十二月二十二日、〇九年三月期の連結営業損益の予想を千五百億円の赤字に下方修正したトヨタの渡辺捷昭社長(12月23日付『朝日新聞』第1面から転写)は、名古屋市での記者会見で、「厳しさは予想をはるかに上回るスピード、広さ、深さで拡大している」(同新聞・第2面)と述べ、トヨタが置かれている底なしの泥沼状態に悲壮感をにじませた。
今回の未曾有の苦境(「地域別連結販売台数見通しの変化」は、同新聞から転写)は、しかし、単に米国の景気後退による市場縮小や為替相場の変動だけに起因するのではなく、急成長を続けるトヨタ内部で、積極的に設備投資を拡大し、トップに立って世界に君臨しようという野心が醸成され、業界全体、特に米国への目配りに手落ち(慢心)が生じたことが影響していると思われる。
トヨタがこれまでの安易な拡大戦略を見直し、生産を縮小しても利益を生み出せる体質転換を断行することは確実である。国内各社は既に、一斉に減産・人員削減・経費カットなどリストラを加速させている。
自動車業界は関連業界の裾野が広く、経済成長を牽引する基幹産業であり、その不振は、「関連業界のみならず、日本全体の雇用や個人消費の落ち込みにまで波及」(同日付『讀賣新聞』第3面〈総合〉)し、深刻な影響は今後大きく拡大するだろう。リストラ策を強化しすぎると、新車需要がさらに冷え込む悪循環を引き起こしかねない。日本の自動車業界は、米ビッグスリーと異なり、まだ十分に底力を温存していると私は見るので、短兵急なリストラを避ける深謀遠慮を期待したい。
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