ラジヘリ空撮

空撮用マテリアルの開発状況に係る情報発信や、現場での出来事及び、日常の情報発信を致します。

ガソリンエンジンのオーバーホール

2012-05-14 05:21:28 | マテリアル
この時期、何処の空撮会社でも機体整備に余念が無いことだろうと思うのだが・・・。

そんな中、この業界の中では有名なある空撮会社の社長から、空撮機として使用中の、
Voyagerに搭載されているエンジンのオーバーホールを仰せつかった。

皆さんの中にも、シリンダーやピストンリングなどの交換をしている方は
いるかと思うのだが、今回の様にクランクケースまで交換した事の有る人は
珍しいのではないだろうか?

そこで、その様子を写真を交えてお伝えしたいと思う。


そもそもメーカーでも、クランクケースまで交換する様な、フルオーバーホールなど
コストの問題が有って受け付けていない。

勿論、無理にでもお願いすれば可能なのだろうが、新しいエンジンを買う程の費用が発生してしまう。

そんな訳で、クランクケースその物も・・・通常は、出荷されない様である。


実際に、調達したクランクケースを見てみよう。



この様に、クランクシャフトを支持する為の、ベアリングが挿入されていないのである。

エンジンを組み立てる為には・・・先ず、クランクシャフト支持べアリングを3つ、ハンドプレスを使用して
挿入する必要がある。



組み上がると・・・こんな感じになる。



このクランクケースには、2種類のベアリングが使用されているので、間違わない様に組み付ける必要がある。

次に、クランクシャフトA’ssyの向きを確認した上で、ベアリングの挿入が終了したクランクケースにセットする。



この時点では・・・洗浄は終わっているのだが、古いピストンが装着されたままの状態。

この後で・・・当然、ピストンを交換した事は言うまでもない。


もう一方のクランクケース(割になっている)を被せたら、キャップスクリューでクランクケースを結合するのだが、
この時、決して手締めなどと言う事は・・・後の、トラブルの元。

各エンジンの指定トルクがあるので、それにしたがってトルクレンチで締め付ける。



実際に締め付けてみると・・・案外力を入れなくても・・・カチン・・・と言う音がして組み付け終了。


多分・・・感覚で手締めで組み付けると・・・指定トルクの倍以上で締め付ける事になるだろう。


このクランクケースの指定トルク・・・シリンダーの指定トルクよりも低いのである。
これにもれっきとした理由があるので、考えて見ると良いだろう。


次に・・・ピストンを組み付ける。


今回はご要望により、29ccのボアアップキットを組み付けた。

弊社では、このキット・・・3年程前からテストを行い、一部の空撮会社向けに販売していた。

何故、一部の空撮業者にだけ供給していたかと言えば・・・趣味レベルでは全く必要が無い事や、
空撮機に使用した時でも、DJIの様な制御系が搭載された機体で無ければ必要が無いのが実状である。

しかし・・・以前29ccのボアアップキットを供給した会社から噂が回りまわって、最近では
ある模型メーカーから販売されてしまった。

29ccエンジンは・・・良い事ばかりではないのだから、一般に販売するのは如何かと感じている。

なにはともあれ・・・ピストンを組み付けた。



次にシリンダーを組み付ける。

これらの部品を組み付ける時は・・・必ず2サイクルオイルを各摺動部に塗布しながら行うのが
鉄則である事を付け加えておきたい。

シリンダーもクランクケース同様・・・トルクレンチを用いて、指定トルクで組み付ける。




これで・・・一応、組み付け終了。



勿論・・・マグネットローターや、コイルなども、適正なクリアランスで組み付けた。


それから、今回のオーバーホールの最大の目的は・・・割れたクランクケースの交換で有ったので、
その対策も一緒に行っている。

何故、クランクケースが割れたのか?、興味のある方は・・・以前のブログを参照して欲しい。

クランクケースをフライス加工した上で、エンジンをフレームに組み込む時にワッシャーを
その間に入れて組み込む。



その結果・・・フレームの内寸と同じ80mmとする事が出来るのである。



何故こんな事までしなければならないのか???

この辺も・・・過去のブログで説明しているので、興味のある方は参照願いたい。


これで、全ての組み付けが終わり・・・エンジンのオーバーホール完了。

下記は・・・交換した部品と、蘇ったったエンジン。

一見新品の様だが・・・それもその筈、再使用したのはクランクシャフトA’ssyのみである。


新しいエンジンパーツと比較して、交換部品の内部が・・・かなり汚れているのがみてとれる。



それでは・・・又ネ~。












ヘリの防振対策に付いて

2012-05-11 06:52:31 | マテリアル
どこの空撮会社でも同様だと思うのだが、比較的仕事が少ないこの時期に、空撮機の機体整備を行っていると思う。

もしかしたら、暇なのは・・・弊社だけかも知れないが、この時期にしっかりとした整備を行わないと・・・
1年を乗り越える事は出来ないと、私は考えている。

機体整備は・・・壊れた時にするものではない。

壊れない為に行うのが・・・整備なのである。

従って、弊社では・・・自社所有機に於いては、整備が行き届いている為に、殆ど修理を行う事は無いのである。


決して・・・壊れるまで空撮機を使用してはならないのである。


空撮機は、墜ちるモノ・・・と、同業者が話しているのを、聞く事がある。

もしかしたらそれは・・・実際に墜ちてしまうので、半分照れ隠しで言っているのかも知れないのだが・・・。


しかし・・・実際には、理論に則って飛行しているのだから、全てが正常な状態である限り、墜ちる事など
・・・まず無いのである。

その為に・・・弊社では、毎年この時期の整備を欠かさないのである。

その成果が出ているのか?・・・機体の不備に起因する、墜落などのトラブルは・・・お蔭様で皆無である。



今回はそんな一連の機体整備の中で・・・如何に振動の少ない機体に仕上げるか?・・・と言う観点から、
防振対策と言うタイトルで少し考えてみたい。


この防振対策・・・一言で言えば・・・面倒臭がらずに・・・細かな作業をコツコツ行う他は無いと、
私は考えている。


通常、振動対策と言えば・・・メインローターのバランス取りやエンジン調整など、整備の仕上げの段階では
誰でも行なっている事だろうと思うのだが、それだけでは細かな振動を取り除くことは出来ない。

