ラジヘリ空撮

空撮用マテリアルの開発状況に係る情報発信や、現場での出来事及び、日常の情報発信を致します。

マフラーの洗浄

2012-02-06 18:33:21 | メンテナンス
先日・・・ある空撮会社の撮影用の機体がエンジン不調に陥った。

不具合の原因は・・・マフラーが詰まった事に因るエンジン不調だった。



上記の様な状態は、超稀なケースだと思うのだが・・・この様なマフラーの内部は、
恐らくカーボンがビッシリ堆積している。

通常は、この様なマフラーを2度と使用する事はないのだが・・・外観が正常なだけに、
ついつい欲が出て、何とかして使用したくなるのが人情と言うもの。


バイクのマフラーなどは、バーナーで焼けば再使用する事も出来るのだが、
ヘリ用のマフラーはアルミ製の為に・・・それは出来ないのである。

下手に炙れば・・・二度と使えなくなってしまうどころか・・・形がなくなってしまう。


そこで試に・・・ある謎の液体をマフラー内部に入れて堆積したカーボンを溶かしてみる事にした。

この液体を投入して2~3時間してから・・・工場へ様子を見に行った。

何とビックリ・・・マフラーがカニの様に泡を吹いているではないか???

その泡を何とか拭き取って、2~3時間して、又工場へ様子を見に行くと・・・又泡を吹いていたのである。


もしかしたら・・・こいつは生きているのか?などと、バカな事を言いながら・・・又・・泡を拭く。


そんな事を繰り返しながら、謎の液体を入れてから・・・丸2日・・・
試に、マフラーに入れた液体を排出して見た。

それが下の写真である。


何か・・・明らかに液体の色が変色している。

カーボンが溶け出したのか?・・・元々は透明な液体だったのだが、真っ黒い液体に変わっていた。


その中には・・・固着してマフラー内部を覆っていたと思われる、カーボンの殻みたいなモノも見て取れる。

液体を排出してから、マフラー内部を照らして観察してみると・・・カーボンが剥がれ落ちている個所も少なくない様だ。

予想外に・・・内部が綺麗になっていたのだ。


そこで、新しい謎の液体を再度マフラーに入れて・・・もう二日も放置する事にした。

そうすれば、もっとマフラー内部のカーボンが落ちるのだろうか?

内心は・・・良い結果が得られれば良いなと、少し期待しているのだが・・・さてどうなる事か?





業務用の機体強度に付いて・・・パート3

2012-02-06 08:47:54 | マテリアル
昨日の・・・続きである。

メインギヤの強度を向上させる場合には、幾つかの方法がある。

一つは、同じ材料を使用して、単純に歯車を厚くする方法だ。

スペース的な制約が無ければ・・・この方法が一番手っ取り早い。

他には、根本的に材質を変更するか、形状(ギヤの種類)を変更する。

又は、モジュールを変更する手もある。

しかし、この方法も当然寸法が変化するので、フレームを新規に作り直す必要がある。

でも・・・既にフレームは作ってしまっている。

出来れば、フレームを新規に作り直す事だけは・・・避けたいのである。


この様に、問題を解決する方法は幾つかあるのだが・・・実際には寸法的な制約が多く
幾多のクリアーすべき難関が待ち受けていて・・・そう簡単な訳にはいかないのが・・・常である。


