数が減っているといわれる。
広大な釧路湿原でさえも、周囲から乾燥化が進み、面積が大きく減少しているため、環境保全と水性動植物の保護対策が関係機関の急務となっている。
このような好ましくない一般的な状況にあって、釧路市街からあまり遠くない山林の湿地帯で、春になるといつも同じように、エゾアカガエルが産卵のために大集合するのが見られるのは僥倖というべきだろう。写真中段<左>は、冷たい残雪の上で交尾中の珍しい雌雄一対である。雄の色が黒っぽく、胴体の斑点や脚の縞模様も定かでないので、エゾアカガエルではないのでは、と訝しく思ったが、棲息する場所により体色に違いが出るのかもしれない。
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