通常・・・ラジコンヘリには、幾つもの減速機が使用されている。

それらのバックラッシュの取り方一つで・・・振動の発生源になる・・・と言う事なのだ。


試に・・・メインギヤのバックラッシュの取り方で・・・考えてみよう。

通常、メインギヤのバックラッシュを調整した後で、メインギヤを1回転させて、
それが適正に調整されているか?を確認していると思うのだが・・・その時、
バックラッシュにバラつきのある機体が・・・実に多いのである。

殆どの方が・・・オートロユニットにメインギヤを取り付ける時、何の躊躇も無くネジで・・・
ただ固定してしまっている。

この場合・・・メインギヤが偏心したままの状態で組み付けられてしまっている事に気付いて欲しい。


従って、このバックラッシュのバラつきが、程度の差こそあれ・・・結構振動を発生させているのである。


弊社では、下記の様な方法でその辺を改善・・・とまでは行かないが・・・低減させる努力をしている。



ダイアルゲージで計測したいところでは有るが、何処を測れば良いのか???

その為、仕方なく上記の方法でギヤが偏心しているか?を確認している。

この作業で、メインギヤのバックラッシュが・・・均一になり、非常にスムーズに回転する。


今回は、機体を製作する段階での振動対策の一例として、ギヤのバックラッシュの取り方を考えて見たのだが、

もしや・・・と、思われる方は、自分の機体でメインギヤのバックラッシュを確認して見て欲しい。

案外・・・そんな簡単な作業で・・・振動が激減する・・・???・・・カモね。


次回は・・・ある空撮会社より、エンジンのオーバーホールの依頼を頂いたので、その様子に付いて
投稿しようと思うので・・・お楽しみに






260Z用AceOne専用フレームと260Z用オリジナルフレームの違いに付いて

2012-05-09 18:05:45 | マテリアル
ブログも、大型連休に合わせて連休にした・・・と言うより、ネタ切れの為、暫くサボったと言った方が
正確だろうか・・・?

兎に角・・・暫く休んだ。

しかし・・・今日現在、相変わらずネタ切れは続いている。


そこで・・・DJIのAceOne専用フレームと、JR260Zオリジナルフレームとの違いに付いて、
問い合わせを受けたので、それぞれ写真をUPする事にした。

下の写真を見比べて欲しい。

サーボレイアウト等に違いが見えるのと、IMU専用マウントが最初から設定されている。




弊社で試作した、AceOne専用フレームの詳細については、以前のブログで述べているので、
興味のある方はそちらをご覧頂きたいと思う。

このフレーム・・・現在、バーレス(バーレス専用リフター2枚)使用で、エンジンの慣らしを行っているが、
そろそろ本格的なテストに入る時期に来ている。

次回は・・・機体の振動対策に付いて・・・述べてみようと思っているので、お楽しみに。

業務にも使用可能なガソリンヘリ用マフラーに付いて・・・パート5

2012-05-01 06:25:13 | マテリアル
前回は・・・私が考える、基本的なマフラー要件に付いて述べた。

その中で・・・十分な、消音効果を満たしているマフラーが市販されていない事も述べた。

そこで弊社では・・・更なる消音効果を求めて、ハットリ製のマフラーに取り付ける事を前提に、
サブマフラーを試作してテストを開始した。





上の写真は・・・あるユーザーの機体に取り付けたモノで、今から遡る事、約3年前の写真である。

このサブマフラーの構造に付いては、余り詳細を述べる事は出来ないが・・・唯の膨張室では無い。


また、このサブマフラーを取り付ける事で、アイドリングなどの排気音は、驚く程頼りない音になった。

勿論・・・上空でも、それは同様で、高音域が見事に消されて・・・強風時などでは風下へ、ヘリを
離し過ぎるとエンジン音が聞こえなくなってしまう程・・・それは改善された。


以前より遥かに・・・排気音が小さく低くなったのだが・・・いざ、実際にそうなると・・・今度は、
パワーダウンが少し心配になってしまった。

しかし・・・それは、取りこし苦労であった。


まあ・・・多少の出力低下は否めないが・・・作業を行う上で、問題になる程ではないし、
他人に、何も言わずに飛行させてみても・・・違いは判らない様なので問題は無いのだろう。




何故・・・それ程までに、排気音に拘るのかと言えば・・・環境への配慮である。


撮影現場に因っては・・・エンジンの排気音が問題になる事が・・・多々ある。


一度、その様な事態になってしまうと・・・撮影が出来なくなってしまうのである。


勿論・・・事前に周囲に告知をして頂ければ良いのだが・・・全ての現場でそれを実施しているか?
と言えば・・・なかなか難しい現実がある。

そんな訳で・・・自衛手段の一環で・・・サブマフラーを開発したと言う訳だ。


やはりプロで有る以上・・・撮影作業を行う上で、周囲に迷惑を掛けてはならないと、私は考えている。



では・・・また。