上記の中でも、一番現実的なのは・・・材質そのものを強度がより高い材質に変更する事なのだが・・・・。

だとすると・・・現在のポリアセタールから、より高強度のナイロン素材に変更する事となる。

一口にナイロン素材と言ってもいろいろある。

ナイロン素材は、素材ごとに色が違うので・・・・現物を見れば何の素材なのかは?直ぐに判断出来る。


しかし、それらの素材には・・・欠点もある。


それは・・・ナイロン素材全般に通じて言える事だが・・・吸湿性があると言う事だ。


通常ナイロン素材を加工する時には、事前に耐水試験と言う工程を経て加工するのが一般的である。

これを行わずして加工してしまうと・・・・後で組み付ける事が出来ない・・・
或いは・・・・調整したバックラッシュが狂ってしまうのである。

要は・・・設計上の寸法精度を維持できないと言う事だ。


勿論、専門の歯車屋さんであれば、適切に加工してくれる事は言うまでも無い。


そう言えば・・・以前ある模型メーカーがオプション扱いで販売したメインギヤが同様の理由から、
回収されていましたね。


しかし、折角新規にギヤを製作するのに、例え材質を変更したとしても、
純正と同じ寸法で製作するのは・・・余りにも能がない。


特にガソリン機に使用するメインギヤの場合、エンジンのトルク変動が大きい為にその影響をもろに受ける。

従って、出来れば・・・この部分の強度だけはオーバークオリティーにしたいのである。


早速、どの位ギヤを厚く出来るのか調べて見た・・・・う~ん・・・思わず唸ってしまった。

意外に・・・寸法的な余裕がないのである。

何とか頑張って・・・1mm厚く出来るかどうかなのだ。

それでも厚くする事で・・・10%位は強度的に向上するのだが・・・
最低30%位は強度を向上させたいのである。

せめて2mm位、ギヤの厚さを増す事が出来れば、材料の変更との相乗効果で30%位は強度が上げられる。


しかし、寸法を大幅に変更できない以上・・・・平歯車は諦めざるを得ない状況である事が判った。


残るは・・・斜歯(はすば歯)歯車で企画するか・・・?

すると・・・ヘリカルギヤとも言うタイプで前後のピニオンギヤも、斜歯で製作する必要がある。

しかし、ギヤを斜歯にすると・・・新たに製作する部品点数が増えてしまう事と、
別の問題(不具合)も発生する事が予想されたのだが・・・。

そこは・・・ギヤの設計で何とかする???


次回に・・・続く。




業務用の機体強度に付いて・・・パート2

2012-02-05 14:30:47 | マテリアル
昨日のブログの、続きである。

まだ、昨日のブログを読んでいない方は、話のつじつまが合わないので、
そちらを読んでから、このブログを見て欲しい。


前置きはこれ位にして・・・

業務用に使用する時に問題となったアッパーフレームを、取り敢えず強化した。

メインギヤ滑の主な原因が・・・そこに有ったからだ。


純正のフレームでは剛性が足りない為に、エルロンの操舵時にフレームが捻じれて、
ギヤのバックラッシュが狂ってしまう事が、原因だったのである。

勿論、模型用途に使用する場合は、十分な強度があるのだが・・・業務に使用するとなると、
なかなか、そうは行かないのが常である。

又他の要因として、ユーザーサイドによる、バックラッシュの調整が適正に行われていない事も
原因の一つではあるのだが・・・。


そう言えば・・・昔、初期のスカディーでも同様のトラブルが有った。
3Dフライト等で、ロール方向に急激にフリップさせると・・・一発でメインギヤが滑た。

その後、直ぐフレームの材質・形状を変更したEVOになったので、ご記憶の方も多いのではないかと思う。


そんな訳で・・・業務用に使用する際に、弊社のスペシャルフレームに換装する事で、
ほぼメインギヤの破損は皆無となったのである。


その社長の口コミで(そこら中に吹きまくって頂いた)・・・お蔭様で、現在も数社の空撮機に
このスペシャルフレームが使われていて、ほぼ毎日・・・何処かの空を飛んでいる・・感謝・感謝。


