タックの庭仕事 -黄昏人生残日録-

≪ 消えゆく活版印刷 ≫

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 印刷の世界では、昭和40年代に写植が導入され始め、しばらく写植と活版が並存していたが、昭和50年代以降、技術革新がめざましく、今はもう完全にDTPの時代である。3月8日付『北海道新聞』夕刊・第1面で、「消えゆく鉛活字」という見出しが目について、長く活版印刷を続けてきた丸善株式会社のPR誌『學鐙』が、時代の波に抗しきれず、DTPに切り替えたことを思い出した。P1020502
 いつ『學鐙』が活版印刷を止めたのか、まったく記憶に残っていない。これまで購読した現物は、ほとんどが田舎家のダンボール箱の中に保管中なので、活版印刷による一冊(平成8年12月号)をようやく書棚から見つけ出し、DTPによるもの(平成19年秋号)と誌面を比較してみた。
 やはり印字面は趣がかなり異なる。DTPによる誌面は、見た目は美しいが、誰もが指摘するように、平板で力強さに欠ける。慣れればどうということもないが、両方を並べると、鉛の活字の重さと印刷時に紙面にかかる圧力が見えるのである。
 参考までに、小宮山博史・府川充男・小池和夫『真性活字中毒者読本』(柏書房)に写真が掲載されている、『本邦活版開拓者の苦心』(津田三省堂)の宋朝体による序文を転写して、鉛製活字製作会社「フカミヤ」が活字鋳造部門を廃止した後も、札幌で活字鋳造をただ一人で手がける吉本政美氏(前掲新聞)を激励したい。

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