ところがである・・・メインギヤの問題がほぼ解決すると・・・当然、安心して飛行させられる様になる。


すると・・・もっとペーロードを掛けたくなるのが人情と言う物・・・。


そこで、リフター800と言うメインローターのペイロードテストを兼ねて、メインギヤの強度試験を実施した。

機体の状態を見ながら、どんどんペイロードを増して行き、最終的に7400gのペイロードを掛けてみた。

その状態の機体全備重量は・・・なんと14700gである。

VoyagerGSRの機体重量は、7300g(燃料500cc含む)である。

標高600mの高地で、ほぼ機体重量と同じだけの、ペイロードを持ち上げているのである。


このペイロードは、26ccのガソリンエンジン搭載機で、標高600m付近で作業を行う場合に、
安全に運航出来る・・・ほぼ限界重量の様であった。


この状態は通常で有れば・・・完全にペイロードオーバーである。

勿論その状態の機体を飛行させる際には・・・操縦を少し丁寧に行う必要がある。


それでも・・・エンジンのオーバーヒートや機体の沈み込み等が、全く発生しなかったのは言うまでもない。

このペイロードを安全に持ち上げる事が出来る理由は、リフターと言う超高揚力のメインローターに因るところが
非常に大きいのだが、やり方次第では26ccのエンジンでも、こんなペイロードが持ち上がってしまうのである。

処が・・・このテストで新たな問題が浮上してしまったのである。


その問題とは・・・メインギヤ自体の強度である。

やっと調子よく飛行できる様になったと言うのに・・・またまたメインギヤの強度の問題が浮上してきたのである。

テスト終了後に、機体各部を点検した・・・すると・・・メインギヤに異常が認められたのである。

実際には・・・・ギヤ滑などは皆無であったのだが・・・ポリアセタール製のギヤの歯の部分が少し変形していたのだ。


市販の機体を使用すると・・・しばしばこの様な状況に陥る事が多いのである。

一個所直せば・・・他の個所にしわ寄せが・・・それを直すと・・・また他の個所が・・・と言う具合にだ。

市販の機体を業務に使用出来るレベルに仕上げるには・・・何と体力と気力がいる事か・・・。


まあ・・・それも半分好きでやっているので・・・そんな状況も少し楽しんでいるのだが・・・。

そんな訳で・・・メインギヤを何とかしなければならなくなってしまった。

次回に・・・続く。




模型用ガソリンヘリを業務用に使用する場合の強度不足に付いて

2012-02-04 09:50:31 | マテリアル
弊社では・・・元々自社開発した機体を使用して、空撮業務を行って来たのだが・・・

随分前になるが、思うところがあって・・以前、新発売したてのJR製のVoyagerGSR260を
空撮に使い出した頃の事である。


この様な場合は・・・当然模型に使用する事を前提に開発・販売されていた機体なので・・・
多少ペイロードがあるからと言って、業務にそのまま(ノーマルで)使用する事は、
機体強度や耐久性からみても出来ないし危険を伴う。


又、Voyagerに限らず、その様な機体を業務用途で使用する場合は、当然・・・自己責任で使用する事になる。

何かトラブル(墜落等)があっても、元々目的外で使用してしまっているので・・メーカーには一切の責任は無いのである。

元々23ccエンジンを搭載していた機体に、半ば無理やり26ccのエンジンを搭載したその機体では・・・
特に重大な問題に発展しそうな個所が・・・すぐに数ヶ所見つかった。

勿論メーカーサイドでは、模型用途に限定して26cc用に大幅な強度UP等の改良がなされていた事は言うまでもない。

しかし、事業務用に使用する事を前提とした場合、キャブレター不適合の問題や、メインフレームの強度不足及び、
それに伴うメインギヤの破損やテールドライブベルトの耐久性不足など・・・業務用で使用する為には・・・
ざっと数えただけでも、これだけの事を改善する必要があったのである。

Brgのキャパや耐久性など、細かなところを言えば・・・きりが無い。

(※ここで述べている事は、VoyagerGSR260の初期ロット時の事で、キャブレター不適合等は既に改善されていますので、念のため)


新型の260Zでは、随分様々な個所に於いて改善されているのだが・・・・
それでも業務用で使用する事を考えると・・・万全と言う訳には行かない。

又・・・かなり各部を補強したそうで・・・随分と重くなってしまった。

この機体強度と機体重量と言うのは・・・一見すると相反するファクターなので有るが・・・
大体強度を上げれば重くなるのが常であるのだが・・・その割合が重要なのだ。


因みに、260ZとVoyagerGSR260の重量を比較してみると・・・
機体重量が1200gも重くなっている。

これは実に・・・GSR260と比較して、15%以上も機体重量が増えた事を意味している。


1200gと言えば・・・最近のデジタル1眼レフカメラの重量に匹敵するのである。

最近、実際の撮影業務では、このクラスの機体でも・・・中盤カメラとデジタル1眼レフカメラを
同時に搭載して撮影する事が主流になっている。


その事を考慮すると・・・15%も機体重量が増える事はNGであるし、
何としても避けなければならないと考える。

決して飛ばないわけではない・・・機体の耐久性に影響を及ぼすからだ。


従って、詳細を述べる事は出来ないが・・・弊社では機体強度を向上させる場合は、
機体重量を増やさない様に、別の手法を用いて剛性をUPさせている。


或る時・・・そんな事を何処からか聞きつけた、ある仲の良い空撮業者の社長から、
模型ベースの空撮機に付いて相談を受けた。


何でも・・・何年も前にVoyagerGSR260を作ったのだけれども、
メインギヤがすぐに滑めてしまうので怖くて使えないのだが・・・新型の260Zに
替えた方が良いのだろうか・・・?
他には、何か良い方法は無いのだろうか?・・・と言う様な内容だった。


確かに標準仕様(模型のままの状態で)のVoyagerGSR260に過大なペイロードを掛けるのだから・・・
機体が壊れたとしても、それは至極当たり前の事なのだが・・・。


その時既に、弊社ではVoyagerGSR260の対策を全て終了していたので・・・
そこで・・・弊社で使用しているパーツを試に使ってみるかい?・・・と言う事になった。


しかし、それらは・・・・超少量生産なので・・・・パーツ事態の価格が高いのがネックだと説明した。

元々それらの対策パーツは自社用で、販売する事は視野に入れていない為に、
必要最小限だけ生産している。

従って、そのストックに余裕はない。


先ず手始めに、Voyagerの何が問題なのかを聞いた処・・・とにかくメインギヤの欠損を、
何とかして欲しいとの返答があった。


弊社では、アッパーフレームの剛性不足を改善する為に、上記の写真の様なフレームを製作して使用していた。

このフレームはCCPM仕様ではなく、訳あってノーマルリンケージ用のフレームである。

このスペシャルフレームは、純正の材質からより高強度な材質に変更した為に・・・
劇的にフレーム剛性が向上して、現在も第一線で活躍している。

最初そのフレームが欲しいと言われたのだが・・・しかし現在では・・・制御機器の関係で、
CCPMでも問題が無く使用出来る様になっている。

そんな訳で、新たにCCPM用のフレームを作ろうか?・・・と言う事になった。

その結果完成したのが・・・下の写真である。


このフレームは・・・当然・・・相談を持ちかけてきた空撮業者の社長に供給された。

その社長は、早速そのフレームに換装してフライトテストを行った。

結果・・・改良されたVoyagerGSR260を使用して猛然と撮影を開始したのである。


何か・・・敵に塩を送ってしまったか(ナンテネ)・・・???との想いも有ったが、
安全に撮影作業を行う為の一助になれば私も嬉しいし、業界発展の礎にもなる。

そこは懐の深さで、提供したのである。(自分で言うのも何だが・・・)


その社長との後日談で、あまりにVoyagerが調子良くなってしまったので、
ここ2年間は殆どVoyagerで仕事をしていたとの事。

それまでは62ccの機体を常用していたのだが・・・それを使用する必要が無かったのだという。

結果、62ccの出番は殆ど無く・・・数回しか使用しなかったとの事であった。


しかしそんな訳で・・・その会社から次から次へと相談を持ちかけられる事に・・・・。

この話の続きは・・・次回に・・・。


PS:この話は、弊社の持論や経験則に則ってお話していますので、
   事実と異なる事もあるかも知れません。予めご了承願います。